追放されたグルメ聖女は、死ぬほど【うまい】料理で殺すッッ!! ~うまみの薄い世界で、【調理スキル】爆盛りの料理を食べさせると、みんなの服がはじけ飛ぶようです☆~
第11話 グルメ聖女、キッチンに立つ。――その1
第11話 グルメ聖女、キッチンに立つ。――その1
「そなた、この恵みがどんなものかもわからずに利用しようとしていたのか!?」
とステラに叱られたけど、仕方ないじゃん。
森に生えてなかったんだから。
とりあえず気を取り直して、それぞれ鑑定すると【マトト】【ミトの芽】【キャベット】と出た。
表示された鑑定結果を見る限り、どれも似たり寄ったりって感じの説明文だけど、
「おいしい、けどやっぱり味が薄いか」
マトトは、にがみ味が強くてほんのりあまい。
肉の実は、ちょっと臭みのあるねっとりとした生肉を食べている感じだ。
キャベットはシャキシャキするから、おそらく日本で言うところのキャベツに近い食材なのだろう。
どれも、ちゃんと味がする時点でこれまで食べた料理前の食材にしてはおいしい部類なのはわかるんだけど、
「うーん。ある程度覚悟はしてたけど、やっぱりなんか物足りないんだよねぇ」
「ふん。だからそんなもの悩まず生で食べればいいじゃろうに」
「だーかーらー、手を加えたほうが絶対おいしいんだって」
まぁ食材の味もわかったことだし、次はこれらの食材を使ってどんな料理を作るかだだけど。
うーん。夜も遅いし重たいものは気分的にNGなんだよねぇ。
焼肉は、森の規則で禁止みたいだし、ただ焼くだけってのも私の美食センスが許さない。
どうせなら凝ったものが食べたい。
となると私の作れるレパートリーにも限界があるわけで、
「そうだ! 最初は野菜たっぷりトマトスープにしよう」
幸い新しい調味料もあるし、トマトスープなら具材そのものの味をしっかり感じられるかもしれない。
そうと決まれば、早速調理開始だ。
まぁといっても調理工程はいたってシンプルだ。
まずトマトに似たマトトに十字の切り込みを入れて、土鍋に投入っと。
ある程度、湯がいたら皮をむいて、マトトをざく切りにしていく。
その間、一口大に切ったミトの芽とキャベットをくつくつ煮込み、塩コショウを投入する。
普通ならこんなことをしても、スープといえるようなものはできないが、そこは調理スキルの出番だ。
聖女のチカラで呪いを解くことで、素材の味を十分に引き出し、どんなスープに仕上がっていく。
「しあげに、昼間作ったコンソメみたいな調味料で味を調えて、味見っと」
うん思った通り、いい出汁がとれてるみたい。
最期に刻んだマトトを土鍋にぶち込んでいく。
「あとはしばらくコトコト煮込んでいけば完成っと」
すると黙って調理工程を見ていたどステラからわずかに眉をしかめて、私の服を引っ張ってきた。
「なぁアリシュナよ。そなた。メグルは使わぬのか」
「メグル? なにそれ」
「女神が生きとし生ける子らに与えたとされる木の実じゃ」
ちょっと待っておれ、と言い残し、とテトテと可愛らしい足音を鳴らして部屋から飛び出していくステラ。
そして、一抱えもある大きさの木の実を抱えて戻ってきたかと思うと、その見覚えのある奇妙な形をした木の実を見て、私は思わず顔をしかめた。
「うげぇ、これかぁ」
これってもしかしなくても、王城で食べたときの、あの激マズ木の実じゃん。
いや。この世界の食べ物が本当はおいしいってわかってるから。
ちゃんと調理すればおいしいんだろうけど、
「えーっとステラは、ほんとにこれ毎日食べてるの?」
「まことじゃ。メグル一つで寿命が延びるとまで言われるほどの恵みでの。それを食べれば病もならないすぐれものじゃ。まぁ? そなたら外界人は見たことがないだろうがな」
自慢気に語ってるけど、つまり完全食みたいなものですね。
ステラからメグルと呼ばれる木の実を受け取り、ためすがめつ木の実を観察する。
だけど鑑定スキルを使うとわかる。めっちゃ呪われてるじゃん、この木の実!?
呪いSS+とか、そりゃ気絶するほどまずいに決まってるよ。
「本来なら外界人に与えるようなものではないのだが、曲がりなりにもそなたは客人の立場じゃ。であれば特別に馳走してやるのもやぶさかではないぞ」
「うーんでも」
この劇物を素直にスープに入れるのはちょっと抵抗があると言いますか。
ぶっちゃっけ、入れても大丈夫なわけ。
調理スキルでも浄化できる呪いなの? これ。
すると、私の躊躇いを見て取ったのか。先ほどまで上機嫌だったステラの顔がだんだんいら立ちのこもったものに変わっていく。
「ええい、特別に馳走してやると言っておるのに何をもたもたしておる。いらぬのならわしが食べるぞ。そなたを監視するため何も食べておらぬのだ」
「いやいやダメだって。こんなの生で食べたら病気になっちゃうって」
だけど私の態度が気に食わなかったのか。
持ち上げたメグルを奪い返そうとステラが手を伸ばし、軽くもみ合いになる。
結果、私の手から滑るように逃げたメグルは、放物線を描いてかまどの方へと転がっていき、
「「あ――」」
なんの因果か、ドボンとメグルごと鍋に落ちるのであった。
追放されたグルメ聖女は、死ぬほど【うまい】料理で殺すッッ!! ~うまみの薄い世界で、【調理スキル】爆盛りの料理を食べさせると、みんなの服がはじけ飛ぶようです☆~ 川乃こはく@【新ジャンル】開拓者 @kawanoue
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