第45話 どうなった
「ここは……」
ダンジョンの最下層にいたはずの俺は目を覚ますと、ベッドの上で横になっていた。というか、ここホテルだな。
誰かがここまで運んできてくれたのだろう。
「ユウくん、起きたんだね。もう、体は大丈夫?」
「ああ、もう大丈夫そうだ。心配かけたな」
「よかった~。本当に心配したんだからね!」
俺が目を覚ましたことに気が付いたサリナは、ホッとしたような表情になっていた。俺が眠りについている間、心配してくれていたんだろうな。
俺はどれくらい眠っていたんだろう。
「俺ってどのくらい眠ってた?」
「うーん、ちょうど丸一日くらいじゃないかな」
「数時間とかじゃないんだな。感覚的にはそこまで経っていないと思ったんだけどなぁ」
「色々なことがあって大変だったから仕方ないよ」
「まあ、そうだよな」
予想以上に長い時間俺は眠ってしまっていたようだ。
「俺をここまで運んできたのってジョン?」
「うん、そうだよ。さすがに私だけじゃ運べないと思ったからお願いしたの」
「そっか。二人には本当に感謝してる」
そういえば、リックはどうなった?
俺は眠っている間に何が起きたのか気になったので、サリナに聞くことにした。
「そういえば、俺が眠りについた後、どうなったんだ?」
「やっぱりそのことが気になるよね」
「うん」
「ユウくんが眠りについた後にあの子は私たちに警察のとこまで連れて行くように言ってきたの」
「なるほどな」
「自分の罪を償いたいと思っているんじゃないかな」
リックは自分から警察のとこまで連れて行ってほしいと頼んだんだな。
自分がやってしまったことを理解し、その罪を償っていくつもりなんだな。
やっぱり、リックは変わることができると思う。
だから、俺はリックが自分で変わることができたと思えるまでずっと待ち続けよう。
「俺たちはあの子が自分で変われたと思えるようになるまで待ち続けよう」
「そうだね。私もあの子なら自分の罪を償って変わることができると思うよ」
ホテルのテレビをつけると、顔は出されていないが爆破事件の犯人が捕まったというニュースが流れていた。
サリナによると、今日はどのチャンネルに切り替えてもこのニュースが流れているらしい。
最初のうちは、リックに対して酷い言葉を浴びせてくる人も少なくないだろう。
こればかりは、受け入れなければならない。自分がそれほどまでに酷いことをしてしまったのだから。
だが、その言葉に打ちのめされるだけではダメだ。
今、酷い言葉を浴びせている人たちに、自分が変わっていく姿を見せていかなければならない。
変わっていく姿を見れば、すべての人とはいかなくても多くの人がリックのことをただの犯罪者ではなく、一人の少年として見てくれるようになるかもしれない。だから、これから先、どんなに辛いことがあってもあきらめずに生きていってほしいと俺は思う。
サリナも同じことを思っているのか、テレビで流れている爆破事件の犯人が捕まったというニュースを見て「がんばれ」と言いたそうな表情をしていた。
「これからあの子にとっては大変な生活になるかもしれないな」
「そうだね。でも、きっと大丈夫だよね?」
「ああ、最初は辛いことも多くなるだろうけど、あの子ならきっと乗り越えられるはずだよ」
「そうだよね。私たちはあの子が私たちに会いに来るのを待とうね」
俺たちはリックが会いに来てくれると信じる。
俺はテレビの電源を切って、サリナの顔を見た。
サリナはとても大変だっただろう。俺たちはニューヨークに旅行に来たのに事件に巻き込まれてしまったり、ダンジョンの最下層まで行って戦ったりしたからな。
俺は感謝と共に申し訳なさも感じていたので、残りの滞在期間は絶対に楽しんでもらおうと思った。
できるだけサリナが行きたい場所に行って、食べたいものを食べさせてあげたいな。
「サリナ、大変だったと思うけど本当にありがとうな」
「え、急にどうしたの?」
「俺たちは旅行でニューヨークに来たのに事件に巻き込まれちゃったり、ダンジョンで戦ったり大変だったから、本当に有難いなぁと思ってさ」
「たしかに大変だったけど、ユウくんと一緒だったから全然平気だったよ」
「そ、そっか。残りの滞在期間は絶対に楽しもうな」
「うんっ!」
サリナに対して感謝とともに申し訳なさを感じていたが、サリナは大変だったけど俺と一緒だったから平気だったと言ってくれた。
俺も一人で来ていたらここまで頑張れていたか分からないな。俺もサリナと一緒に来ることができて良かった。
この旅行が終わって日本に戻ってもサリナと一緒の生活が続くんだなと思うと、俺は本当に幸せ者だと感じた。
そんなことを考えていると、俺はサリナに対して想っている気持ちを自然に口にしていた。
「サリナ、好きだ」
「んんん!?!?!」
サリナは急に言われたことで慌てふためいていたが、俺も自然と出た言葉だったので自分が言ったことに気づくと、恥ずかしくなって顔が赤くなってしまう。
「思ってた言葉が自然と口から出てた」
「そ、そっか。ありがとう。もちろんわかってるつもりだけど、ちゃんと言ってもらえると嬉しいね」
「少し恥ずかしいけどね」
「ねぇ、ユウくん?」
「うん?」
「私もユウくんのことが世界で一番好きだよ」
サリナも俺に「好き」を口にして伝えてくれた。
俺たちは頬を赤くして見つめ合いながら笑顔になった。
「それじゃあ、何か食べに行こうか」
「うんっ!」
お互いに気持ちを伝え合った俺たちは手を繋ぎながら部屋を出たのだった。
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