第24話
次の日、私達は再び馬車で王宮を目指した。
「それにしてもどんな相談ですかね?」
アーロン様ならまだしも私なんかが役に立つような事があるだろか?
私が呼ばれた理由が未だにわからなかった。
「俺も父上に少し話を聞いてみた。ローゼン王子の婚約者のサラの事かもしれないと……」
「サラ様?」
「ああ、二人の仲は親も本人達も認めた公然の事実で国中が知っている」
「私……知りませんでした」
「まぁ俺達は例外だよ、ずっと世間から遠ざかってたからね」
しかも私に至っては庶民だったし、貴族の人達と関係を持つなんてありえないから国王の名前くらいしか知識も無かった。
マリエルさんのお勉強によって最近知ったぐらいだった。
「それでそのサラ様が最近姿を見せないらしい」
「え?」
「俺の病気が良くなったのも知れ渡ってるからそっち関係かもしれないな」
「サラ様が病気って事ですか?」
「そういう可能性が高いって事」
「えー困ります。私医者でもないのに病気なんて治せませんよ」
「でも俺を治してくれたじゃないか」
「それは私がその病気にかかったことがあったからで……他の病気の事なんてわかりません」
急に心配になってきた。
本当に病気で私が何もできないなんて言ったらアーロン様やジェイコブ家の皆さんに迷惑をかけるかもしれない。
「大丈夫だよ、その時はその時。それにマリルみたいな子供にそこまで責任を押し付ける事はしないよ」
「そ、そうですよね」
そう聞いて少しホッとする。
ちょっと緊張しながら私は王宮を見つめた。
この前のお茶会の広場をすぎて城のそばまでいくと門番に停めらる。
何かやり取りをして王宮内に入りまたしばらく馬車で移動した。
「広いですね、自分の家でも迷っちゃいそう」
王宮と言っても中にいくつか建物があり、その中のひとつに案内された。
その建物の前につくと馬車から降りる。
すると門からローゼン王子が小走りで出てきた。
「ようこそ」
笑顔で私達を出迎えてくれた。
「ご機嫌よう、ローゼン王子」
「昨日ぶり」
アーロン様は軽く挨拶をするが、その様子にローゼン王子も同じように返していた。
「ついてすぐで悪いけど建物に入ってくれるかな?」
ローゼン王子にうながされて建物に入り、既視感に襲われる。
そこは前から見た雰囲気とは違い暗く空気もどんよりとしていた。
「これって……」
アーロン様と初めてあった部屋を思い出される。
私とアーロン様はお互い顔を見合わせた。
「驚いたよね、ちょっとこっちの部屋に来てくれるかな?」
入ってすぐ隣の部屋に通された。
その部屋は少し明るいが同じように暑いカーテンに覆われていた。
「えっと……」
何から聞いていいかと言葉を探すとローゼン王子から話してくれた。
「話をする前に一つ約束してくれ、ここで見た事は他言しないと、君達なら信用できると僕は思ったから招いたんだ」
私とアーロン様は頷きあった。
「はい、決して他言致しません」
「俺も誓う」
私達の言葉にローゼン王子が真剣に頷く。
「君達ならそう言ってくれると思ったよ。でも信用してない訳じゃないが誓約書を書いて貰えるかな?」
申し訳なさそうに署名をお願いしてくる。
私達はそこまでするほどの秘密なのかと驚きながらも他言する気はないので署名する。
「ありがとう」
ローゼン王子はホッとしてその書類を執事らしき人に渡した。
「躊躇わず書いてくれて嬉しい」
硬い表情が少しやわらいだ。
「それで?なんで部屋を暗くしてるんだ?」
アーロン様が早速話を進める。
「これはサラが……誰にも見られたくないと言って、こうでもしないと不安らしくて」
「サラ様は何かご病気なんですか?」
「いや……わからない。体に問題は無いんだけどその……」
チラッとアーロン様をみる。
「いいよ、気にしないで話して」
アーロン様が先を促した。
「ありがとう。アーロンも皮膚がただれて人に見せられる姿じゃないと噂があったよね?」
「ああ、実際そうだったよ」
「サラも同じかもしれないんだ」
サラ様もアトピーってこと?
私達は顔を見合わせる。
「ほんの1年前ぐらいから顔に赤いボツボツができるようになって、最初は1個とか2個であまり気にしてなくて……でも日に日に数が増えてサラは気にして屋敷から出なくなったんだ。顔に薬を付けてもまた違う場所から出来物ができるを繰り返して最近は顔も見せてくれなくなった」
ローゼン王子は話しながら悲しそうな顔をする。
「僕はどんなサラだって平気だと言ってるんだけどサラは信じてくれなくて、この前はとうとう婚約を破棄したいと……」
ローゼン王子は悔しそうな顔をして拳を握りしめた。
「ちょっとサラ様の顔を見てもいいですか?」
私はとりあえずアーロン様と同じなら見てみたいと思った。
「それが……私も見て欲しいのだけど」
気まずそうに執事達と顔を見合わせる。
「とりあえず部屋の前まで案内するよ」
ローゼン王子が立ち上がり私達は後に続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます