第23話
ビルから出て少し待つと、黒塗りのキャラバンが走ってきた。窓が開き、運転席から大友の顔が見えた。莉久と二人で乗り込むと、度肝を抜かれた。荷台に銃やボーガンなど武器が整然と並べられていたのだ。
「榎本さん、莉久さん。お久しぶりです」
大友が丁寧に挨拶して、微笑んだ
「大友さん、これって……」
「そこの武器ですか? 万一のことがあったら自分で自分の身を守らないといけませんからね。今の翔さんはマトモじゃないですし」
大友は淡々と言った。キャラバンが発進して一気に加速する。
数十分後、キャラバンは仙台市の郊外、泉区の山奥を走る。目の前には、黒くて角張った、台形の山がそびえている。泉ヶ岳だ。
運転しながら大友がしゃべり出した。
「ウチの社長、実は前々から『菅原が泉ヶ岳に覚せい剤の製造プラントを作っている』って言っていたんですよ。我々の競争相手ですから、ある程度監視をしているんですよ」
目の前で道が分岐している。道の脇に、寂れたラブホテルがあった。真四角で低い建物で、外壁は一面汚れていて、茶色の線が何本も走っていた。その駐車場にキャラバンは停まった。
「ここが私どものアジトです」
車を出て、ホテルの玄関に近づく。大友が玄関脇の端末へカードを当てると鍵の開く音がした。大友がドアを開けて中へ入り、そのままホテルの管理室へ入る。管理室には、テレビモニターが並び、そのモニターを老人がじっと眺めていた。
「オヤジ、今日のスガワラは何をやっている」
「おお、大友ちゃん。あいつ、今日はずっとシャブの製造プラントにいるぞ」
老人はケタケタと笑った。
モニターを覗くと、画面中央の奥に、寺のような建物がある。左には、真新しいプレハブ小屋が数個並んでいて、小屋の窓越しに数人程度の人影が見えた。
大友が画面を見つめながら説明し始めた。
「軍はここから森を一キロ突っ切った場所にあります。部下を軍に忍び込ませて偵察をしています。この映像は部下がつけた監視カメラの映像です。中央が軍の本部。古い寺を改築したらしいです。あのプレハブ小屋がシャブを製造するプラント。売ると金になりますからね」
「そこまでして金を稼いで、翔は何をしたいんです?」
「『人類の救済』だそうです。手段として、オオツカ・ミライ及び日本国を徹底的に破壊するそうです。ちなみに、これはふざけているわけでなく、本気で語っているそうです」
訳が分からない。だが、翔を正気に戻したい。
「どうします? こんなヤバい人間のところへ今から行きます?」
行くしかない。そう思って声を出そうとしたら、莉久が声をあげた。
「行きます」
莉久の目ははっきりと大友を見つめていた。
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