第22話
「ローゼン王子、ありがとうございました」
私はマルコイ様達が見えなくなると王子の手をスルッと離し頭を下げた。
「いいんだよ、今日のお茶会はみんなに楽しんで帰って貰いたいからね」
ローゼン王子は気にした様子もなく笑っている。
「でももしありがたく思ってるなら少し付き合って欲しいかな?」
「付き合う?」
「お茶をね、みんな僕に遠慮して一緒に飲んでくれないんだ」
ローゼン王子は少し寂しそうに笑った。
それなら!と私は閃いた!
「王子!私連れがいますのでその方もご一緒してもよろしいでしょうか?」
「連れ?うんいいよ」
王子は快く了承してくれる。
私はすぐに戻ると約束してアーロン様を探しに行った。
アーロン様は先程別れた場所で必死な顔で私を探してくれていた。
「アーロン様!」
「マリル!」
アーロン様は私の顔を見るなりハッとしてこちらに駆け寄ると抱きしめてきた。
「ア、アーロン様?」
「どこにいってた!心配しただろ!」
そして怒った顔でたしなめてくる。
「す、すみません。飲み物を探しに行って迷ってしまい……」
お茶会に来てからやらかしてばかりで不甲斐ない、しゅんとして身を小さくするとアーロン様からため息が漏れた。
「もういいよ」
呆れさせてしまった。
顔をあげられずにいるとアーロン様が身をかがめて私の顔を覗き込んだ。
「マリルが無事ならそれでいいよ」
そして安心したように笑う。
その笑顔に頬が熱くなった……
「あ、あのそれで……先程助けてくれた方がいてアーロン様にも紹介したいのですが」
「助ける?何迷子だけじゃなかったの?何かされた?」
アーロン様がイヤに食いついてくる。
「大丈夫です、それよりその方を待たせているので早く!」
私はアーロン様の手を掴んで王子の元まで引っ張って行った。
「あそこです!」
王子はお茶会に用意されたテラスに腰掛けて私たちを待っていてくれた。
よく見ると周りに護衛らしき人達が少し離れて立っている。
先程は気が付かなかったが王子なのだそれなりに人が着いているのだろう。
近づいても問題ないかな?と様子をうかがっていると王子が私に気がついて立ち上がり手を振った。
それを見て大丈夫そうだとアーロン様と近づいていく。
「お待たせしてしまってすみません。それにご挨拶もちゃんとしていなくて……私ジェイコブ家のマリルと申します」
「うん、僕はさっき言ったけど」
「はいローゼン王子」
私はスカートを持って軽く頭を下げた。
「お初にお目にかかります。ブライアン侯爵家のアーロンです」
アーロン様も王子と聞いて挨拶をする。
でもなんかいつもと違い声が低く感じた。
チラッと顔をみると若干目つきが悪く見えた。
「アーロン様にマリルだね」
「は、はい」
マリルと呼び捨てにされてちょっとドキッとしたが立場を思えば当然かと頭を下げた。
「#俺のマリル__・__#が助けられたようで感謝致します。それでは……」
アーロン様はローゼン王子に頭を下げると私の手を掴んでその場を去ろうとした。
「え?」
なんでとアーロン様を引き留めようとすると……
「よかったら二人とも一緒に少しお茶しないかい?」
ローゼン王子が誘ってくれた。
アーロン様もさすがに王子の誘いに断るのも失礼かと思ったのか少し考えて頷いた。
「それでは一杯だけ」
アーロン様どうしたの?
私はわけがわからないとアーロン様と何故かニコニコするローゼン王子を見比べた。
私達はテラス席に座ると近くにいた給仕係がお茶を持ってきてくれた。
さすがに王子の飲み物は毒味など必要なようで専属の給仕が付いているみたいだ。
ついでに私達の分も入れてくれてありがたくいただく。
なんとなくピリピリとした空気に私は明るく声を出した。
「い、いただきます」
お茶を飲んで感想を言わなきゃと思ったが……「美味しい!」あまりの美味しいお茶に思わず素の声が出た。
「アーロン様!このお茶美味しいですよ!飲んでみて下さい」
アーロン様に進めると少し空気が優しくなった。
「うん、美味しいな。でも俺はマリルの入れてくれるお茶の方が好きだな」
「へー、それは飲んでみたいな」
王子が興味があると話に入ってきた。
「ローゼン王子に飲んでいただくようなものでは!」
「そうだな、マリルは俺にだけ入れればいいよ」
アーロン様はそっと私の手を掴む。
「ぷッ……」
するとその様子にローゼン王子が吹き出した。
「何か?」
気に入らないとアーロン様が王子をジロっと見つめる。
「ア、アーロン様失礼ですよ」
なんだってアーロン様はこんなにも喧嘩腰なんだ!
どうしようかとアワアワとしていると目の前のケーキに目がいった。
「お、美味しそうなケーキ!いただきます!」
ケーキに話をそらそうと大きな口で一口で食べる。
する時クリームが口の周りにいっぱいについてしまった。
「んんんん!」
どうしようと喋ろうとするが口がいっぱいで喋れない。
モゴモゴと必死に口を動かしているとアーロン様がハンカチで口を拭いてくれた。
「マリルはしょうがないな」
そうは言いながらも優しい顔をしている。
「ありがとうございます」
やっと口の中の物を飲み込めてアーロン様にお礼を言った。
「二人は仲がいいんだね」
すると私達のやり取りに王子が少し悲しそうな顔で微笑みながら見ていた。
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