追放されたグルメ聖女は、死ぬほど【うまい】料理で殺すッッ!! ~うまみの薄い世界で、【調理スキル】爆盛りの料理を食べさせると、みんなの服がはじけ飛ぶようです☆~
第4話 グルメ聖女、調理魔法、炸裂させる
第4話 グルメ聖女、調理魔法、炸裂させる
そんなわけで、現在。
私はスキルをフル活用して森の中を爆走していた。
ふっふっふ見よ。この常識離れした健脚を!
自転車でもこんなに早く走ったことない。
びゅんびゅんと景色が線上に変わっていき、障害物をよけていく。
いやー身体強化って単純な分。使い勝手がいいよね。
普通は通れない道も、このスキルなひとっ飛びだ。
まぁ、スキルを使い続けるとおなかが減るけど、そこは大丈夫!!
ちゅんとエネルギー補給してるから!!
そんなわけでビュンビュンとすばしっこく逃げ回るホーンラビットを追い回し、私はアイテムボックスの中からとっておきの秘密道具を構えていた。
「まてー、私のおひるごはんんんんんんんん!!」
美食家たるもの、己の食欲には正直であるべし。
【検索】ナビのルートから外れちゃったけど、食欲には勝てません。
今の私はウサギ鍋の気分。
なので、この獲物は絶対に逃がせない!!
そんなわけで――
「くらえ。私の調理魔法!!」
「ぷぎゃー」
あらかじめ調理していた、肉団子を木の皿ごとアイテムボックスから取り出し、魔物の口めがけて投げつける。
なんともったいないことをするのか、と少し前の私なら叫んでいたけど大丈夫。
まっすぐ飛んでいく私の肉団子。
そのおいしそうな匂いにあらがえなかったのか。今の今まで逃げていたホーンラビットが「うきゅっ!?」と回れ右して、私の料理に食らいつくではないか。
パクっと大口を開けて一口で料理を食べたホーンラビット。
そしてその小さな体から幸せそうな声を上がったかと思えば、――うますぎて昇天した。
「ふぅ。我ながら自分の料理が恐ろしいよ」
ぴくぴくと幸せそうな安らかな顔で昇天するホーンラビットを見下ろし、額の汗をそっとぬぐう。
普通なら剣や魔法で退治しないと食べられない魔物もこの通り、私の料理にかかればちょちょいのチョイよ。
これぞ私が生み出した最強の魔法。
【調理魔法】だ!!
どうやら【調理スキル】で作った私の料理には過剰な女神の祝福がこもっており、その過剰な祝福が弱い魔物には劇毒のようだ。
おいしすぎて死んじゃうって気持ちはわからなくもないけど、シロネの話では、私の料理は魔王の呪いを糧にして生きる生き物全般の天敵らしく。
私の料理を口にすると軒並み幸せそうな声を上げて昇天してしまうのだそうだ。
「まぁこの法則も、私のご飯を横取りしてきたイビルスネークが証明してくれたからわかったことなんだけどね」
いやーあの時はほんとびっくりしたよ。
なにせシロネが湖で遊んでいる隙にご飯をかさらっていったんだから。
この森では基本的にシロネたちが強いせいか、あの子らに逆らう魔物はいないと思っていたんだけど、どうやら派閥みたいなものがあるらしい。
まさかシロネのいる縄張りで、堂々と私たちのご飯をかっさらおうなんて不届き者がいるとは思わなかった。
まぁそいつも私のサンドイッチを食べて、即昇天して、その日の晩御飯になったんだけど。
シロネの時は平気だったところを見ると、何か法則があるようなのだが、
「今はそんなことより目の前のうさぎ鍋っと」
アイテムボックスから包丁を取り出し、スキル【解体】を使ってサクッとお肉を素材化する。
鑑定すれば【ホーンラビットの肉】と書かれてあり、等級もAと文句なし。
うん。きちんと聖別されてるみたいだ。
あとは最近【錬成】で作れるようになった土鍋に火をかけて、塩と胡椒で味付けして、ふたを閉めて煮込むだけっと!
「ふふふ、このひと時がたまんないよねぇ―」
ここしばらく、シロネたちが大物ばっかりしか狩ってこなかったから、こういう汁物系は久しぶりだ。
くつくつ湯気の立つ小鍋を見下ろし、ワクワクした気持ちを抑えながらも、もちろんステータスで地図を確認するも忘れない。
あれから三時間くらいぶっとうしで走りまくったけど、どのくらい進んだろう。
検索ナビはいわゆるシロネたちが通ったルートしか表示してくれないので、ルートを外れた場合、いつのまにか遠回りしている可能性もある。
なのでこまめな確認が必要なのだが、
「うん。いまのところ順調みたいだね。食料の備蓄はどうかな?」
スキルを使い続けると、おなかが減る。
当然、おなかが減ると食糧がなくなるので、こうやってこまめに食材を調達する必要があるのだ。
今までは走りながらご飯を食べてたけど、やっぱりこうやって腰を落ち着けて食事をするのが一番だ。
「それにしても私の料理に、呪いを打ち消す力があったなんてねぇ」
くつくつと煮え始めた鍋を見下ろし独り言ちる。
偶然発見した効果だけど、私の作ったご飯を食べさせると、呪いごと魔物が浄化されるって原理なのかな?
ほんと不思議な効果があるもんだよ。
そんなバカみたいな力、JKの私が持ってるはずなんだけど、そういえば王様が「聖女には魔王の呪いを浄化する力が秘められてるのだ」とかなんとか言ってたような気がするんだよね。
「あんまり話が長すぎて聞き流してたけど、この果物がおいしくない理由が呪いだと考えると、いろいろ納得できることが多いんだよね」
私が調理スキルを使ったらご飯がみんなおいしくなったのも。
この世界の食べ物が軒並みまずいのも、魔王の呪いってやつで呪われてたからだとすれば納得できる。
「あ。だから料理はすごく豪華なのに、あんなにまずい食べ物しかなかったんだ」
料理は明らかにおいしそうなのに、おいしく感じなかったのは呪いのせいか。
うわ、なんかすごい納得だよ。なんだか食べ物に呪いをかけた魔王ってやつに腹が立ってきた。
うん? でも待って。
この世界って魔王の呪いによって、大地が汚染されて、苦しめられてるんだよね?
だったらさ。
「もしもこの私の料理で世界の食材を全部きれいに浄化することができたとしたら――苦労しなくてもおいしいご飯が食べられるようになるじゃない?」
ついでに言うならこの世界本来のおいしい異世界料理が食べられるようになる?
料理の手を止めて、立ち上がる。
おおっ! すごい発見だ。
どうやって世界の呪いを解くのかは置いておいて、なんか未来が明るくなってきた気がする。
あのクソ王国も助けることになるのは癪に障るけど、食べ物に罪はない。
それが聖女としてこの異世界に召喚された理由みたいだし、それにおいしいご飯が増えるならオールオッケーだ。
とりあえず私はとにかく呪われた食材を食べまくればそれでいいのかな?
よーし。そうと決まれば、
「これからもジャンジャン料理を作って、ジャンジャン世界を浄化するぞー!」
ご飯をおなか一杯食べれて、おまけに人助けもできるなんて最高すぎる。
そうしてようやく完成したウサギ鍋のを堪能すべく、錬成したてのハシを掲げて、渾身のウサギ鍋を堪能しようとすると、
「お、」
「うん?」
ごっつい兵士みたいな装備に身を包んだ男たちが三人。
ガサガサと草藪から現れ、一人の女の子らしき子供を抱えた物々しい状態で、エンカウントしてしまうのであった。
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