第15話 勉強しよう
朝からサッカーの試合を見てご満悦した俊輔は授業を受けたくなかった
楽しいことをした後に辛いことをするのが嫌なタイプなのだ
気力を使い切った俊輔はリムジンの中で寝ようとしたのを北条が止める
「ご主人様、二度寝はいけませんよ。山宮家の次期当主としての御自覚を持ちましょうね」
「ふぇ…」
朝5時に起きた身としてまだまだ寝たいが、そんなことを思っている間にリムジンは学校に着いた
そしてその頃山宮幸三は自室で、昨夜のことを浅葱からモニター越しに聞いていた
まさかハーゼンクレーヴァー家の者がそのような行為に走るとは思いもよらなかった幸三は頭を抱えた
ビジネスの相手としても重要なハーゼンクレーヴァーとの関係は悪化させたくない幸三はすぐさまそばにいるメイドにトーマスに連絡を取るようにと指示した
「かしこまりました」と言いメイドは部屋から退出する
椅子にもたれた幸三はため息を吐く
「まったく。ハーゼンクレーヴァーの護衛は相変わらず厄介な連中が多いな」
昔のことをふと思い出す幸三。
実は彼自身もハーゼンクレーヴァーの護衛に目をつけられたことがあった
当時順調に事業が成長し、世界的企業になるのも時間の問題だった頃
それが気に食わなかったハーゼンクレーヴァー家の護衛だった一人が祝いのパーティで幸三の飲み物に下剤を入れようとしたというものだ
しかし当時の山宮家警備隊がそれに気づき大きな問題にならないように隠蔽した
しかもそれを行った犯人は何とミラの護衛であったレナ・シュレンドルフの母、ナスターシャだった
トーマス様に近づく悪魔などとよくわからないことを言っていたらしい
結局幸三は今回の件も許すつもりでいる
やはりそう言った関係悪化よりハーゼンクレーヴァーとの相互利益の方が大きいからだ
「あいつ、大丈夫かのぉ?」
庭に咲いている花々を見ながら学校に行った俊輔を心配する幸三であった
「はい、皆さんもうすぐ期末テストですからね~しっかり勉強してくださいね~」
ホームルーム終わりにゆるふわな感じの教師がそう言って生徒を鼓舞するがみんなやる気がない
こういうのはどこの学校行っても同じなんだな…とちょっと安心する俊輔
前の席に座っている黒野は勝ったリーと言った感じで話しかけてきた
「俊輔お前どう?勉強とかやってるのか?」
いきなりストレートにきた質問に俊輔は偽りなく答える
「いや全然、俺前日からしか気力湧いてこないから」
「だよなー!やっぱ俺たち気が合うよな!」
そう言って肩を組んでくる黒野と俊輔を見て北条が口を開けて驚いている
「宮ちゃんどうしたの?」
北条の右の席に座る女子生徒がそう呼ぶ
北条は今までさんざん勉強しましょうねと言ってきていたのに、それをおろそかにしている俊輔に衝撃を受けたのだ
これは私がどうにかしないといけないと使命感に燃え、北条はすぐさま席を立つ
「お、お前のメイドが来たぞ」
「え?」
メイドじゃなくて執事と言うとしたがその前に視界に北条が入った
俊輔が振り向くとそこには北条宮子が立っていた
「ご主人様!どういうことですか?ちゃんと勉強しているとこの前言っていたではありませんか!?」
「え、そんなこと言ったっけ!?!?」
「言ってました!」
これは事実で期末テストが近づくかなり前の日から北条は俊輔に質問していたが
はいはいと俊輔は返事をして真剣に取り組まなかった
そのツケがついに回ってきたのだ
「ご主人様今日からは私がご主人様の勉強を見ます!」
何ィ⁉と反応する俊輔、それをけらけら笑う黒野
そんなワイワイしたクラスの入り口に顔だけを出してのぞき見する女の子がいた
「あれが転校してきた山宮の御曹司ね…」
一難さってまた一難が俊輔に襲い掛かろうとしていた
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