きっと大丈夫だから
熱を出した
「まだ、熱下がりませんか?」
ドアの前から
「うんん、少しは下がりました。明日は行けそうです。」
「ホッ。良かったです。朝、
「・・・筒夏さん、学校にいきました?」
「え、いえ、今日は志綾の面倒をみると」
「筒夏さんを呼んでください」
疑問に思いつつも茅鶴は筒夏を呼びにその場を離れた。
「筒夏。」
「どうかされましたか?」
「志綾が呼んでいますよ。」
「!すぐに行きます。」
筒夏は駆け足で志綾の部屋に行く。
「どうかしましたか?志綾様。入ってもいいですか?」
ドアを開けようと手を伸ばした時「ダメ、今はダメ。ダメなの。見られたくない。」と声を上げた。
「そうですか・・・では、ここで聞きますね。」
「学校。学校行かないの?」
「・・・行きませんよ。だって熱で苦しんでいる志綾様を放っておけません。」
「私は、私は。きっと筒夏さんの言葉とは合いません。私は、今日ズルをしました。私は
話が途切れた。それは筒夏が志綾を抱きしめたから。ギュッと力を込めて。
「筒夏さんッ。入ってはダメだと。」
「志綾様!落ち着いてください。落ち着いて・・・貴方は正しい。正しいことをしています。私が貴方を守れずここまで精神状態にしてしまった。ごめんなさい。貴方は休んでいいんです。辛かったでしょう。寂しかったでしょう。寒かったでしょう。もし志綾様が許してくださいるのなら今日だけは私を志綾様のそばに居させてください。」
「でも、筒夏さんにも友人が・・・」
「友人も大事ですが今はただただ貴方のそばに居たい。きっと友人も許してくれます。」
泣いている志綾を抱き締める。
「・・・」
「茅鶴・・・」
影から話を聞いていたのか茅鶴は寂しそうに二人を見つめていた。茅鶴の肩をポンと
「・・・志綾・・・志飛は強い。強いから、大丈夫。大丈夫だから、」
「薫様。」
「茅鶴・・・大丈夫だよ、きっと、きっとね。」
「・・・ふふ。薫様。
「あ、『きっと』は時咲様の口癖だったな。」
「はい、いつも時咲の『きっと』に助けられています。『きっと』と言う言葉は私を強くさせてくれます。」
「茅鶴は本当に・・・俺より強くて羨ましいよ。」
薫は茅鶴の肩に顔を置いた。慣れているのか茅鶴は薫の頭を撫でる。
「私が強いのは薫さんや志綾、筒夏がいるからですよ。三人がいなかったら私は強くないです。」
「・・・少しだけ肩を貸して」
「ええ、少しと言わずに何時間でも・・・」
肩で薫は泣いた。
惨めかもしれない。
大人なのにと言われるかもしれない。
子供がいるのに泣くなと言われてしまうかもしれない
でも、今だけは、今だけは泣いてもいいかな?
ずっとお手本の父でお手本の男で立派な父を演じ続けて来た。
今、この瞬間だけは子供みたく誰かに甘えてもいい?
きっと泣くのはこれで最後だから、もう俺に泣くほど辛いことは起きないから
きっと、きっと大丈夫。
『薫様。茅鶴様。きっと大丈夫です。きっと、きっとね。』
茅鶴だけじゃない、俺も時咲様の『きっと』と言う言葉に支えられていたんだ。
きっと大丈夫。きっとね。
きっと幸せ、きっとね。
きっと大丈夫。だって二人の子供なのだから。きっと大丈夫。
三人・・・四人入れば大丈夫。大丈夫だよ。
あぁ、大丈夫。
四人入れば大丈夫。
幸せななれる。
大丈夫
大丈夫
大丈夫
大丈夫・・・
大丈夫・・
大丈夫?
だいじょう・・・ぶ?
本当に?本当に大丈夫?
今の俺には分からない。
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