Lucky Strake
俺の
男女交際なんかとは縁遠いと思っていたあいつが「彼女が出来た」と言ってきたのは夏休みの終わり。
経緯を訊けばなるほどそれならって思えるもんだったし、いかにもあいつらしいなと納得もできた。
どうせ小学生も斯くやな清いお付き合いになるだろうし、頃合い見計らって今時の高校生男女らしい不健全な関係へ誘導してやってもいいなとか、上から目線で思ってたこともありました。
が、秋の到来とともにいきなり、
「マーシー。俺、芳野と
と、打ち明けられた時ゃ、冗談抜きで時間が止まったね。
ダチだからってそんなこと言うもんじゃなかろうがって気持ちと同時に、伝えてくれたことに俺への信頼の強さと深さが感じられて、なんか誇らしかったりもしたけれどさ。
けどよ、そういうふたりの間のセンシティブなことを言ってくんなって。こっちゃはどう受け取っときゃいいか困るだろうが。
ただ、
「……それで芳野のこと、もっともっと大切にしたいって思った」
今までの付き合いの中で見たこともない
チビのころに
元の父親は事故で死んじまってて、それからは親戚縁者の間をたらいまわし。これでひねくれるなというのが無理ゲー。
中学の終わりにあいつを引き取ってくれた、遠縁も遠縁な今の保護者がいい人・ザ・いい人な夫婦で、やっと "吉" って言える程度に。
……んまぁ、まだ少し短絡的なところは残っちゃいるが、顔合わすなりお互い気に喰わねぇって殴り合った出会いの頃に比べれば、野生の虎が飼い猫になったくらいには変わった。
祖父江って彼女が出来、男女の一線を越えたことであいつはもっと変わった。もちろんより良い方に。
ひねくれて星を睨んでたようなあいつが、自分のことだけじゃなく誰かのことまで考えるようになったなんて、なんかさ、嬉しいじゃない?
冬休みも近い寒さ厳しいとある日、兵衛は見慣れぬマフラーを撒いて教室に入って来た。
落ち着いた色合いのそれはあいつによく似あっていて、既製品にも見えなかったので、
「
ってカマかけてみれば、あいつ少し目を泳がせてからうなづきやがった。そんな弄ってくれってみたいな態度も、今までにゃみられなかったよな。
なんか微笑ましくって、
「ほー、手編み! いまどきめずらしい。愛されてるねぇ兵衛くん?」
ついからかってしまう。
当然あいつは照れ隠しにいきり立つけど、てんで迫力ねぇ。
あ~ぁ、もうやだ。人の幸せってのは、こっちも嬉しくさせちまう。
兵衛、祖父江って "
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