第29話 帰還
バケモノを倒した俺たちは魔石を持って街へと戻ったのだが、ダンジョンを出た瞬間、大歓声に包まれたのだった。
街中の人たちが俺たちのことを褒めてくれた。
『あんたたち凄かったよ! あんな恐ろしいバケモノを倒しちゃうなんてねぇ』
「俺たちは俺たちのできることをしただけですから」
『あら、謙虚なのねぇ』
街の大型ディスプレイで俺たちのチャンネルの配信が流されていたらしく、街中の人たちが俺たちがバケモノを倒したことを知っていた。
嬉しいのだが、少し恥ずかしい気もする。
でも、みんなに笑顔が戻って良かった。
バケモノがダンジョンに現れたと知ってからは、みんな暗くなってしまっていたからな。
「俺たち、やったんだな」
「うん、みんな嬉しそうに笑ってるよ。こうしてみんなの笑顔をみるとこっちまで嬉しくなるね」
「そうだな。頑張って良かったって思えるよ」
これで、この街のダンジョンには今まで通りの日常が戻ってくることだろう。
俺とサリナもこれからもこのダンジョンに潜り続けるつもりだ。
*****
俺は家に戻ったが、サリナも付いてきた。
激戦を終えた後だし、俺も二人で色々と話したりしたいと思っていたのでちょうどよかった。
やっぱり俺はサリナと二人でいるときが一番落ち着ける。
「みんな喜んでたね」
「そうだな。疲れたよな? お疲れ様」
「ユウくんもお疲れ様」
今日はぐっすり眠れそうな気がする。
でも、その前にお腹もすいたなぁ。
そんなことを考えていると、俺の腹がぐぅっと鳴った。
俺は恥ずかしくなり、耳まで赤くなってしまう。
「……ごめん」
「あははっ、お腹空いたよね。私もお腹空いてるし、何か作ろうか?」
「えっ、いいの?」
「もちろん! あ、でも、ユウくんの冷蔵庫の中に入ってるもの使っていい?」
「何でも使っていいよ! ありがとう!」
サリナは何か作ってくれるらしい。
サリナの作る料理が美味しいということは知っている。サンドイッチがあんなに美味しかったのだから他の料理はそれ以上なんじゃないか、と俺は心の中で勝手に期待している。
さすがに何もせずに待っているのは申し訳ない気がするので、俺も手伝えることがあるなら手伝いたい。
それに、正直料理を作れるようになりたいなとは前から少し思っていた。その方が日常生活において便利だからな。
「俺も手伝っていい?」
「ユウくん手伝ってくれるの? ソファで休んでても良いんだよ?」
「俺も少しは料理作れるようになりたいから手伝いたい」
「なるほどね。それなら、一緒に作ろう!」
「ありがとう」
サリナは俺が料理を手伝うことを許可してくれた。
せっかく手伝うのだから、出来るだけ色々と覚えてこれから少しでも自分で作れるようになれるように頑張ろう。
俺たちはキッチンへと移動し、手を洗ってから食材などを冷蔵庫から取り出す。
用意したのは、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、牛肉とその他色々だ。
野菜も結構使う料理なんだな。
「今日は濃い味のものをガッツリ食べたいよね?」
「そうだな、疲れてるから濃い味の料理がいいかもな」
「カレーライスでもいい?」
「お! カレーか!」
「ユウくんのテンションが上がったね。もしかして、カレーライス好き?」
「ああ、カレーは小さい頃から好きだよ」
今日はカレーライスを作るらしい。
それを聞いた俺は自然と心が躍る。
俺は小さい頃からカレーライスが好きで、給食で出ると必ずおかわりをしていたほどだ。
もし、今日カレーライスの作り方を覚えることができれば俺は毎日でも自分で作ってしまう気がする。
「まずは野菜を切るから私の真似して切ってみて」
「わかった」
サリナが数個野菜を切ってお手本を見せてくれる。
俺はそれを真似して同じように野菜を切る。
「お、うまいうまい!」
「本当? こんな感じでいいの?」
「料理するの初めてでしょ?」
「うん」
「それなら結構上手いよ!」
「……ありがとう」
野菜を切ることができただけで、褒めてくれる。
もしかしてサリナは褒めて伸ばすタイプなのか。
俺も褒められることで嬉しくなりやる気が上がる。
野菜を切り終えた後は牛肉も同じように切り分けた。
「それじゃあ、次は炒めていくよ」
「野菜と肉は一緒に炒める?」
「まずは牛肉からだね」
「なるほど。炒める順番があるんだな」
牛肉と野菜は一緒にフライパンにいれるものだと思っていたが、入れる順番というものがあるらしい。覚えておこう。
俺はサリナに言われた通りに先に牛肉を炒め、その後に野菜を入れて炒める。
「次は水入れていいよ。これ覚えてね。玉ねぎがこのくらいの色になったら水入れるの」
「わかった」
水を入れ、十五分ほど煮込む。
そして、最後にこの料理において一番大事ともいえるであろうカレールーを加えて、溶かしながら十分間煮込んで出来上がった。
料理を作り始めるときにサリナが米を炊く準備をしてくれていたので、カレーが出来上がるのと同じくらいで炊きあがった。
「あとは盛り付けるだけだよ」
「こんな感じかな?」
「そう! いいね! これで完成!」
「おお、出来た!」
皿にカレーライスを盛り付けて料理は完成した。
俺とサリナは作ったカレーライスをリビングのテーブルの上に並べ、食べる用意をした。
カレーライスの良い香りが食欲を刺激してくる。
「食べよっか」
「うん」
「「いただきます!」」
俺たちは二人で作ったカレーライスを口に運んだ。
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