第40話 最下層
「ジョン、少しの間任せてもいいか?」
「ああ、任せろ!」
俺とサリナが魔法の用意をしている間、ジョンがアイアンゴーレムの相手をしてくれるようだ。
三人いるのだから、互いに協力し合って戦っていかないとな。
アイアンゴーレムに手こずっていたら最下層で待つ犯人に勝てるはずがないんだ。
次の一撃で必ず倒す。
目を閉じて、右手に構えている短剣に魔力を流し込んでいく。
「サリナ、炎系の魔法で行くけどいい?」
「わかった。私もそうするよ」
俺とサリナの短剣が段々と赤色へと変化していき、次の瞬間には炎を纏っていた。
魔法の用意ができた俺たちはアイアンゴーレムの前まで走る。
「ジョンありがとう!」
ジョンに感謝を伝えてから、短剣を振り下ろすと同時に魔法を放つ。
「「
俺とサリナは同時に斬撃をアイアンゴーレムの中心部分に当てた。
この一撃で倒すつもりだったのだが、アイアンゴーレムはまだ倒れることなく立っている。
「ダメか……」
「いや、よく見て!」
ダメかと思ったがサリナが何かに気づいたようでアイアンゴーレムの中心部分を指差していた。その部分に視線を向けると、アイアンゴーレムはピキッと音を立てながらひびが入っていた。
「二人ともナイスだ!」
ジョンはそう言うと、飛び出し、腕を振り上げる。
そのままジョンはひびの入った部分に強力なパンチを放った。
「うおりゃあああ!!!」
すると、アイアンゴーレムは崩れていった。
「凄いパンチだったな。さすがだよ!」
「いやいや、二人が先にひびを入れてくれていたからだよ!」
俺たちは互いを褒め合いながら、再びダンジョン内を進んでいく。
*****
アイアンゴーレムを倒した後は魔物は全く出てこなかった。
あのアイアンゴーレムが犯人が俺たちに仕向けた最後の敵だったみたいだ。
「ここじゃないか?」
進んでいくと、俺たちはついに目的の場所である最下層に辿り着いたのだった。
葉が光る木々にその光を反射する一面全てクリスタルでできた天井。
それが、俺たちが最下層に辿り着いて最初に目にした光景だった。
「このダンジョンの最下層はこうなっているのか」
「俺も初めて見たよ」
「ジョンは来たことがあるんじゃないのか?」
「いや、このダンジョン自体は来たことあるけど最下層まできたのは初めてなんだ」
「そうなのか」
このダンジョンは俺とサリナが日本で普段行っているダンジョンとは植物や構造が少し違うように感じた。なんというか、美しいダンジョンだ。
そんなことより、あの爆破事件の犯人は一体どこにいるんだ?
辺りを見回すが全然見つからない。
そう思っていた時だった。
最下層に笑い声が響き始める。
「ふっふははっははははっはははははっははは!!!」
俺たちは一斉に笑い声の聞こえた方を向く。
すると、葉が光りを放っている大きな木の上にそいつは座りながらこちらを見て腹を抱えながら笑っていた。
俺は武器を短剣から大剣に持ち替え、サリナも短剣からレイピアに持ち替えた。
ここからは魔物と戦うのとは訳が違う。
「まさか、本当にここまでくるとはなぁ!」
犯人の男は英語で話していたが、サリナはなんとなく空気感で何を言っているのか察したみたいだった。
それにしても、爆破事件が起きた時は周りが暗くてよく分からなかったが、今は光を放つ葉を持つ木々やそれを反射するクリスタルの天井のお陰で明るいので犯人の顔が良く見えるのだが、この犯人、俺たちより少し年下じゃない?
見た感じだと十五歳くらいだろうか。
その年で何故、爆破事件なんか起こしたのだろう?
「お前があの爆破事件の犯人だな?」
「ああ、そうだよ」
「もし、俺たちがここに来なければまた爆破事件を起こすつもりだったのか?」
「そんなの当り前じゃん。それに、あんたたちが来なかったらじゃないよ。あんた体が俺を倒せなければ、だよ」
そうだよな。
俺たちがここに来ただけで、爆破事件をやめるわけがないか。こいつを倒さなければこいつは爆破事件をやめない。
俺は犯人を睨みつけながら降りてくるように言う。
「いつまで木の上で休んでいるつもりだ。さっさと降りてこい」
「いやだなぁ、そんな怖い顔しちゃってさ。今降りようと思ってたところなのに」
どんなに睨みつけながら言っても、こいつはずっとへらへらしている。
俺たちのことを
全く焦るそぶりを見せないまま、こいつはゆったりと木から降りてきた。
焦らないどころか、先ほどよりもへらへらとにやけているような気さえする。
俺は大剣を向けながら、こいつに問う。
「お前は一体何者だ?」
「俺は、リック・ミラー。十五歳。ただの爆破事件を起こした犯罪者さ」
やはり俺の予想は正しかった。
こいつは、俺たちより年下の十五歳の少年だ。
少年とはいっても犯罪者だということに変わりはない。
俺は一切手加減をしない。
それに、こいつが爆破事件を起こした時から感じていたことだが、こいつは自分の力にかなりの自信を持っているのだろう。
その証拠に、こいつはあっさりと自分の名前を言った。
俺が何者か聞いたからというのもあるだろうが、それにしたって普通ならこんなにあっさりというはずがない。
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