第39話 三人の連携
「そこに行ったぞユウ! サリナ!」
「「任せて!!」」
ダンジョンの中を進んでいくうちに魔物が現れるようになってきたが、俺たちとジョンは戦闘中に段々と連携力を高めていっていた。
ジョンは俺たちの動きをよく見ていて、とても戦いやすい。
「二人とも強いな」
「いや、ジョンのお陰でとても戦いやすかったよ」
「そうか? それなら良かったよ。よし、どんどん先に進もう」
「ああ!」
今のところは順調に進んでいくことができているが、ここはダンジョンだ。ずっと何の問題もなく進めるはずがない。
魔物を倒しながら進んでいくと、行き止まりだった。
ここまで一本道だったのだから、道を間違えたということはないはずだが、どういうことだろう。
ジョンの方を見ると、ジョンも不思議に感じているようで眉間にしわを寄せていた。
「俺とサリナはこのダンジョンに来るのは初めてでよく分からないんだけど、一本道なのに行き止まりなんてことがあるのか?」
「いや、俺は何度かこのダンジョンに来ているが、以前来たときは行き止まりなんてなかったはずなんだけどなぁ……」
このダンジョンに来たことのあるジョンもこの行き止まりを目にしたのは初めてのようだった。そうなると、この行き止まりの壁に何かカラクリがあるのだろうか。
悩んでいると、サリナが壁に何かを発見したようで、壁の上部を指差す。
「あれ見て!」
そこには、手形のようなものが描かれていた。
そこの上に手を乗せればこの壁はなくなるのだろうか?
でも、あの高さは俺やサリナでは届かない。
チラッとジョンの方に視線を向けると、ジョンは俺の考えに気づいたようでこくり、と頷いてから、壁に描かれた手形の上に自分の手を乗せた。
「これでいいんだよな?」
「多分……」
ジョンが手を乗せてから約十秒が経っても壁には何の変化も起きない。
他の方法が必要なのかと思い、考えながら壁を眺めていると暗くてよく見えていなかったが手形の少し下の方に英語で何か書かれているのを見つけた。
俺はそのことをジョンに伝える。
「手形の下の方に何か書かれてるぞ」
「本当だ! だけど、暗くて良く見えないな。スマホのライトで照らしてみるよ」
「ああ、頼む」
ジョンがポケットからスマホを取り出し、手形の下の方に明かりを照らす。
すると、そこには『MAGIC』と書かれていた。
「MAGIC……? あ、そういうことか!」
「この手形に手を乗せたまま、魔力を流せばいいってことか?」
「多分そうだ。やってみるよ」
ジョンは再び手形の上に自分の手を乗せる。
そして、そのままその手形に魔力を流し始める。
その姿を俺とサリナは緊張しながら眺める。
「うおっ!?」
ジョンが魔力を流すと、壁はガラガラッと崩れていった。
恐らく、この壁には一定以上の魔力をあの手形から与えると崩れるように作られていたのだろう。
この壁を作り出したのは恐らく最下層で待つ爆破事件の犯人だろうな。
俺たちを試しているつもりなのだろう。
とりあえず、壁が崩れたことで先に進める。
「二人ともまだこういう仕掛けがあるかもしれないから気を付けてね」
「「ああ」」
サリナは俺とジョンにまだ油断せずに気を付けるように言った。
そういうことを口に出して言ってくれるのはとても有難い。
自分では分かっているつもりでも、誰かが口に出して言ってくれないと無意識に注意を疎かにしてしまうことがあるからな。
細心の注意を払いながら先へ進んでいくと、暗闇の奥からドスン、ドスン、と地面を揺らしながら迫ってくる何かの足音のようなものが聞こえてくる。
俺たちはその場で止まり、戦闘に備える。
『ググガガガガガガガ……グガガグググ……』
俺たちの目の前に現れたのは、ゴーレムという魔物だった。
たしか、ゴーレムというのは作った主人の命令だけを忠実に守る土人形の魔物だったはずだ。
つまり、こいつもあの犯人が俺たちに仕向けてきたものということになる。
「俺が先に攻撃してみる」
「任せたぞユウ!」
俺は走り出し、ゴーレムの足を短剣で思い切り斬る。
しかし、カキンッと金属音と共に俺の短剣の攻撃は弾かれてしまった。
「どういうことだ?」
俺は困惑していた。
ゴーレムは土人形の魔物のはずだ。
それなのに、俺が短剣で攻撃をはじいた時に金属音が響いた。
土でできているはずなのに……?
「そのゴーレム、何かおかしい」
「ああ、ゴーレムに斬撃を与えて金属音が鳴り響くなんてことはあるはずがない。あるとすれば、アイアンゴーレムだけだ」
「つまり、こいつは……」
「そうだ、アイアンゴーレムだ」
ジョンも金属音が鳴り響いたことに違和感を感じていたようだが、それと同時にこのゴーレムの正体にも気づいていたらしい。
金属音が鳴っただけで、アイアンゴーレムだと分かったことに俺は感心した。
これで戦い方も決めやすくなった。
それにしても、アイアンゴーレムか。
鉄でできたゴーレム。普通のゴーレムよりも耐久性が高いみたいだ。
最下層に辿り着くまでは出来るだけ魔法を使わないで起きたかったが、使うしかないかもしれないな。
「サリナ、この相手には魔法を使わないといけなさそうだ」
「そうだね。それなら出来るだけ少ない手数で倒さないといけないね」
「ああ、そういうことだ。手伝ってくれるか?」
「もちろん!」
俺とサリナはアイアンゴーレムに向けて魔法を使う用意を始めた。
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