第3話 御曹司と化した僕
「私の名は北条宮子と申します。以後よろしくお願いいたします」
今俺がいるのは人生で一度も乗ったことのないリムジンだ。いや普通の人はまず乗ることないだろうし、俺みたいなのがなぜ?
昼食の時、北条さんは放課後に駐車場で待っていると電話番号を記したメモを渡してきた
”リムジンが止まっておりますのでそこまでお願いします”と言われたが唐突すぎて午後の授業は手に負えなかった
リムジンの後部座席は運転席とスモークガラスで遮られており、運転手には内部通信でのみ会話が可能になっている
俺の座った席の横には金の刺繍が入ったカクテルキャビネットがおかれており、L字型のソファは死ぬほど柔らかい。その正面にはあテレビモニターまで付いており、そんなにいらねえだろと思う
「目的地までお時間がありますので何かお飲み物でも?」
ぼ~っとしていた俺の視界に北条さんの可憐な表情が入る
俺は慌てて姿勢を良くし、照れながらコーラを頼んだ
「はい、かしこまりました」
車の中なら揺れが酷いと思うがこのリムジンはそんなことない、恐ろしいほどなめらかな空間で一滴もコーラが床に落ちない
「どうぞ俊輔様」
「あ、ありがとうございます」
コーラをワイングラスに注ぐなんて見たことねえ!!
経験したことがないことばかりの車内でいつもよりおいしいコーラを飲む
氷までも上手い。コ〇インでも入ってんじゃねえのか?
外を見ると見たことのない山が見える
まさかこれ新手の誘拐とかじゃないよな?
そんな不安が俺の頭を回り、それが顔にも出たのか北条さんは優しく気にかけてくれた
「いかがなさいました?体調がよろしくないのですか?」
なんと彼女は額を俺の額に当て体温を測ってきたのだ
これは”黒”だな
なんとしてもこいつから逃れなければ、俺の人生は終わる!
そう確信した俺は最悪このリムジンを奪ってでもいいから隙を見て逃げようと思った
だが車は俺の思いとは逆に目的地に着いたようだ
「お待たせいたしましたご主人様。どうぞ」
そういって北条さんが後部座席のドアを開けると、宮殿が俺の視界を埋め尽くした
しかもよく見ると俺だけじゃない
俺以外にもリムジンや高級車から降りてくる人が沢山いたのだ
皆綺麗なドレスや衣装をまとっている
「へ?」
誘拐だと思っていた俺は北条さんに問いただした
「あの、これは?」
「ああ!申し訳ございません最も重要なことを言い忘れておりました…」
目をくの字にしてあわあわしている北条さん
「このパーティは俊輔様のおじい様であられる幸三様が主催っされたものでして―」
その時一番外から目立つベランダから大きな声が聞こえた
「おお!!来たか俊輔ぇ待っておったぞぁ」
野太い声が響いた
それと共に多くの人の視線が俺に向けられる
まったく意味が分からない、おじいちゃん…前は岐阜県ののんびりした田舎にいたじゃないか…
だが現実は思考より先に俺を動かす
「ご主人様ではあちらのお部屋に参りましょう」
「ふ、ふえぇ…」
手を引っ張られて向かったのは1メートル以上ある大きな扉の部屋だ
部屋にこんな扉いらねえだろと思いながら中に入ると
北条さんに劣らない美貌のメイドが何人もいる
「………」
そこで俺は正装に着替えさせられ、クソデカ会場に連れていかれた
その会場の裏でおじいちゃんと会った
「じ、じいちゃん…」
俺を見たじいちゃんは何か悲しそうな顔で俺に迫ってきた
「すまんのぉ俊輔今まで騙して…」
「………………」
じいちゃんは片手に葉巻を持ちながらそのまま話を続ける
「実はワシ、日本でも結構金持ちな方なんじゃ」
見ればわかると首を縦に振り、それを確認したおじいちゃんは俺の肩に手を乗せた
「お前には我が山宮家の跡取りになって欲しい」
変化が起きてから1日目
俺は金持ちの跡取りになったのだった
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