第3話幾らがさつでもあれはないよー?



*****


 割った鏡がキラキラと自分自身に光の粒子となって入り込んでくる。

 しかもさっきのコピーマスターってなんだ?

 誰?

 止めてよ、止めて、これ以上の異常事態はごめんだわ!!!


 けれどまみこが手を振ってもがいたところでその粒子は身体に取り込まれてしまった。


「一体、何だったの・・・」


「誰かいるのか?」


「!!」


 口を手のひらで押さえて、思わず出そうになった言葉をひっこめた。

 誰、誰かいるの?

 怖くて思わず出てきそうになる言葉を飲み込んだ。

 すると男性の声でそれは続けられる。


「私はあまねって言うの、誰か居るんでしょ?」


 あまね――女性名だろうか?

 その割に男性で、なよなよとした喋り方をする。

 LGBTの人だろうか?と思う。


 そうしたら声は語る。


「私、女なの。だけど身体が別人になっちゃって・・・・いてね、困ってるの!あなたも同じなの?」


「・・・・・・同じです」


 呼吸が荒くなっていくのを感じる。

 怖い、怖い、怖い。

 だって、声の主がもしかしたら、こんなところで誰もいない所で、襲い掛かってこないとも限らない。

 それかこっちの状況を分かってる人間だとしたら?

 人間以外が居るだなんて思えなくて考える。

 思考をする。

 そうだ、もしもこんなところに連れて来れる物が居るなら、それは超常現象を起こすようなエスパーだったりするかもしれないじゃないかと、非現実的なところから、またギリギリ許容範囲のものを持ち出して考える。

 なら、思考を読まれて言っているかもしれないから、妙に納得させられるのもおかしい――なんて、相当におかしなことを考えていることは脇に置いておいて、まみこは言う。

あなたは人間なのかと。


「人間よ!!あまねっていう日本人女性、それであなたは!?」


「私は、人間、だけどあなたがこうした張本人かもしれないとも思ってるの!だから証拠を見せて頂戴、何か、自分がやましい人間じゃないって」


 無いものは見せられないと言う事を抜きにして考える。

 どうかしていたと思う、けれどそれでも身の安全を保障されない限り、あまねと行動は出来ない。

 何処かで隠れて声をかけてくるあまねに、不信感だけが募っていた。


「じゃあ姿を現すから、あなたも姿を見せて!」


「両手を上げて姿を出しましょう。お互いに!」


 武器になる物はないと見せるために、お互いにそうして見せるようにしようと言うと、武器何てこの場所にあったの?というあまね。


「鏡があったの。割れて消えちゃったけど・・・」


「ああ、成程ね。確かに武器になるわね・・・じゃあ、行くわね」


「ええ、お願い」


 ばっと木像がある場所から光が灯されているエリアに小走りで書けていくまみこ。

 あまねも同じようにしたのだろう、木像の間を挟んで逆側に居たという事だろう。

 ぱっと飛び出してきた男性は、あまねだと叫ぶ。


「わたし、あまね!あなたは?」


「ま、まみこ!さっき鏡見たら・・・・・私別人になってるの」


「そう・・・・私もそうだけど鏡は見ていないわ。私が見たのは布だけど、何かに使えるかしらって手に取ったら消えちゃったのよね」


「同じだわ・・・私も鏡を割ったら消えちゃったんだ」


「そうだったの・・・・」


 凄い警戒しているけど、何かあった?と言われれば、口を噤んでしまう。

 顔を見たから恐怖が増しているからだろうが、どうしたら、どういえばいいのだろう?

 ぽつぽつと先ほどまであったこと、恋人ともう二度と会えないと思っていることなどを告げれば、あまねに同情されてしまった。


「わたしは実は天涯孤独の身の上なのよね。ぶっちゃけて言えば家族は居ないってことで、その遺産だけで食べてるから、私からすると羨ましい話だわ」


 相手もいなかったものと言われ、そうかと返す。

 何と言っていいか分からなかった。


「そう言えばわたし透明マントって聞こえたわ、あなたも何か聞こえなかったかしらね?」


「あ・・・・私はコピーマスターって言ってた」


「それ何かしら?透明マントって言ったら創作の世界の話よね」


「うん・・・・」


「おおーい、誰か居ないかー」


「え・・・女性?」


「おおい、おおーいっつか、マジでここどこすか。誰かいねーのー?」


「何か声・・・・どこかで聞いたことあるような声がするのよね」


「え?そう?」


「何か聞いたことあるような」


 こっちよーと首を傾げ乍らあまねが言えば、ばたばたと足音をさせてだれかが近づいてくる。


「おおーい!誰か居たあ!怖かったよおおおおおおお」


「ええとお・・・」


 従姉妹ちゃんだあって言われて、驚く。

 従姉妹のお嬢さんはあんな喋り方するの?とも思ったけれど、凄いがなり声なのだ。

 喉を潰すような喋り方をして駆けてくるその姿を見て、まみこは恐怖する。


「ねえ、もしかして中身彼女も違うんじゃあ・・・」


「そんな・・・・ええ?でも、あんなだったよおなあ、なんてねえ?」


「おおーい!俺、女になってるんだあ!助けてくれぇ!」


「違うじゃん!?従姉妹じゃないじゃん!!」


「ええー?だって、違うって言っても、従姉妹ちゃん元からがさつだから」


「がさつだからって、スカートをまくり上げて駆け足でくるのあんたの従姉妹は!?」


「それはしないかあ・・・・・」

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