スコーンが食べたい

 スコーンが好きだ。

 あのスナックのスコーンではないスコーンを食べたのは、親が当時働いていた職場近くにスターバックスコーヒーができた時だった。チョコレートチャンクスコーン(あれはアメリカ式らしい)を土産で買って来てくれたのだ。子供すぎてその程度の記憶しか思い出せないが、それ以来スコーンに憧れを抱くようになった。

 そのうち、思春期になり自分で簡単な料理ができるようになった頃、ホットケーキミックスでスコーンが作れる事を知った。インターネットに感謝した。形だけはスタバの三角型のスコーンに似せた、ホットケーキの味がするそれっぽいものを生産しては食べた。


 そして諸々の知識を得て現代である。先程まで大量にスコーンを作る遊びをしていた。

 本日用意した材料を紹介したい。滅多に立ち寄らないお高いスーパーで20%オフになっていたスコーン用の白い粉(パッケージにイギリス式の円筒状の洒落たスコーンが写っている)。ホットケーキミックス(なんかあったのでお高いやつとは別にこれでスコーンを作ることにした)バター(やたら使う点には目を瞑らねばならない)。安いことがウリの大衆向けスーパーの見切り品コーナーにいた牛乳(200mlも使わないのだがこれより少ないのは無かった)。本日賞味期限が切れる抹茶粉末(冷蔵庫にあった)。製菓用チョコチップ(こんなにいらんよ…みたいな量が入っている)。そして、賞味期限が近くなって来たので早めに消費したいアールグレイ茶葉。完璧な布陣である。


 作ったスコーンも紹介したい。

 まずは、プレーン味。バターの香りが良い。多分良い粉を使ったおかげだ。ジャムやクリームをつけてもいい。おやつで食べよう。

 続いて、プレーンにチョコチップを混ぜた。美味しい。おやつで食べよう。

 そして、抹茶。元々抹茶味が好きなのもあり、欲張って沢山混ぜ込んだ。美味しい。今回のスコーンはスターバックスコーヒーで売られているようなアメリカ式ではなくイギリス式で作ったのだが、これが一番イギリス式っぽい形で出来上がった。おやつで食べよう。

 最後に抹茶チョコチップだ。見た目は正直に言うと抹茶を混ぜた生地に豆を混ぜ込んだパンみたいで「これは…パンだな…」と思ったが、抹茶の苦味とチョコチップの甘味のバランスが良かった。これもおやつで食べよう。


 オーブンが小さいので、複数回に分けて焼いた。焼き上がりの待ち時間で後片付けをしつつ、焼いたスコーンを冷凍保存した。手際がいいぞ自分よ、などと自画自賛しながら。

 全てが終わり、私はコーヒー片手に部屋へと戻り、こうして文を書いている。


 そしてふと、キッチンに残されたあいつは、どう言う気持ちなのだろうかと申し訳ない気持ちになっている。



(コーヒーを飲みながら)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

メロンが食べたい 藤堂 有 @youtodo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ