追放されたグルメ聖女は、死ぬほど【うまい】料理で殺すッッ!! ~うまみの薄い世界で、【調理スキル】爆盛りの料理を食べさせると、みんなの服がはじけ飛ぶようです☆~
第3話 グルメ聖女 異世界奮闘中 その1
第3話 グルメ聖女 異世界奮闘中 その1
そんなわけで未知なる料理に少しだけ期待を膨らませていた私の異世界生活は、最悪な形で続くことを余儀なくされた。
そしてそれから約半年後――。
「いまですアリシュナ殿! トドメをお願いします!」
「はーい」
けだるげな声を出して、ぶよぶよした青白い物体を見据えれば、わたしは聖なる杖を構えて、スライムの核めがけてフルスイングした。
「えいや」
「ぷぎゃっ」
「よーし。その調子ですアリシュナ様。どんどいいきましょう!」
周りから歓声が上がり、私はそっと溜息を吐く。
これが、私がこの異世界に召喚されてから、毎日行われてきた『聖務』の一環だ。
そう――いわゆる経験値稼ぎというやつである。
私はあまりゲームとかやらないから知らないけど、異世界からの召喚者で私は現在、『召喚ボーナスタイム』という状態にあるらしい。
どうやらこれは、魔物を倒すことによって経験値と同時に【スキルポイント】というものがもらえるようで。
この【スキルポイント】というのが、私に与えられている特典らしい。
異世界からの召喚者な私には、一度だけこの貯めたスキルポイントを使って、望むスキルを得ることができるって話だけど、
「いくら、なんでも、一日1000体討伐は、ハードすぎるってのよっっ!!」
私、これでもか弱き女子高生よ?
いくらザコって言ったって、何回、聖なる杖をバット代わりにして、スライムをぐちゃぐちゃにしなくちゃいけないのよ!!
だけど、スキルポイントを貯めるにはこのやり方が一番簡単らしく。
異世界から召喚されて約半年の間。
私は野球少年も真っ青なハードスケジュールで、王家の兵士たち数十人に大事に見守られながら、古くから継承されているという聖なる杖をフルスイングしていた。
ちなみに、この王都からずっと南に行ったところに大きな森があるのでそこで経験値稼ぎしたほうが効率的なんじゃない? と尋ねたことがあるんだけど、
『ああ、あそこはハロスの樹海といって、呪われた蛮族が住まう領地なんです。危険な魔物もウジャウジャいますし、王都では誰も足を踏み入れないんです』
とのことらしい。
まぁ私も怖いのも痛いのも嫌なので、スキルポイントがたまるならなんだっていい。
そんなこんなでザコの代名詞であるスライムをちまちま狩っては、スキルポイントを貯め、うまくもないご馳走をおなかに詰め込み、泥のように眠る毎日。
正直、杖は重いし、疲れるし、ストレスでニキビができるで、さんざんだ。
いったい何度、世界を滅ぼしてやろうかと思ったかわかったもんじゃない。
だけど永遠に続くかと思える長蛇の列が短くなるように、ついに終わりを迎えた。
「999っ! 1000体っと。あ゛あ゛あ゛~ようやくノルマ達成っ!!」
女の子が上げちゃいけない声を上げ、額に浮かんだ汗を白い巫女服で袖でぬぐえば、私は倒れこむようにして大きく息をついた。
ステータス画面に映るのは、スキルポイント1000000の数。
苦節の半年。
ようやく、ようやくこの退屈な『聖務』から解放される時が来たのだ。
(まったくスキルポイント100から、1000000ポイントまで貯めろって言われたときはどうしようかと思ったけど、人間、目標があればやれるもんね)
とびきりおいしいご飯を用意すると言われれば、頑張らないわけにはいかないとはいえ、高校受験でもここまで根気よくやらなかったよ。
毎日、十キロある聖なる杖をフルスイングしてきたかいがあった。
そうして意気揚々と王城に戻れば。
野菜のごとく浴場で丸洗いされた私は、王様の執務室に案内させられていた。
「おおっ、よく来た聖女アリシュナよ。息子のイグナスから聖務完了との報告があったがそれは誠であろうか」
「うん。スキルポイント100万、きっちり貯めてやったわよ。これで私の仕事は終わりなんでしょ」
バンとステータス画面を表示してやれば、そばに控えていた偉い貴族の人たちから喜びの声が上がった。
「おおっ、本当に100万ポイント貯めることが叶うとは」
「やりましたな国王様。これでグランニールは救われるのだな」
「大儀であったぞ。聖女アリシュナ」
よくわからないけど、この世界の人たちにとって、よっぽど大事なスキルみたい。
まぁ私は約束の料理さえ食べさせてくれるのなら、それでいいんだけど。
「本当によくやったアリシュナ。聖王国を代表してお礼を述べさせてもらおう」
「アリシュナ、僕からも祝福させてほしい。ようやく10万ポイントたまったんだね。君の婚約者として誇らしいよ」
「ええ。それで、このスキルポイントがたまったら、私はなにしなきゃいけないんだっけ?」
「大司教様のお話では、聖女召喚のお披露目会のあと、各領地を回って土地を浄化していただくようです。それから聖女としての執務や要人とのお茶会が――」
えーっ、ちょっとなにそれ。土地を浄化したら自由にしてくれるんじゃないの? そんなの聞いてないんだけど?
「申し訳ありません。こればかりは如何ともしがたく」
「そうだよアリシュナ。父上だってアリシュナのわがままを叶えるため、あれこれ必死になっているんだから」
「すまぬがそういうわけだ。聖女授与式が終わるまでは今しばらく我慢しておくれ」
ぶー、ようやく自由になれると思ったのにぃ。
すると困ったように笑う王様が、
「それより、今日は聖女召喚のお披露目会の前お祝いだ。おぬしが望んでいた至高の料理をごちそうしよう」
「ほんとっ!?」
キタキタキターッ。待ってました。
至高の料理。
お願いだから、おいしいものであってくれ。
そして夕食。
豪華な食卓に案内された私は、目の前に用意された料理を前に、形のいい眉を顰めずにはいられなかった。
「ええっと、コレがその至高の料理?」
「はい。美食神ワグル・メドールがこの世に伝えたとされる伝説の料理です。ハロスの森になっている木の実なんですが、いやー、採取するのに苦労しました」
え、でもこれ、たぶん木の実、だよね?
王族御用達の高級料理が、木の実いっこ?
いやいや常識にとらわれるな私。
ここは異世界。
よく漫画であるだろう。
実はパッとしない食材が、その世界ではめちゃくちゃおいしい食材だった的な展開が。
そうだ。これもそのパターンに違いない!
きっとこの木の実には、私が経験したこともないような未知なる出会いが詰まっているはずっっ!!
そして私は豪華な皿の上に載った名も知らない名状しがたき木の実をつかむと、一思いにかぶりつき――
「ううっ、おなか痛い」
気が付けばベットの上でおなかを抑えながら、うんうん苦しむ羽目になるのであった。
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