第10話失踪って思われてないのかな?

*****



 宿泊はこちらの異界の方になる。

 何故か――簡単だ。

 ランだけはスマホがあったし、当人の家に行こうと思えばマネージャーの家に行けばいいだろうとは言える。

 けれど他の2人はポケットにスマホがなく、どうあっても自宅に帰れないのだ。

 だから拠点は異界渡りをした先の、朱塗りの建物があった世界になるということ。


「ようやく寝れるところに来たけど、マスクが手放せないから、早い所荷物をもっと運び入れましょう。今度は何を持ってくる?」


「別の街に移動が出来ないなら、基本的に塩でしょうね。人間塩味がしないと生きていけないらしいから」


「それはあるらしいね。じゃあ塩は買ってくるとして。他は?」


「何が必要か調べてこようぜ」


「そうね、宿屋で静かにしている分には空論でしかないものね」


「決まりだね。行こう」


 街に下りてみれば、そこは存外活気があった。

 けれど皆顔色が悪い。

 当然か、とも思った。


「霧がまた濃くなったと思ったら、あっちの方は空を見ろ。晴れ間が指してるだろ?」


 まみこたちが壊しまくった森林地の方を指さしている者達がいる。

 そこはマミコ達が壊したからなのですが、ともいえず、そそくさと何気ない風を装い近づく。


「あそこに引っ越したいよ。きっと空気が吸えるはずだ。もう何年吸ってない?青空の元で生きていきたいよ」


「でも今日は随分と空気が綺麗よ。毒霧も随分薄いと思うから」


「そう言っても無くなったわけじゃないだろうに」


 皆困り切っているらしい。

 顔色が悪いのを見て、胸が苦しくなった。


 ここで分かったのは、魔獣が居る世界ということで、魔獣狩りをする自警団が居るという事だ。

 彼らは薄霧の中を歩くのに前が見えないという。

 薄暗いのだ、この世界。

 なので額につけるタイプのライトを持ってくることにした。

 他には何があるかなと、街の中で話を聞くと、分かったのは、紙が売れそうな事、それとボールペンは鉄板かもしれない。

 羊皮紙を作るための獣が育たないのだそうで、紙が今足りないのだとか。

 因みに羊皮紙は羊を使うと文字にすると思われがちだろうが、実際は様々な獣の皮を使って書いてあるらしい。


 閑話休題。


 話しを戻そう。

 ボールペンを持ってきて、こちらの世界に来ているまみこの身体やあまねの体、真二の身体を探したいのだ。

 異物を確認し、この街に集まって欲しいと思っていた。


「じゃあどうする?塩と胡椒砂糖。それと、紙ボールペン?後は額のライト?」


「額のライト、名前何ていうか分からないけど、兎に角買いに行こうね」


「そうだね。たぶんワークマンとか売ってるよね」


 売ってなかったらどこで買えばいいんだろう?と三人は困った表情をした。

 自宅が三人は現在日本に存在していない。

 そのため通販などを活用するためにインターネットで購入するという、普通の事が出来ないでいる。


「何か地味にだけど、凄く不便になったよね」


「ほんとそう思う」


「私の家にだったら独りだから行けるっちゃいけるんだけど、問題は私自身がいかないってことと、鍵がなくなってるってことなんだよね」


「危ない橋は渡らないことにしよう。行かない方がいいよ」


「そうだね。うん」


 通報何てされたらシャレにもならないものねとあまねの声がぽつりと、だが大きく響いた。



 異界渡りで地球に帰ってくると、翌日、ワークマンに行ってみたらある噂を聞いた。

 曰く、トゥエニーのランが風邪を引いて歌番組の生番組に出られないかどうかという、話題が出ていたけど本当かなあ、だそうだ。

 昨今のニュースでは、SNSの話題が取り上げられるらしく、トゥエニーのダンサーが数名どうしようと呟いたという事なのだ。


 なんか、あれ、これどうしよう――?!?!?


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