第38話 出発

 俺たちはホテルに着くと、ホテルは無傷だったようですぐに部屋まで戻ることができた。


「ホテルは無事みたいだな」

「そうみたいだね。でも、周りのビルとかは爆破の影響を受けているところが多いみたい」

「ああ、このホテルが被害を受けていないのは奇跡かもしれないな」


 部屋に戻ると、荷物も無事でこのホテル自体は何の被害も受けていないようだった。

 部屋に着いたとはいえ、まったりと休むだけという訳にもいかない。


 先ほどの店でも少し話し合ったりはしたが、武器も手に入れたことだし、作戦をもっと練らないとな。


「ユウくんは明日、どういう作戦で行きたいとかあったりする?」

「そうだな、やっぱり高火力で一気に押したいなとは思ってるよ」

「そうだよね。それに、私たちは二本の武器も持ってるから色々作戦を試せると思うんだよね」


 そうだ。

 俺たちの武器は一本だけではなく、二本ある。

 超近距離戦闘になったとしても、短剣があるからいくらでも対処法はあるはずだ。武器屋の男性には感謝しないとな。


 高火力で押すだけでは通用しなかった場合は、そのダンジョン内の地形なども利用していきたいな。

 例えば、大きな大樹があれば、それを切り倒して敵に攻撃を与えたり、砂埃を上げて目くらましをしたりなど、方法はいくらでも思いつく。


 俺はこの考えもサリナに伝える。


「もし、火力だけで押せなかった場合は地形も利用しながら戦うといいかもしれない」

「地形……?」

「ああ、大樹があったりしたらそれを切り倒して敵に攻撃したり、砂埃を上げて目くらましに使ったりとかな」

「なるほど! ダンジョン内の地形も利用しながら戦うんだね」

「そういうことだ。まあ、火力だけで押せなかった場合の話だけどな」


 その後もサリナと作戦を綿密に練って明日の戦いに備えた。


*****


 翌日の早朝、俺とサリナは武器や回復薬を持ってダンジョンへと向かった。


「サリナ、心の準備はできてる?」

「うん、もちろん。少し緊張してるけどみんなの笑顔を取り戻すために頑張るよ! それに、ユウくんと一緒なら何も怖くないよ!」

「ああ、だけど今回は俺たちだけじゃないみたいだぞ」

「え……?」


 俺たちがダンジョンの前に到着すると、そこには見覚えのある高身長で体格の良い男性が真剣な表情でダンジョンの入り口を眺めていた。

 その男性に近づいていくと、その男性も俺たちに気づいたようでこちらの方へと向かってきた。


「君は昨日の……」

「あ、はい。覚えてくれていたんですね」

「ああ、君たちも俺のように戦う目をしていたからね」

「ここにいるということはあなたも行くんですね」

「ああ、もちろんさ。皆を恐怖から救わなくてはならないからね」


 この男性は昨日にも感じた通り正義感に溢れている男性のようだ。

 だが、話していて何故か違和感を感じた。俺は話しながらその違和感の正体を探っていると隣にいたサリナが驚いた顔をしていた。


 すると、サリナが俺の感じていた違和感の答えを言い放った。


「日本語!!!」

「えっ……?」


 あ、そうか!

 違和感の正体は、男性が日本語で話しているということだ!

 昨日出会ったときは、英語を使っていたはずだが日本語も話せたのか?!


 俺はその男性に尋ねる。


「日本語が話せたんですね」

「ああ、実は母親が日本人で幼い頃は日本で生活していたんだ」

「そうだったんですね。それじゃあ、早速ですが行きましょうか。お互い協力し合っていけると有難いです」

「ああ! もちろんさ! 協力してあの犯人に勝とう!」


 俺たちは互いに協力することを約束して、ダンジョンに足を踏み入れた。


 ここからは、いつものように慎重に足を進めていく。

 いつ魔物が出てきてもいいように武器を構えながら進む。今は歩いている場所はそこまで広い空間ではないので俺とサリナは大剣ではなく、短剣を構えている。


「そう言えば、お互いに名前を伝えてなかったですね」

「ああ、そうだったな。俺は、ジョン・ウィーバーだ。君たちは?」


 俺たちはお互いの名前をまだ知らなかったので自己紹介をすることになり、その男性が先に自己紹介をしたので、次に俺たちも名前を伝える。


「俺は夜見ユウだ」

「私は如月サリナです」


 俺たちはお互いに自己紹介を済ませ、再び足を進める。

 互いに名前を知れたことで戦闘中に連携が取りやすくなったはずだ。名前を知らないと小さなミスが起きやすくなる場合がある。


 ダンジョンの中が薄暗くてすぐには気づかなかったのだが、よく見るとジョンが構えている武器は剣でも銃でもなかった。


「なあ、ジョン。その武器は何なんだ?」

「ん? ああ、これか。これはなメリケンサックっていう拳による打撃を強化する目的で使用される武器なんだよ。握り込んで使うことで手拳を保護してくれて、パンチの威力を増大させるんだよ」

「なるほど。そういう武器もあるんだな。かっこいいな」

「そうだろ? 俺も初めて武器屋でこれを見つけた時に一目惚れして値段も気にせず購入したよ」


 メリケンサックか。

 俺はこの武器についてあまり詳しくなかったが、ジョンが丁寧に教えてくれたことで俺もその武器の魅力を知ることができた。


 まだ互いの名前を知って間もないが、俺たちは上手くやっていけるような気がした。


 そんなことを考えながら爆破事件の犯人のもとへと向かって行く。


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