第22話透明マントだけ使い方分からないんだよ

「こういう時は、大体異世界で知り合ったモフモフと一緒に食うんです」


「へえ……君はそれでいいの?割り当て減るけど」


「いえ、架空の物語なんで!」


 と言いながら、酢豚を大量に自分の更に盛り付ける真二に、皆で苦笑してしまう。

 黒服の方方は、どうやらボディガードらしく、自分達もいいんですか?御馳走になります!と嬉し気だった。

 大量に作ったけれど、ピラフに炊き込みご飯もすっからかんで、明日のお弁当は全て冷蔵庫に入れてあるが、それも食べられそうな勢いだった。

 男性の胃袋を舐めていたまみこは、あまねはそう言えば料理を作らないんだろうか?と疑問が湧いた。


「私?私はいつもてきとう料理で、料理に名前ついてないようなのしか作れないから止めておくつもり。お弁当とかだったら手伝ってもいいんだけどね」


 てきとう料理じゃないと作れないよと言われてしまえば、それって料理の基礎が出来てるから料理上手じゃないと出来ないんじゃんと言いたくなった。



 腹がくちくなったところで、皆話しをする形として車座にいすを並べて座ることに。

 ソファに自分達三人が座り、他が椅子だ。


「それで?何でそうなったのか聞かせて、もう一度」


「うん。 実はね、私達身体が入れ替わってるの。私は見てのとおりランで……」


「私は見知らぬ青年になってる、あまね」


「俺はあまねさんのたぶん従姉妹らしい身体に入ってる、真二って言います」


「まみこだけど、私、ばれるかな?ラン本人が戻ってきても大丈夫なように、頑張ってダンスとか歌とかやってるけど、これからは新曲になるって言うから自信が……ない」


「そうか」


 二度目だから冷静に聞いてくれている慎太郎に、まみこもほっと息をついた。

 一度目は最初の身体が入れ替わってると聞いた瞬間、もういいまともに話す気ないんだろうと吠えられて終わってしまったから――。

 何はともあれ、腹がくちくなったのだから、冷静に語れるだろうと言う事だ。


「一つ質問いいですか?私二度目で流石に本当なんだろうなって思ってるんですけど、」


「信じてるよ全員」


 それは紛う方ない慎太郎のしっかりとした声で。

 何だか嬉しくなってしまう。

 この面々は全員が一度目の暴露の瞬間にも居た面子である。

 その彼らが受け入れてくれたと言うのがものすごく嬉しくて。


「信じてないわけじゃないです。だってランはそんな風に喋らないし」


「それと調べてみたけれど、あまねさん?の言っている住所に確かに天堂天音という女性は住んでいた。一人暮らしで親族とかかわりの無い女性、これも君の言っている通りだった」


 探偵を雇って調べたが、本当に君は実在しているから信じざるを得なかったんだと言う。

 真二も同様で、五人家族で末っ子な真二は、両親と兄弟が二人いて、姉と兄がいるらしいだとか。

 そんな話をされた。


「だからまみこだけが信じられるなんてことはなく、裏付けを取って二人とも居ることを確信したから言っているんだ。信じているよと。ここまで言えばわかるだろう?現実主義者なまみこだったら、ここまですれば信じたって信用するだろうって思ったんだ。どうだい?」


「ええ、有難う。 そうだよ、そうまでして貰ってようやく信じたんだと信用されてるんだと信じられるよ」


 ごめんね、二人とも、面倒な性格だったから調べさせちゃったみたいで、悪かったと謝罪をすると、あまねがそんなことはどうでもいいから、自分の家の猫はどうなっているというのだ。


「猫は衰弱していたから、引き取っているよ。ペットホテルに入れてある。ペット病院も見せたけど、外に猫用の扉ついていたから出て来れたけど、それが無かったら出すの二時間かかったと思うよ?」


「そう、ですか。有難う御座います」


「俺は家族居るけど、家族居ないとそう言う所困るな……」


「ええ、ほんとね」


 あまね――天音が言った。





 まみこ――真美子は綾小路真美子と言う。

 綾小路家の嫡女である。

 慎太郎――九条慎太郎の婚約者となっている。

 これについてとうとうと説明を受けた二人は、何かすげえいかつい名前だなと言われる。


「厳つい?そうかな?」


「財閥の当主みたいな名前って思ってる、真美子のことを」


「ああ、そう言う事か。うちの九条程じゃないかな。でも真美子の家も財閥で昔は相当強い権力を有していたよ。今はそこまでじゃないけど」


「そうなの?」


 慎太郎曰く、九条家の方が余程大きな家の様子。

 ただし、真美子はどうでも良さそうだが。






「私たちは、神様を名乗る何かに連れて行かれたんだよね」


「そう言ってたね」


「うん、でも、神様を名乗るその自称神様は、私達を魂で連れてきたつもりだった。だけど肉体が別の肉体に入った状態で連れてきてしまっていた。それは手違いだったらしいのね」


「言ってたね、天音」


「うん」


「俺も話し声が聞こえたから真美子さんと天音さんの方に行ったんだよ。話し声が聞こえてきて。二人が話しているから。 それで、その神様の話聞いたんだ」


 天音もそうだが、真二の場合も性別が違っていたのは、相当なストレスなはずだ。

 それを受けて今までトイレも風呂も、いうなれば適切であるように済ませてきたのだから、相当大変だったはずだ。

 元の持ち主に身体を返すために、三人は必死になってきたのだ。


 神様から力を貰ったと言う事も話した。

 真美子と真二は炎よと唱えて手のひらに火を灯し、黒服と慎太郎の度肝を抜いた。


「私は透明マントらしいけど、使い方分からなくってまだ使ってないのよね」


「まあ、天音のは分からなくても今はいいかなと思うけど、敵が居るところらしいから、危険があるから使えるようになりたいはなりたいかなと思うかな」


「でも分からないんだよねえ、どうやるんだろうね?」


 天音が言うと、真二がどうしても必要なら、ステータスって言ってタップするとかあるけど、ステータスって言ってみて?と言うのだ。

 言われた通りやってみると、異界渡りの上にある透明マントをタップするが何も出てこない。


「どういう事だろう?」


「分からない、それで出てきたら使えるんだけどね」


「そうだね」


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