第4話 彼って本当はいい人?
「ちょっと待ってください! わたし、嫌です。生徒会長補佐なんて……」
「う〜ん。まあ、そういうのは会長が来てから話そうか」
顔をしかめて本気で嫌だっていうことを伝えるわたしに対して、
なんて言えばいいのか必死に考えていたら、後ろから教室のドアが開く音が。
「
「
この澄み切ったテノールの声は……。
彼は、わたしの前まで歩いてきて、こちらを振り向いた。
「
「あの、
「なんだ?」
わたし、断ろうとしているだけなんだから、そんなに見ないで〜。
「わたし、呼ばれたから来ただけで、補佐なんて無理です。お断りします!」
「それはできないよ、
向かいの席から
「君はさっき校則違反を認めた」
「けど、それは……」
わたしは少しこの場にいることが恐くなってしまった。
「納得できないから?」
「そうです」
「それは君のわがままに聞こえるな。うちの学校を受験したのは君でしょう? どの学校に行くかは
彼の視線、それ以上に彼の言葉がわたしの心に突き刺さる。
なんとなく、言いたいことはわかるけど……。
彼はわたしに鋭い視線を向けたまま、話を続けた。
「なのに君はうちの学校に通いながら、校則違反を続けている。罰は受けないとね」
「…………」
言い返すことができずに、わたしは唇を噛んで俯いた。
「
「はい……」
わたしは、小さな声で返事をした。
反論することができなかった。
優しい言葉を選んでくれているみたいだけど、退学で脅されているような気がして、悲しくなった。
わたしが『自分らしく』するのは、そんなにいけないことなの?
「
「そうだね。
「ああ、明日な」
そう言って
わたしは、挨拶さえできなかった。
泣きそうになるのを必死に堪えていたから。
「
わたしが小さく頷くと、先輩は椅子を持ってきてわたしの隣に座った。
「
「はい……」
「校内での活動なら掃除当番とかでも良かったのかもしれない。けれど、俺は君と校則について考える時間が欲しかった」
「考える時間?」
わたしが顔を上げると、隣で先輩が笑っていた。
控えめだけど、優しい笑顔。
それを見ていたら、わたしの目に溜まっていた涙がスッと引いていった。
「そうだ。お互いに考えて校則について話し合うんだ。もし俺の説明で納得できたら君はそれを直す。君も意見していい。それで俺も賛成できたら、生徒会の意見として先生に校則の変更を求める」
「本当……ですか?」
わたしの問いかけに、先輩はしっかりと頷いてくれた。
「ああ、約束しよう。
「わかりました、わたし、生徒会長補佐やります!」
わたしもしっかりと頷き返して返事をすると、
もしかして、彼って実はいい人なのかな?
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