壱ノ話

閑話

「マスタ~?椅子ここでいーい?」


 椅子を持ったリューゼンがマスターに問いかける。彼らは急遽店を閉じ、狭くなった二階の掃除を始めたのだった。


「ありがとう。皆ほんとに働き者だなぁ……」

「私達、自由になれたのが嬉しいんです!」


 給仕服に着替えた一人が答える。奴隷として蔑まれ、囚われていた彼女らが自由を謳歌するにはこの場所は完璧だった。


「そうか、俺も嬉しいよ。メビウスが君達を連れて来てくれて本当に良かった」


 そう言ったマスターの脳裏にメビウスの顔が浮かぶ。気弱な彼と共に行動する彼女はどんなニンゲンなのか。マスターも興味があった。


「……そういえば、メビウス、いや、あの青年と一緒に居た子はどんな子なんだ?」


「あー……ステラのこと?あの子は……あれ?確かに私、あの子のこと何も知らないわ」


 リューゼンが首を傾げる。彼女の記憶の中のステラは確かに謎の存在だった。


「ステラは巫女だよ」


 買ったばかりのぬいぐるみを抱えたパテルが答えた。


「いつも、神様と一緒に居るの」

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