第16話えええええ、肉食べないのこの子!?

 何が必要かと思うかでもめた。

 現地に何が必要かだって?

 そんなの簡単だよ。


「火打石使ってたから、ライターかマッチ!」


「でも、そんなこと言ってたら、火の魔石だってあるって言ってたし、要らないんじゃないのか?って思うよね」


 あまね特有の、そうだよね?ね?という同意を求める言葉遣いに、苦笑するが事実だろう。

 確かに火の魔石を買おうと思えば皆買えると言っていた。

 それをマッチだライターだとかって言った所で、売れる気がしない。

 どうせならば精巧な器を100均で買ってきて、売る方が楽だろうと思うのだ。


「――と言うことで、私は100均で買える、ガラスポッドがいいよ。絶対ガラスここだと高いもん」


 ガラスのグラスが一つ金貨3枚で売っているというのを店頭で見たのだ。

 だったら高いはずだと言えば、それはありねとあまねに言われる。

 同意を受けたが真二はまだ自分の意見を通したい様子。

 絶対にライターがいいよと言うのだ。


「確かに安ければいいと思うけど、火の魔石幾ら?銀貨で買えるわけだし、私たちが持ってくるライターが幾らになるかなあ? 一つ100円位で買えると言っても、そんなに高く売れないよ?」


 きっとそうだろうと思うのだ。

 ライターはガラスではないガラスのような入れ物に入れてある。

 プラスチックのものが安いため、それを購入してくるとぶち当たるのが、「ずっと使えない問題」だ。

 かと言って、燃料を入れて使うジッポーを持ってくると幾らになるのやらである。

 石が壊れればこれも使えなくなるのだからどうせならば安物をと思うのは道理であろう。


 それともマッチを持ってくるか?


「火の魔石は、何か高いんだって言ってたからさ。銀貨払うわけじゃん。だったら100円位でマッチを売ればよくね?」


 ライターが駄目ならそうすべきだと真二が言う。

 分からなくはないが、安く売ると言っても元値はどうなのだろうか?


「あらあ?あれの元値って、一つ数十円程度よ。それも8つ入って300円とか視た事あるものね。どうせならマッチ買ってきちゃう?銅貨で稼ぐ感じになるけど」


「そうだろうけど、数を大量に捌きまくって早くポーション仕入れたいじゃん。次はマッチとガラスポッドで決まり!」


「分かったよ。じゃあ戻ろう。私はまた仕事入ってるらしいから、そのままランで家に居るね。二人はこっちに戻ってくる感じ?」


「そうするよ。んじゃあ一旦ランの家に行って、別れよう」


「OK」


「いいよ」


 異界渡りをしてランの部屋に戻ってくると、マネージャーの迎えがちょうどやってきた。

 二人は室内の死角に居て貰い、ランとしてマネージャーと共に家を出る。

 買出しを頼んだ二人はきっと、今頃は100均だろう。

 ちょうど朝の9時だ、9時半には開店するはず。

 時間を多少潰して出かけるのだろう。


 いいなあ。


 たとえランとして頑張っても、まみこには何も残らない。

 身体もこれは返すものだし、と考えていれば目的地に着いたらしい。

 今日は大企業の社長たちの前で、コマーシャルキャラクターに使用してくれてありがとうと挨拶に来たらしい。

 成程、道理で着替えさせられたわけだと思う。

 いつもの服でもマトモそうな服を着ているため、いつもと違ってダサいと言われるけれど、今日は袖の長い物を着ていたら着替えるけど今日はそんな感じでと言われたのだ。

 どういう事だろうと思ったけど、まあ普通にお偉いさんと会うのだから当然と言う事だろう。


 いつもの恰好がダサいと言われても困ってしまうのだけれど、私服からして半数がステージ衣装風なのもどうかと思うのだ。

 それだけではない、スーツ風なものが三着あったが、どれもこれも礼服として使えるようなものではなかった。

 後で買いに行かなくちゃとは思うが、いつ何時何があると知れないのだからと用意するのはランではなくまみこなのだからどうかしていると思った。


 最近の若い子ってああいうの着るのね、スーツ――と言うか礼服だけれど、胸の形が出過ぎてるから、何ていうか海外のドラマ並よねと思っちゃう。


「………いけない、老け込み過ぎてる」


 ランと自分が違い過ぎて思わず老け込み過ぎてる自分に腹が立ってくる。

 大体なんで私が老け込まないといけないんだ。

 実際にランが若いとしても、だからって自分の常識と合わせて正しくしようとするからいけないのだ。

 これはこれで楽しむべきだとまみこは気持ちを切り替えるのだった。


 スーツではないが、大人しめな服装を着せられて、トゥエニーの2人が一緒に来てくれている。

 アオイ、ミツハである。

 比較的仲が良いとされる二人で、ほっとしている部分があった。

 他の面子はまみこが踊れなかった時、おばさんを連呼して笑いものにした子ばかりだったから、一緒だったら窮屈に感じていただろう。

 アオイとミツハで良かったと思った。


「今日はね、ここでお偉いさんと会うんだよ。コマーシャルで、三人が出たろ?来月からコマーシャル解禁になるから、その前にご挨拶ってことだな」


 喜べ、今日はそれに伴って美味い物を食わせてやると言われ、三人で喜ぶ。


「肉がいいです」


「私も!」


「じゃあ焼肉?でも私しゃぶしゃぶの方が好きなんだけど」


「え、肉元から食べないじゃん。何?食べられるようになったの?」


 と言われ、慌てた。

 何と言う事だ、ベジタリアンだったらしい。

 肉が嫌いでどうやって生きていくんだとばかりにまみこは突っ込みたかったが、ランはそれで生活をして来たのだ。


「ちょっと記憶曖昧って言ったじゃん。熱で――味覚も変化したんだよ」


 と言えば皆都合よく考えてくれる。

 今回も味覚がじゃあ変わったんだねと言われ、ほっと息をついた。

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