第5話 グルメ聖女、裏切られる
で、現在。
王様から役立たずの追放宣言を受け、どさくさに紛れてふるみやの恨みを晴らし、王城から馬車をかっぱらった私はというと、知らない森の中をびしょ濡れでさまよい歩いていた。
まぁ、どうしてこうなったかといえば、追っ手を振りまくため、馬車を暴走させざる終えなかったからなんだけど。
「ま、ままままさか。逃げた先に崖があるなんて」
ガタガタと震える体を抱えて、暖を取る私。
でも仕方ないじゃん。
生まれてこのかた乗馬なんて優雅なことしたことないんだし。そのまま滝つぼに落ちちゃうなんて思わなかったんだもん。
むしろ滝つぼから落ちて、こうして無事に生きてることだけでも奇跡といってもいい。
あとは何か目印になるようなものがあれば、状況を把握しやすいんだけど、
「ここどこ?」
周りを見渡せば、うん。木しか生えてないね。
葉っぱが空を覆いつくしてるのか、どっちが北なのかさえわからない。
今までは、周りに護衛がいたから安心していろんな場所に行ったけど、一人だとやっぱり怖すぎる!!
異世界で半年間スライムを狩り続けてきたといったって、私は戦闘民族でもなければ、その場のノリと雰囲気で無双できちゃえるオタク君じゃない。
いま魔物なんかに襲われたら、間違いなく魔物のご飯になる決まっている。
だけど今はそんなことより――
「火ぃ、はやく火をつけて服を乾かさなないと」
まだまだ暖かい季節とはいっても、濡れた服を着たまま森の中にいるのは寒すぎる!!
このまま乾くまで待つなんて無理!
夜になる前に服を乾かさないと、絶対に凍死する。
見よう見まねで火を起こそうとしても、うまくいかない。
でも大丈夫。
「ふっふっふー、私には召喚特典で手に入れたスキルがある」
そう。こんなことになるだろうと思って、ポイントを使い過ぎたあたりからどんな事態になっても大丈夫なようにきっちり対策済みよ。
見なさい、この私の充実したステータスをッッ!!
―― ステータス ――
名前:アリシュナ
職業:聖女
種族:人間
スキル: 調理スキルLvMAX、鑑定Lv1、解体Lv5、生活魔法Lv5、高速調合Lv5、調味料生成Lv5、収納魔法Lv3、発酵Lv3、錬成Lv3、氷魔法Lv2、治癒魔法Lv5、付与魔法Lv5、検索Lv2、危機感知Lv3、消化吸収Lv5、味の素Lv5、採集Lv3、幸運Lv5、食育Lv1、身体能力向上Lv2、耐毒Lv3、味覚上昇Lv3、分析Lv3
―――――――――――
あれ? なんか思ったより頼りなくない?
というか見事に調理系というか、食べ物に関するスキルばっかり偏ってる気がする――って、し、しまったあああああ!! ポイント安いからって色々と欲望に突っ走りすぎたあああ!?
よくよく見たら、ほとんど調理系のスキルじゃん。
え、魔物とかに襲われたときどうすんのこれ。
たくさんスキル習得したから追放されても大丈夫と思って、王様の顔面に料理をご馳走したのに。
こんな役に立たないスキルじゃあ魔物と出会ったら一発でジ・エンドじゃん。
あーもう、なんで戦い系のスキルとか取っておかなかったかなぁ、私。
こんな時まで食い気に走ってどうすんのよ!
「い、いやでも大丈夫。まだ致命的な失敗はしてない。なんたって私には何よりも頼れるオタク君の漫画知識があるんだから」
その名も【鑑定】。
これさえあればどんな異世界も乗り越えられるって言ってた!!
「それじゃあさっそく。うなれ。私の【鑑定】スキル!!」
私をあったかい未来へと導いて!
おっ、見える見えるぞー。
【ママナの実】
はい?
え、木って、他に情報は? 私の未来は?
鑑定スキルって、使用者の未来を占いとかそういうんじゃないの?
何度やっても、目の前の木の実の名前しか出てこないじゃん!!
【これ以上の情報はレベルを上げる必要があります】
ほ、ほかには?
手あたり次第、目新しいものを見つけては鑑定しまくる。
でも結局、鑑定スキルで見られるのは対象の名前だけで、私のあったかい未来はやってこなないらしく
「だ、だまされたあああああああぁ!!」
信頼していたオタク君への恨み節が、森の中に醜く響き渡るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます