追放されたグルメ聖女は、死ぬほど【うまい】料理で殺すッッ!! ~うまみの薄い世界で、【調理スキル】爆盛りの料理を食べさせると、みんなの服がはじけ飛ぶようです☆~
第4話 グルメ聖女、運命のスキルと出会う
第4話 グルメ聖女、運命のスキルと出会う
そうしてベットの上でうなることしばらく。
日はとっぷり暮れ、深夜になっていた。
「それでは、明日は聖女召喚のお披露目式がありますので、くれぐれもご自愛くださいね? アリシュナ」
「はいはい。おとなしく部屋で休んでいますよーだ」
過保護なんだか支配欲が強いんだか知らないけど、しつこすぎる男は嫌われるよ。
そうして婚約者らしいイグナスを追い出した私は、悲嘆のため息を吐き出していた。
はー、いよいよお披露目式か。
わたし、この異世界で、ほんとに聖女として生きていかなくちゃならないんだ。
女子高生が聖女とか、クラスの友達が聞いたら笑っちゃうだろうけど
「――ぜんぶ悪い夢ならよかったよ」
どうやら私は至高の料理といわれる木の実を口にして、意識を失ったらしい。
これがうますぎて脳のシナプスが誤作動を起こして、強制的に天国に行きかけたんならよかったんだけど、まさかあまりのまずさに目を回して、気絶するなんて。
「あーもう、最悪なんだけど。なんで食べるの大好きな私がこんなおいしくない世界に召喚されなきゃならないのよーっ!」
ベットの上で暴れるだけ暴れて、もう一度大きくため息を吐く。
自称、グルメ聖女。
どんな料理にも敬意を払うのが信条してるけど、あれは無理だ。
物理的に気絶しちゃうほどまずい食材があること自体、信じがたい。
「でも普通、この世にうまみが全くない食べ物があるなら、めちゃくちゃおいしいたべものがあってもいいじゃん」
そう。まずかったのだ。
毎日の料理で出されるごちそうでも、白米程度のうまみはあったってのに、世界で一番おいしい食べ物が、粘土の味ってどういうこと?
食べただけで不快指数MAXの食べ物なんて初めての経験だ。
苦いし、渋いし、口の中に泥を突っ込んだような不快さ。
思い出すだけで身震いしてくる。
やっぱりあれって呪われてるから?
あれなら、そこらへんの葉っぱでも食べたほうが、まだ複雑な味がするよ。
「あれがこの世界の最高のグルメ? あんなのもののために私は、夢だったふるみやの料理を食べそこなったの?」
そう考えると、私の奥底にしまっていたグルメ魂がむくむくと大きくなっていくのがわかる。
至高の料理。
実際は変な形の木の実だったけど、期待感が大きかっただけに、もう歯止めが利かない!!
「ラーメン食べたい。餃子食べたい。チャーハン、カレー、牛丼、卵焼きにオムライス。食べたい食べたい、たべたーーーーい!!」
この世界に来てからろくなもの食べてないから、余計に欲しくなってくる。
あんなのがごちそうなんじゃ、下町のご飯もたかが知れてるってことじゃん。
ゆくゆくは世界を回って、グルメな食べ物を探す旅に出るのもいいかなーと思ってたのに!!
「……そう考えるとなんかムカムカしてきた。なんで関係ない私がこんな思いしなきゃいけないのよ」
こうなったら――意地でもおいしいもの食べてやる。
ふかふかのベットから起き上がり、ステータス画面を開く。
そうだ。ここは異世界なんだ。
きっとこの悲劇的な状況を打破するためのスキルがあったっておかしくない。
ふっふっふ。100万ポイントあるんだし、ちょっとくらい使ったっていいよね?
召喚特典――スキル習得の画面をタップすれば、見慣れないスキル名がズラーっと目の前に現れた。
うわぁ、すっご。
この世界って料理はおいしくないくせにスキルはこんなにあるんだ。
「そういえばこれまでじっくり見たことなかったけど、他にどんなスキルがあるんだろ」
【火魔法】に【水魔法】ねぇ。
おっ、異世界定番の【スキル:鑑定】発見。
懐かしいな。クラスのオタク君がよく話してたっけ。
取得ポイントはへぇ、100ポイントか。
やっぱり召喚特典だからか、意外と安いんだね。
あ、【スキル:ネットスーパー】なんてのもある。
どれどれ取得ポイントは。げっ!?
100000000ポイントって高すぎるよ!
「スライム換算で一億体か。絶対とらせる気ないでしょ」
そういえば、国王さまが私に習得してほしいのは【神聖魔法】と【浄化魔法】だっけ。
ええっとスキルポイントは、99万ポイント?
ということは――
「一万ポイント余るってこと?」
ってことは、一万ポイント好きにしちゃっていいってことだよね?
ひゃっほーぅ!
ようやく異世界らしい展開になってきたぁーー!!
一つ一つ、スキル画面をスライドしていけば、ある一つの項目で私の視線が釘付けになる
「ちょ、調理スキル!? しかも10ポイント!?」
お、お買い得すぎる。
え、効果は? スキル効果とか見れないの?
試しに【調理スキル】をダブルクリックすると、スキルに対する説明文が現れた。
『調理スキル。
――効果、この世のあらゆるしょくざいをおいしく調理できる』
ほ、欲しい。欲しすぎる。
「スライム10体分だし、ちょっとくらい良いよね」
というわけで、ぽちっとな。
すると【調理スキル、習得しました】の文字が。
おおっ、しっかり獲得できてる。
どうしよう。早速試したいけど、この時間に厨房に行くのはさすがにマズイよね。
「でも試さずにはいられないし、……この林檎っぽい果物に塩かけたらおいしくならないかな」
スイカだって塩を振ったら甘くなるし、何かの手違いでおいしくなったりしない?
そんなわけで、久々に料理する気分で果物に塩をふりふりする。
え? なんですぐ手元に調味料があるのかって?
グルメJKなら、調味料を常備してるのなんて常識じゃん。
まぁこの程度で細工で劇的に味が変わるなんてことあるわけないけど――
「え、めっちゃうまいんだけど」
もう一口かぶりつけば、うん。めっちゃうまいっっ!!
久しぶりに感じる甘味に舌が喜びまくってる。
うんそう。そうだよ。グルメってのはこういうことを言うんだよ。
いやー調理スキルさまさまだね。
そうしてステータス画面を確認すれば、
―― ステータス ――
名前:アリシュナ
職業:聖女
種族:人間
スキル:調理スキルLv1
――召喚特典。スキルポイント999990P
※召喚特典が発動しました。この特典は一時間後に完了とみなします。
時間内に好きなスキルをお選びください』
――――――――――――
ううん? 調理スキルLv1?
もしかしてゲームでよくある熟練度みたいなやつ?
あとこの下にある注釈なに?
ええっと、召喚特典が発動。一時間後に完了って――
「もしかして召喚特典のタイムリミットっ!?」
や、やば。早く選ばなきゃ。
一万ポイント。とにかく一万ポイント残せばOKいいんだから――
「は、早く選ばなきゃ」
とにかくめぼしいスキル。はクリックしなきゃ。
レベル一つ上げただけでこれなら、調理系のスキルは全部LvMAXまで振ってもいいよね。
というかあの味を知ったらもう我慢できないし、ついでに【調合短縮】に【収納魔法】も上げちゃえ。
あ、料理するならに【生活魔法】ってのもあると便利かも。
どーせ取得ポイントは安いんだ。
このくらいダイジョブダイジョブ。
そして目につくめぼしいスキルをヤマゾン感覚でポチりまくっていけば。
「…………やっちゃった」
ふとステータス画面に視線を落とせば、残りスキルポイント10000Pの文字が。
うん。焦りすぎて、残すべきポイントと使っていいポイント勘違いしちゃってたみたい。
だけどいくら見つめても残ったポイント残数は変わらず。
大事な大事な、聖女のお披露目式。
開き直ってスキルポイントを使い切った私は、肝心の【神聖魔法】を習得できず、国の期待を裏切った大罪人として追放されるこことなるのであった。
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