第7話 10点×10点×10点×10点
チェンジで。
切実に思った。
(なんで、どうして、俺のパーティメンバーはササリスなんだ!)
俺もラーミアがよかった!
ちゃんと俺の想定の範囲内で行動してくれる仲間がよかった!
チクショウ! チクショウ……ッ!
(とはいえ、ラーミアはシロウのパーティに必須の人材。引き抜きはさすがにできないからなぁ)
ラーミアを味方に引き込んだせいでうっかりシロウが死んでしまいましたじゃ話にならない。
俺の最終目的はシロウの精神面での成長に貢献することだ。
シロウの心技体の後ろ二つは俺以外の奴にサポートしてもらう必要がある。
(はぁ、人材派遣だと思って割り切るか。釣り逃した魚は大きいな)
港町だけに。
と、あんまりのんびりしてられないな。
ラーミアが危機に陥る前にゴブリンどもを掃討しないと変なフラグが立ちかねない。
サクッと倒してしまおう。
ゴブリンごとき、【退魔】で十分だろ。
くらえ必殺文字魔法。
「なにっ⁉」
ラーミアが前線に出たということはすなわち、彼女は俺たちに背中を預けている状況なわけだから、俺の放った魔法は彼女の背後からゴブリンども目掛けて拡散していく。
淡く光る聖なる光がゴブリンどもの肌を焼き焦がし、塵すら残さずに消滅させていく。
その光景に、ラーミアが絶句する。
「な、何が起きたんだ」
だから俺は身もだえしそうになった。
(くぅー! 俺が言ってほしかったセリフ! ドンピシャ!)
ラーミア、お前才能あるよ!
期待していいのか⁉
次のセリフも言ってくれるのか⁉
「お、お前たちはいったい、何者なんだ」
言ったぁぁぁぁ!
言ってくれました!
俺が望んだセリフを一言一句たがわず!
ものの見事に読み上げてくれました!
これには採点に辛口のロシアもにっこり。
10点 10点 10点 10点
堂々の満点優勝です!
「フッ」
決まった。
何も語らずに立ち去る俺。
演出として完璧すぎる。
「ま、待て!」
こいつ、完璧か?
立ち去ろうとする俺を引き止めようとするとか、非の打ちどころがなさすぎるだろ。
優等生の称号を上げるよ。
ササリスと違って誇っていいよ。
(
世界を停止させて、暗闇の世界でササリスを連れて近場の家の屋根へと上る。
上り終わってから、停止のルーン魔法を解除する。
「き、消えた……?」
認めよう、ラーミア。お前がナンバーワンだ。
(いやぁ、素晴らしい逸材だった)
シロウの冒険に必要不可欠な人材だから引き抜けないのが残念ではない、と言えば嘘になるが、その上でなお逸材と言わざるを得ない。
(ラーミアはあれだな。俺のそばに置いておくよりむしろ、シロウサイドで敵の脅威をさりげなく解説させてこそ光るキャラだわ)
例えばこんな感じ。
◇ ◇ ◇
「止まるんだ、シロウ!」
「え?」
皮膚が灼けるように熱い火山を探索中のことだった。
シロウが全身から吹き出る汗に倦怠感を覚えていると、突然、ラーミアがシロウの前で盾を構えた。
「ぐぅっ」
「ラーミア⁉」
「大丈夫だ、問題無い。致命傷は避けている、見た目ほどひどい傷じゃない。それよりも、問題は」
ラーミアは、攻撃が飛んできた方向へと視線を向けた。
鋭い眼光が火山の一角を射抜く。
「ほう。いまの一撃をしのぐか」
「やはり貴様か、クロウ!」
彼女の言葉に、シロウとナッツが驚いたように、彼女の視線を追いかける。
そこにはシロウそっくりの容姿の、しかし肌が褐色に焼けた銀髪の青年がいる。
「シロウ! ここは私に任せて先に行け!」
ラーミアは、対峙する相手がどれだけの使い手かを把握している。
全員が束になって挑んでもかなわない相手だということも。
「冗談だろ、俺も戦う」
「シロウ」
「決めたんだ。もう逃げないって」
「……そうか。お前の覚悟、受け取った」
シロウと肩を並べたラーミアがランスを構え、呼気を焦がす。
「ラーミア・スケイラビリティ、推して参る!」
◇ ◇ ◇
くぅ、最高だ。
こいつならやってくれる。
俺がやってくれると信じたことを達成してくれる。
そんなスゴ味が彼女にはある!
(味方だとそんなセリフはいてくれないからなぁ)
やっぱり彼女はシロウのそばにいてこそだ。
だからここは心を鬼にして突き放す。
達者でな、ラーミア。
「師匠、あの女が気に入ったの?」
……なんだろう、真横から絶対零度の冷気が。
今日は冷え込むな。
「殺しとこうかな、ライバルになる前に、あたしが師匠の一番であり続けるために」
「病むな病むな」
ただでさえ拝金主義で愛が重くて人材活用に長けてる医術も修めている料理キャラとかいうわけわからんてんこ盛り属性なんだ。
そこにヤンデレまで盛り込もうとするな。
欲張りセットじゃねえんだよ。
「ササリス」
「何……わーい! 金貨だぁ! くれるの? 師匠ありがとう! 大好き!」
「あいつは殺すなよ」
「わかってるって!」
ふう、こいつの扱いにもなれたもんだぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます