第34話 爆発音で目覚める
「ん……なんだ……?」
「どうしたのユウくん」
昨日、俺とサリナは色々な店を見てまわった後、ホテルに戻って夕食を食べたりして眠りについたのだが、外から大きな爆発音が聞こえてきて深夜に目覚めてしまった。
「何か爆発音が聞こえなかった?」
「たしかに、外の方から聞こえたような。それに、外が騒がしい気がする……」
俺とサリナは起き上がり、窓から外を覗いてみると、外では多くの人が慌てて逃げているようだった。
やはり、近くで爆発が起きてそこから急いで離れているのだろうか?
そうなると、俺たちもここにいるわけにはいかないな。
早く逃げなくては。
「サリナ、俺たちもここから出よう」
「そうだね。何が起きているのか分からないしね」
下の階や隣の部屋の人たちもここから出るようで多くの足音が響いている。
俺たちもすぐに走りやすい格好に着替えて、貴重品などを持ってホテルを飛び出した。
「うわっ」
ホテルの外に出ると、爆発の影響からか焦げ臭い匂いが漂っていた。
「やっぱり、近くで爆発が起きたみたいだね」
「そうだな。俺たちも詳しい情報が出るまでは皆と一緒にここから離れよう」
「うん!」
俺たちは慌てながら走る人たちの後に続いた。
個々の近くに住むほとんどの人たちが逃げているようで、前が見えないほどの人で溢れかえっていた。周りからは悲鳴が飛び交っている。
俺はサリナとこの人混みの中ではぐれないようにずっと手を握っていた。
正直、恥ずかしさはあるがそんなことを言っている場合じゃない。今は、安全第一だからな。
俺がサリナを守らなければ。
サリナも俺の手を強く握ってくれている。
「手を離さないように」
「もちろん。ユウくんも離さないでね」
「ああ、ずっと握ってるよ」
この人混みは少し離れた大きな公園に辿り着いた。
人混みのせいで少し酸素が薄くなっていたのか息苦しかったので助かった。
「大丈夫か?」
「うん、やっと落ち着いたね」
「ああ、一刻も早く何か情報が欲しいんだけどな」
周りの人たちも情報を欲しているようで皆、スマホの画面を眺めていた。
家族と連絡を取っていると思われる人もいるようだった。
俺にも急に不安が襲ってきて、サリナの手を少しだけ強く握る。
そんな俺にサリナは優しい女神のような微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ。きっとみんな無事だよ」
「ありがとう。そうだよな、みんな無事だよな」
「ユウくんは本当に優しいね」
「それはサリナもだろ?」
「ユウくんほどじゃないと思うよ」
爆発が起きた場所の近くに住んでいる人たちは大丈夫なのか?
俺の頭にはそんなことばかりが浮かんでいたが、サリナには俺の考えがお見通しのようだった。
でも、サリナも不安に感じているようで微笑みを見せながらも時折不安そうな表情で爆発音の聞こえた方向に目を向けていた。
俺たちは二人とも自分のことより他人の心配をしてしまっていた。
「あっ、ユウくん!」
「どうした?」
「情報出てるよ! ほら!」
サリナがスマホの画面を見せてくれる。
そこにはネットニュースの記事が載っており、爆発のことが詳しく書かれているようだった。
その記事によると、軽傷の者はいるみたいだけど大怪我を負った人はいないらしかった。
俺はホッとして一気に気が抜ける。
「よかった」
「これでとりあえず一安心だね」
「そうだな。あとは爆発の原因について知りたいけど、その情報は出てる?」
「いや、その情報はまだみたい」
「そうか。原因が分かるまではまだ油断できないな」
「そうだね」
爆発の原因は何なのだろうか。
ただの火事なのか?
それとも何者かが故意的に仕掛けたものなのか?
そんなことを考えていると、近くの人が叫んだ。
『この爆発、ただの火事じゃなくて犯人がいるらしいぞ!』
英語でそのようなことを叫んでいた。
俺は完璧に英語を理解できるわけではないがある程度は理解できるのでその人が言っていることが分かった。
隣にいるサリナは困惑しているようだったので俺が教えることにした。
「この爆発、ただの火事じゃなくて誰かが故意的に起こしたものだってさ」
「えっ!? 本当に!?」
「ああ、そのニュースの記事更新してみて」
「……うん、わかった」
サリナがニュースの記事を更新すると、新たな記事が出てきて、そこには近くの人が言っていた通りただの火事ではなく、何者かが起こした爆発だと書かれていた。
その記事によると、監視カメラに男がビルに向かって炎魔法を放っている瞬間が映っていたそうだ。
やっぱり、ただの火事ではなかったか。
犯人がまだ捕まっていないとなると、ここも安全とは言えなくなったな。
ただ、一つ気になるのは、その犯人が監視カメラに映っていたということだ。
近くの住人の目撃証言で犯人が分かったということなら納得できるが、監視カメラに映っていたとなると、犯人は別に監視カメラに映ってバレてしまっても捕まらない自信があるのかもしれない。
ただの思い付きの行為とかであればすぐにつかまるはずなので良いのだが。
俺たちは再び不安に駆られ、何事も起きないように祈る。
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