掴めない君に

 誰かに成り果てた志綾しあ

 「志綾様?」

 筒夏つつなは恐る恐る志綾の方を見る。

 「志綾・・」

 茶泉といが何かを思って志綾を見る。

 「はぁ~。やるなら止めないでサクッとやってしまえば良いのに、お前達はどこまでも優しいなぁ・・・・・・それが幻滅したと言ったんだ。昔のお前は阻止の声も聞かずに殺してた。だが今のお前はどうだ?躊躇ってる。どうしてそこで躊躇っているんだ?躊躇うのなら脅すな、目の前に現れるな、自分はこれから人を殺すんだと思ってやれ、自分を弱くみるな、自分は殺せると思え、そうしないと精神こころが病むぞ・・・お前は、繋家に向いてない、志綾が優しいから、志綾が自分を必要としているから、甘くみるな、志綾が弱り、自分がそばにいないとと思ったか?志綾には僕がいる。男の僕が。お前なんかいらない。お前がいると志綾が僕を忘れる。お母様とお父様、宮南瀬みなせは志綾と志飛しとは双子というにした。設定にしたのなら、僕は?僕は?どうなった?志綾がまだ、僕だった時、志綾は心の中にいた。でも、僕は僕が心の中にいた!志綾が外で僕が中?そんなの、そんなの、女は中だろう?男が外で働くはずだろう?じゃあ、逆じゃないか、僕が外のはず、どうして、どうして僕が中にいるんだ?おかしい。おかしい。筒夏に志綾が抱き締められている時、僕は惨めだった。だってそうだろう?僕だったら志綾みたいにはなんなかった。だって僕達は男だから・・・・・・なぁ、葉椿はつば。僕に、どっちになりたいのかと聞いたよな。男が女、どっちに、」

 弱音を吐いたは睨んだような顔をしてナイフで脅されている葉椿に聞いた。

 「う、うん、聞きました。」

 「・・・どっちなんってない。僕は結局は男ということを隠して過ごさないといけない。だってそうでしょう?僕の言葉なんってなんの意味もない、だからさっきの質問だって僕は・・・・私はって答えないと行けないのだから・・・・・筒夏さん、もう質問は終わりました。離してあげてください。荼泉様。教室に戻りましょう。もうチャイムが鳴ってしまいました。」

 志飛はいなくなって志綾に戻った。

 「志綾、お前・・」

 「ごめんなさい。私は大丈夫。私は大丈夫です。」

 「いや、違う。お前が志飛と名乗る時、志飛として喋る時はお前が思ってる本心なんだろう?」 

 「・・・いいえ、違います。私は志綾です。志飛は殺されたはずです。私は志綾で・・・す。」

 志綾は駆け出す。廊下に出て走って行った。荼泉もすぐに追いかける。


 逃げるな、逃げるな。

 

 お前は正しい。

 

 間違ってるのは要家と繋家の伝統だ。


 良いんだ、自分を曝け出して、


 男になったって


 俺はお前がだから


 婚約者として好きではなく本心なんだ。


 自分じゃ分からないけど


 多分、この思いは、俺の本心だ。


 だから、俺から逃げないで


 逃げないでくれ、

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