第15話醤油は存外高く売れんのね
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「本日はどのような商品を売ってくださるのですかな?」
「本日は塩を入れたこちらの瓶を50と」
いって無限倉庫からそれらを取り出す。
ついで取り出したのは醤油と砂糖だ。
胡椒はプレミアがある感じにしたかったので毎回は売りに来ないことにした。
そうしないと価格が暴落するような気がしたのである。
それは事実であった。
「美しい混じりけなしの白ですね。塩が最近どこの街も足りていないと聞きますから、大変ありがたいです。こちらの砂糖も美しい白ですね。貴重な甘味有難いです。ですがこちらは何でしょうか?」
黒い液体と言って首を傾げる商人に、真二はそれは醤油だと答える。
「ここはキノコを育てているんですよね?キノコがだから大量にあると聞きますから、キノコに振りかけて焼くと大変美味しいです。これを振りかけて焼くだけで香ばしい匂いがしてとても食欲をそそられるのです。そして何でもおいしくなる調味料だと言えますよ」
「ふむ、………アイラ。アイラ来なさい。キノコを持ってきてくれるかい?ザナがいいかな?口当たりがいいだろうし」
「畏まりました」
アイラと呼ばれた女性が交渉するための個室に入ってくるなり、キノコを持ってくることになった。
そして七輪のようなものを持ってきたかと思えば、網の上にそれを置いたのだ。
そこで今から火をつけて食べてみるという事だろう。
まあ願ったりかなったりである。
醤油はそれを垂らして味を見て貰わなければその真価は発揮できないのだから。
ザナと言うキノコはシイタケのようにも見える。
傘が広くて大ぶりなのである。
ただし、色は傘の中が真っ黒なのだが。
見た目がぞっとしないが、食べられるということで持ってこられているのだから、そこは遠慮せずにいただこうとなった。
ただし、誰が食べるかが問題である。
「わたし?」
「わたしね?」
「俺?」
どうぞどうぞと押し付け合うのではなく、自分がやるよと三人とも言い合いをする。
美味しそうだからじゃない、何か断るのは悪い気がしているからだ。
毒味のために自分が食べると言い放つまみこ。
男気溢れるなあと言われ、照れるより殺意が湧いた。
「じゃあ、かけた部分を一口食べて見せますから。それで毒味になりますか?」
「そうですな。――ではどうぞ」
「はい。いただきます」
もぐもぐ――存外野趣溢れる味で、美味しかった。
肉を齧っているような強い味がするのだ。
これは美味しいと言えば、でしょうと誇らしげに言われる。
「では私も、……にしても本当に香しい匂いがしますな。では一口」
もぐ、もぐ、もぐ。
ごくりと嚥下して、商業ギルドの買取担当、アルノーは言う。
これは素晴らしいと。
「確かに旨味が増しておりますな!これは是非買いつけたいものですな。……ですが、初めて買う物ですから、そうですな、一瓶銀貨7枚で如何ですか?」
「それで大丈夫です。なるべくでしたら沢山の人に使ってほしいので、使ってくださいな」
笑顔で言えば、ハイと返された。
――これでこの土地は随分と霧が薄くなってきている。
「何か最近霧、薄くねえか?」
「マスクを取るほどじゃないけれど、随分と空気が澄んできてるよね。この土地だけだけど」
そんな会話が聞こえてくると、宿屋の店主が言うのだ。
あなた達が来てから空気が良くなりましたねと。
「そうですか?」
空とぼけておいたが、こんな時は何と言っていいのか分からなかったからだ。
「ってことで後一回か二回買出ししてくれば、ここでポーションが買えるよ!」
「おうよ、リアルマネー手に入れるまでやるっきゃないっしょー」
「そうだね!!」
金貨をまたもおよそ100万円程追加で得てはいるけれど、そう言った話しになった。
どうせならばポーションを買い占める形でいって、向こうで荒稼ぎしたいと言うのだ。
「――どうせなら私は、そこで今の身体の事情を話して分かって貰えたらなあって思う」
「やめよ?だってそれって、私からするとかなり危険と思うよ。多重人格何て呼ばれちゃうかもしれないじゃんね」
あまねに言われてまみこは俯いてしまった。
精神障碍者のように言われてしまうと言われても、困る。
障害者差別をするつもりはないけれど、実際にそうやって健常者なのに信じて貰えず精神疾患だからと言われてしまったらどうするの?と言われれば泣きたくなってきた。
そんなの、まみこだって考えなくはなかった。
「俺、そんなの考えもしてなかったや。 でも、そんなの信じて貰えないって思ってたら誰にも話せないぜ。俺、男の人格だからだよとか言われるの?マジそれって逆に怪しいくらいあほみたいな話しじゃんか」
真二が言うと、まみこは止めようこの話と打ち切った。
まみこはこんなところで三人がマイナスな話をすることを良しと思わなかったのだ。
だけれど考えなければならない事は山ほどあると言ってあまねは食い下がるように言うのだ。
「そもそもラン以外は私達二人、ある意味では行方不明者なだけよ。どうする?きっと従姉妹ちゃんだろうとは思うけど、小さい頃あっただけだから分からないよ?とか思うわけでね」
真二はそれを聞いてぎょっとする。
あまねの親戚だと思い込んでいたから身体を大切にして来たのにと言うのだ。
「赤の他人だとしても慎重に見てあげてよね」
「それは必須だと思うんだわ」
「そだね」
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まさかの更新ミスりました。
アップ水曜日になってるはずー。
大丈夫かな?と思いながら、アップしました。
よろしくお願いします。
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