第37話 アメリカの武器屋
武器屋に入ると店員と思われる男性がもの凄い勢いで俺たちの方へと向かってくる。
その表情は焦っているような、希望を求めているような表情だった。
『あんたら、爆破事件の犯人を倒しに行くのかい?!』
その店員はそう聞いてきた。
サリナは英語があまり分からないので、俺がその店員の質問に答えることにした。
「そうだ。俺たちは明日、あの犯人を倒しに行くつもりだ」
俺の返答を聞いた店員は覚悟を決めたような表情になったように感じた。
その店員はこくり、と頷き、一度深呼吸をした。
『それなら、ここにある武器で気に入ったやつを選んでくれ。どれでも無料でくれてやる』
なんとその店員は武器を無料でくれるというのだ。
「いいのか?」
『もちろんだ。俺は絶対に嘘は言わない。それに、あの爆破事件の犯人を誰かが倒さなきゃ俺たちの命はこれから先も脅かされ続けることになるからな』
「そいうことなら、有難く選ばせてもらうよ」
『ああ、その代わり絶対に勝ってくれよ?』
「俺たちは必ず勝つよ」
俺の言葉を聞いた店員は少し安心したようだった。
この店員も自分が戦うことができないから誰かに託すしかないんだろう。それで、出来ることを考えた時に思いついたのが、武器を無料で提供するということだったのだろうな。
店内には色々な種類の武器が揃っていたが、日本の武器屋とは少し違うようだった。
アメリカは体格の良い人が多いからか、販売している武器も大剣や巨大なハンマーなどが多いように感じた。
もちろん短剣なども売られているが、数が少ない。
普段は大剣などは使わないけど、今回は大剣とかを使ってみるのも良いかもしれないな。
「サリナは良さそうな武器見つけた?」
「いや、まだかな。種類が多いからどれがいいのか悩んじゃう」
「そうだよな。サリナは新しい武器でもすぐに使えるから普段使わないような武器選んでみてもいいんじゃない?」
「たしかに、それはいいかも。でも、それを言うならユウくんもでしょ?」
「それじゃあ、俺も普段は使わない武器に挑戦してみようかな」
俺とサリナは二人ともに普段はあまり使わない武器を選ぶことにした。
攻撃力の高い武器を選ぶとなると、やっぱり大剣が一番良いような気がする。それに、魔法と一緒に使う時も大剣なら攻撃範囲を大きくすることができるのだ。
普段使わない武器をもらうつもりだあ、やはり念のために短剣も欲しいところではある。
それなら、大剣と短剣の両方をもらおうかな。
俺は並べられている大剣と短剣の中からそれぞれ一本ずつ選んだ。
どちらも黒を基調としている剣を選んだ。
武器を選び終えた俺はふと隣を見てみると、サリナがまだ武器選びに苦労しているようだった。
「俺は選び終わったよ」
「もう!? 早いね。見てもいい?」
「うん、これだよ」
「おお~! 黒い剣かっこいいね! ユウくんに合ってる気がするよ」
「そう言ってくれると嬉しいな」
「うん。私も早く選ばなきゃ」
「焦らずにゆっくり決めていいよ。それに、一つじゃなくて二つ選ぶのもありだと思う」
「そうだね。もう少し考えてみる」
悩むこと数分。
サリナは武器を選び終えたようだった。
「決まった?」
「うん! 私もユウくんみたいに二本選んだ!」
「二本あると何かと便利だしいいかもね」
サリナが選んだ武器の一つは、俺と同じ黒を基調とした短剣だった。
そして、もう一つが針のように細く鋭い剣身に、華やかな曲線が特徴的なヒルト(
その美しい剣はサリナにぴったりだと思った。
俺たちは選んだ武器を店員のところへと持って行った。
「これにします」
『そうかい。さっきも言った通り、代金はいらないからそれで俺たちを救ってくれ。頼む』
「わかりました。必ず勝ちます」
店員の「頼む」という言葉が本当に心の底から思っているようだった。だから、俺はその期待に応えるために「必ず勝つ」と目の前で宣言したのだ。
その言葉に嘘はない。
俺とサリナや他の犯人を倒しに向かう人たちで必ずここの人たちの笑顔を取り戻すのだ。
俺たちは購入した、というか無料で提供してもらった武器を持って店を出た。
「そういえば、明日ってどのくらいの時間にダンジョンに向かうの?」
店を出るとサリナは明日の出発時間を聞いてきた。
たしかに、時間は決まっていなかったような気がする。でも、犯人に辿り着く前に魔物との戦闘も起こる可能性が高いとなると早めに向かった方がいいよな。
「明日の早朝に行きたいけど、サリナはそれでいい?」
「うん! ユウくんが決めたなら私はそれについて行くよ」
「ありがとう」
武器の用意を終わらせた俺たちは一度ホテルに戻ることにした。
先ほどまではホテルの近くも騒がしかったが、今はもう静かになっていたのでもう色々対処を終えているのだろう。
スマホで何度も記事を確認するが、やはり軽傷者は出ているものの大怪我を負った人や命を落としてしまった人は出ていないようだ。
「ユウくん、ずっとスマホの画面見てどうしたの?」
「いや、さっきの爆破事件で大怪我した人いないかなと思ってさ」
「やっぱり心配になるよね」
「ああ、でも軽傷者だけみたいだから安心したよ」
「それなら良かった」
俺とサリナは命を落とした人がいないことに安心した。
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