第14話 サリナの家
翌日、俺はサリナの家へと向かった。
送られてきた住所は俺の住む場所からそこまで遠くはなかったので俺はバスやタクシーは使わずに歩きで向かった。
サリナの家……というか、誰かの家に行くこと自体が俺にとってはあまりないことなので、俺は緊張のせいで心臓の鼓動が早くなっていた。
それに、話したいこともあると言っていたのでそれが何なのかも気になる。
「この辺だったよな」
俺はスマホで住所を確認しながら辺りを見渡す。
「だ~れだっ?」
「んっ!?」
突然後ろから誰かが目をふさいできた。
俺は驚いたがその声は俺の聞き覚えのある声だった。
「誰だか分かるかなぁ?」
「サリナだろ」
「凄い! さすがユウくん! どうしてわかったの?」
「声ですぐわかったよ」
サリナが目をふさぐのをやめたので、振り向くとダンジョンに潜るときの戦いやすい服装とは違い、オレンジ色のワンピースを着たヒマワリのような可愛らしい笑顔をみせるサリナの姿がそこにはあった。
思わずドキッとしてしまう。
こういう姿のサリナを見ると普段ダンジョンに潜っているようには見えないだろう。
「ユウくん、行こっか」
「もしかして、わざわざ俺を出迎えるためだけにここまで来たの?」
「そうだよ。ここまで来たって言ってもすぐ近くだしね」
サリナはそう言うと、俺の手を取って歩き出した。
できる限り心を無にして意識しないようにしたが、それでも心臓の鼓動が段々と早くなっているのを感じる。
そこから歩くこと約一分ほどで目的地に到着した。
「お~、大きいな」
「とりあえず、私の部屋まで上がろう」
そこはかなりの高さのあるマンションだった。
家賃とかも高そうだな。
マンションに着いた俺たちはサリナの住む部屋に行くためにエレベーターに乗った。
「サリナの部屋は何階なの?」
「最初は高いとこに住みたいと思ってたんだけど、高いとこに住むとエレベーターでも時間が掛かるから低めの五階に住んでるよ」
「そうなんだ。初めてだから楽しみだな」
「ちゃんと掃除もして綺麗だから楽しみにしてて」
エレベーターが五階に着くと、俺はサリナに案内されて部屋に入る。
ドアが開くとそこには女の子らしい可愛い内装の部屋があった。
「おお、凄いな。超綺麗にされてる。内装も可愛いね」
「可愛いと思う?」
「ああ、可愛いと思うよ」
「よかった。さあ、遠慮せずに上がって」
「それじゃ、お邪魔します」
どこを見ても綺麗だな。
普段からこまめに掃除をしているんだろう。
リビングにはソファとテーブルとぬいぐるみが置かれていて、キッチンは皿やコップが綺麗に並べられている。
(クマのぬいぐるみが多いな。クマ好きなのかな?)
「ソファに座っていいよ」
座っても良いと言われたので、俺はソファに腰を掛けた。
このソファ、ふかふかしていて座り心地がとても気持ち良い。
サリナはダンジョン配信者になるくらいだから、可愛いものよりもカッコいいものとかを好んでいると勝手に思い込んでいたが、実際は可愛いものが好きなようだ。
今度、店でクマのぬいぐるみとかストラップとか見つけたらプレゼントしようかな。
「はい、ユウくん」
「あ、いいの?」
「うん、家に人呼んだことなかったからこうやってお菓子食べたりジュース飲んだりしながらお喋りしたかったんだよね」
「俺でよければいつでも呼んでいいよ」
「ありがとう」
サリナは冷蔵庫からクッキーなどのお菓子とオレンジジュースを持ってきてくれた。
サリナはモデルだから今まで気軽に人を呼ぶことができなかったのだろう。でも、ダンジョン配信者として俺と配信を始めたことで俺だけなら家に呼べるようになったんだな。
俺でいいのなら、これからもこうして俺かサリナの家に集まってお菓子を食べながらお喋りとかしたいな。
「今日はダンジョン行く予定もないし、まったり時間過ごそうかな」
「そうだね」
サリナは俺の隣に座ると顔を赤らめながら、もじもじし始める。
「どうした?」
「ねぇ、ユウくん」
「うん?」
「私と一緒にダンジョン配信者になってくれて本当にありがとうね」
「急にどうしたの?」
「ダンジョン配信って危険な職業だから、一緒にダンジョン配信を始めてくれて本当に感謝してるの。私から誘ったから、ユウくんには私とダンジョン配信を始めて良かったと思ってもらえるようにこれからもがんばるね」
突然どうしたのかと思えば、サリナは俺に感謝を伝えてきた。
感謝を伝えたいのは、俺の方だというのに。
俺もサリナと出会ってなかったら、サリナとダンジョン配信者になっていなかったし、今ほど毎日が楽しいと思えていなかったはずだ。だから、俺もサリナにはしてもしきれないくらい感謝している。
「俺はすでにサリナとダンジョン配信を始めて良かったって思ってるよ。俺はサリナと出会ってから毎日が楽しいよ」
「本当?」
「ああ、本当だよ。だから、俺からも言わせてほしい。ありがとう。そして、これからもよろしくな」
「うんっ! こちらこそよろしくね!」
俺たちは笑顔でお互いに感謝を伝え合った。
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