第23話
「ええ、俺とマリルはお互い離れられないほど仲がいいんです」
アーロン様はそういうと私の肩を抱き寄せた。
まぁ確かにお世話係で側近になるんだから離れる訳にはいかない。
「そうですね」
私はコクっと頷いた。
「マリル!」
すると私の行動にアーロン様が嬉しそうに頬を高揚させ私の方を見つめた。
「はい、アーロン様は私がお仕えする方です。どんな時もおそばにいますよ」
そう言って笑うと何故かガックリとうなだれてしまった。
「まだまだ大変そうだね」
王子が笑うとアーロン様はまたキッと目付きを鋭くして立ち直る。
「だからマリルはダメですから」
なにがダメ?
急にアーロン様にダメだしされる。
しかし王子には通じたらしくニコッと笑う。
「わかっているからはさ安心して、それに僕はちゃんと婚約者がいるからね」
「そう……なんですか?」
「うん」
そういうとアーロン様はホッとしたように椅子に深く腰掛けた。
「ごめんね警戒させて、でも君達にはずっと会ってみたくて話をしたかったんだ。だから今日のお茶会に来てくれると聞いて嬉しくて」
「アーロン様の事ならわかりますが、私もご存知なのですか?」
私は身に覚えがなくて戸惑った。
「ブライアン侯爵家のアーロン様は有名だよ、奇病から立ち直りその姿は呪いが解けたかのように美しい……ってね」
「呪い……」
確かにあの辛い日々は呪いのようだった。
でもそんな魔法みたいに簡単に解けたわけじゃない!
アーロン様はたくさん努力して我慢して今の姿に戻れたのだ。
そして今でもまた病気が再発しないように気を使っている。
私が黙ってしまうと今度はアーロン様がふっと笑った。
「そうですね、その呪いを解いてくれたのはここにいるマリルだけどね」
そっと私の手に自分の手を重ねた。
「違います!それはアーロン様の努力のおかげです」
「うん、でもマリルの力が無かったら俺は今もあの屋敷に閉じこもっていたと思うよ」
アーロン様……
二人で見つめあっているとローゼン王子が咳払いをした。
「君達の絆はよくわかったよ、それでそんな君達にお願いがあるんだ」
今までにこやかだった王子がスっと真剣な顔になり声を小さくする。
「明日、二人で僕の屋敷に来て欲しい」
「ローゼン王子の?それって……」
「うん、王宮に来て欲しいんだ」
王子はまた笑顔で私たちを見つめた。
この後はたわいない話をローゼン王子と私アーロン様で繰り返した。
ローゼン王子とアーロン様に群がる令嬢達は王子の護衛がガードしてくれて私達はゆったりとしたお茶会を堪能できた。
アーロン様はローゼン王子に婚約者がいると聞いてから態度も柔らかくなり、私が花摘みに少し席を立つ間に急に仲が良くなり、最後の方は親しげに話をしていた。
時折二人にしかわからない会話をしていたのが気になる。
なんか伝わらないとか鈍感とか心配など共通の話題があるようだった。
そして私達は次の日王子の屋敷に遊びに行く約束をして無事お茶会を終えることができたのだった。
補足……アーロンとローゼンの会話
マリルが花摘みに立つとアーロンはマリルが見えなくなるまで後を目で追った。
そして建物内に入るとため息をついて前をみる。するとローゼン王子がニコニコと何か言いたげにアーロンを見つめていた。
「何か?」
不機嫌に返すと王子は笑った。
「本当にマリルのことが大切なんだね」
「そうです、彼女の為なら王子にだって負ける気はない」
アーロンの言葉にローゼンは少し驚いた顔をした。
「そこまで……でもわかるよ。僕も同じくらいサラの事が大切だから……」
「サラ?」
「僕の婚約者、小さい頃から一緒で僕の一番の理解者……でも」
ローゼン王子は顔を曇らせるがパッと表情を戻してアーロンに笑いかける。
「だからマリルのことはそういう感情はないよ。まぁなんか小動物ぽくて可愛いけどね」
「わかる!マリルは実はしっかりとしてるように見えてなんかドジでほっとけないんだ。それに自分の事を過小評価してるのも許せない、本当にマリルはすごい子何のに」
「そう……」
王子の対応にアーロンはハッとする。
「すみません、同年代の友人がいないもので対応が親しすぎました」
ペコッと謝る。
「いいよ、僕もなかなかこの立場から気を許せる友人ができないんだ、よかったらアーロンがそれになってよ」
王子が呼び捨てで話けけてくる。
「はい、ローゼン王子」
「だめだめ、友人ならローゼンでいいよ。それに言葉も崩してよ」
「ああ、ローゼン」
アーロンはマリルに見せるのとは違った笑顔を見せる。
するとマリルが戻ってきた、そして二人の顔を見比べて眉をひそめる。
「なんか雰囲気変わりました?」
「すごい鋭いね」
「そうなんだけど……マリル、お茶いる?」
冷めてしまったお茶を退かせて新しいのを入れさせようとすると……
「もったいない!飲みます!」
冷めたお茶を一気に飲み干す。
「新しいの入れて貰えばいいのに、俺ならマリルにいつでも新しいお茶を入れるよ」
そっとマリルのカップの縁を指でなぞり瞳を見つめる。
「大丈夫ですよ、それにアーロン様には私が入れますから、なんせお世話係ですからね」
マリルは必要ないと笑う。
その様子にローゼンはお茶を吹きこぼしそうになった。
「ほらな、鈍いんだ」
「本当に、なんか心配になるね」
「でもそこも可愛くて好きなんだ……」
アーロンはお茶を入れて貰うのを嬉しそうにするマリルを見つめた。
「早くアーロンの気持ちが伝わるといいね」
「ありがとう」
アーロンとローゼンはその日から障害の親友となった。
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