第23話ポーションは古傷を癒せるか?
透明マントの使い方が分からないままだけれど、どうせだから使えるようになっておきたいと、ステータスを三人で出して色々とやっていれば、黒服のボディガード6人が口々に言うのだ。
矢張りステータス開けるんですねと。
「そう言う異世界物の小説を読む限り、ステータスが開けるのはマストでしょう?だから開けるんだなあと思ったんですけれど、やっぱりなんですね」
「う?ああ、そうっす。開けるんです。だけど魔法は習得しないといけなくって……実際にさ、透明マントとか、使えたら最強過ぎでしょ」
別段、盗みを働こうなんざ思ったこともないが、それでも一人で歩きたい時もあるだろう。
そんな時に透明マントは大活躍するはずだ。
「ランとか、絶対あった方がましになるだろうし……必要でしょ」
「ああそうだよね、うん。 あったら嬉しいになるね」
うんうんと首肯する真美子。
ステータスを俺等も開けないかと、ボディガード達がステータスと唱えるのを横目に、慎太郎が口を開いた。
「どうして君たちが選ばれたとか、元の身体はどうなったとか言ってなかったの?」
「元の身体は見つかってないの、ごめん。 でも必ず見つけて見せるから、あちらの世界で頑張るよ」
「向こうの世界に肉体があるとも限らないとかではない?だって、最初から肉体を持って行かないつもりだったんでしょ、その神と言う存在は。だったら――」
「ううんと、それについては大丈夫みたい。私達ステータスで肉体の生存が分かるらしいんだ。これ見て……」
ステータス画面にはこうあった。
綾小路真美子
体力 450
魔力 1500
素早さ 30
知力 45
運 80
肉体『仮初の肉体』『本体』
魂『綾小路真美子 90』
固有スキル 絶対模倣
「こうあるでしょ?これの肉体部分、文字が普通なら透けたりするのかなって。だから生きてるから文字が普通にあるのかもって思ってる。だってかりそめの肉体と本体って書かないよ普通。だから生きてるって信じてる」
真美子が力強く言うのを聞けば、慎太郎は顔を覆って天を仰いだ。
「それならいいや、良かったあ………」
「何?泣いてるの? 泣くほどのことではないわよ?」
「だって、そこまでランのことを守らないとってやってるのに、自分の肉体が無くなっただなんて信じたくもないよ。そうでしょう?」
そう言われるとそうなのだが、頑張りを認められているようでうれしくなった真美子は、顔を覆って表情が崩れたのを見せないようにする。
何で隠すのよと天音が苦笑して言う。
「だって、恥ずかしい。 でも、頑張ってるの認められたみたいで、嬉しいじゃん」
「そうだよね、嬉しいよね」
「それは良いとしてだけれどね、ポーション?本気で売るつもりかい?」
「売ったら確実に売れると思う。試しに怪我人にかけたら速攻回復するし、凄いんだよ?」
怪我と病気のポーションを持ってきたから一本ずつこれを出して言う真二。
彼は本気でこれを売れると思っている。
ただし販路が無いのだという。
「では怪我人を治癒できるとして、それは古傷も?」
「それは分からないけど、何でです?」
「古傷が治るのであれば、買い手はかなりつくだろうからって事よね。それこそ顔に重度の火傷や、怪我を負った人何てざらにいるのよ?」
だからポーションはそれなら売れるわと言う真美子。
ならば売れるなら何とかしようという天音は、販路をオークションならどうだという。
「オークション?本気かい?」
「販路が無いから仕方ないわ、ああでも古傷ある人で試せれば一番いいだけど」
どうだろうとポーションを指先でいじりながら言う天音。
そんな三人に、はあと思い切り大きなため息を吐き出して言うのは慎太郎だ。
ボディガードたちなら古傷があるだろうと言うので、聞いて見たら一人二人とチラホラ出てきた。
「一度ナイフでここら辺切られて、ケロイド状の後が残ってますけど……消えますか?」
「私はここら辺火炎瓶投げられたことがあって、火傷後ですけど」
想像以上にボディガードが危険な仕事だと知った三人は、息を飲んだ。
けれど今は治癒されて怪我は古傷だというならば好都合と言っていいだろう。
怪我のポーションを出して、キャップを開けると、それを古傷にかけてみてくださいと言う真二。
真二は大まじめに、古傷も治ると思っている。
「まあ治ったらめっけものですねってことで、使ってみます」
「うっす、使ってみてくださいっす」
ジャケットを脱いで、シャツを脱いでとすると、タンクトップ一枚になったボディガードが二の腕の力こぶの上にある傷にポーションを振りかけた。
結果は――
「消え、た?」
「嘘でしょ?」
「マジかよ」
皆三者三様の反応ではあったが、結果はこの通り、古傷も消えると言う物だった。
是には慎太郎が考え込むような顔を見せているが、他は拍手喝采、治癒した本人などは感動のあまり涙まで流すほどだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます