6-4:ログアウトぉっ!!
「ふむふむなるほど~。そうだったんだ。じゃあお返事っと!」
あたしは今マジカリングワールドのゲームをやっている。
そしてアドレス交換でいよっちとメールのやり取りをしていた。
あの後、マジカリングワールドで起こったログアウト出来ない問題で世間は大騒ぎになった。
機体の発売停止どころか市場回収の話も持ちあがったが、たまたま当時のゲーム内に問題作となったマジカリングワールドの開発者もいて機体自体の問題ではなく、あくまでプログラム上の問題が今回のログアウト出来ない問題の引き金になっており、修正プログラムを配信する事でバージョンアップすればこの問題は二度と起こらないと記者会見で発表された。
そんなんで誰が信用するのだろうか?
でも世間はマスメディアも含め、何と国会でもこの問題は解決されたと無理矢理話が進められたらしい。
いいのかそれで?
しかし本当の所はもっと別にあるようだった。
当時ゲームをやっていた人のアドレスは特定され、その全員にゲーム内で何が起こっていたかこと細やかに情報提供が要望された。
更にその要望が政府関連からも来ていたりもする。
何故か?
もうお気付きの方もいるだろう。
先ず、あの時あたしたちはナビさんのサポートが受けられなかった。
それはネットに繋がっていなかったからだ。
さて、ここで大きな問題が持ち上がった。
本来フルダイブ方式のゲームは眠った人間の脳内に機械的信号を送って「夢」に近い状態でゲームをする方式なのらしい。
所で、複数の人間が同時に同じ夢を見られるのか?
当然そこに疑問を持つ方もいるだろう。
それを解決する方法がネットへの接続とナビさんによるサーバーでの同時認識なのだそうだ。
つまり、「夢」どうしをつなぐのをネットを介して、サーバーにある世界をゲームをしている皆さんに提供して同じ世界、同じ場所、同じ「夢」の中でも一緒にゲームが出来ると言うシステムなんだとか。
はい、あたしにそんな難しいのわかる訳ありません!
しかしその説明で大問題が起こっていたのも事実だった。
それはネットに繋がっていなかったあの時にゲームをしていた人全員が同じ世界でネットが繋がった状態と変わらずにゲームが出来ていたと言う事だ。
どう言う事かって?
要は皆個々に夢を見ていたはずなのに共通の認識を持っていたって事だ。
最初それを聞かされたあたしはちんぷんかんぷん。
でも兄ちゃんから寝ている時にお兄ちゃんの夢とあたしの夢が同じでその夢の中で会話したりすることって出来るかって聞かれて思い切り首を横に振ったもんだった。
そんなオカルトな事ないない。
でも現実にはそのオカルトな事が起こっていたってのだから驚きだ。
そしてゲーム中にやられて死んでしまったキャラクターの人は「夢を見ない状態」で外部からの刺激でも目を覚まさない昏睡状態であったのは事実だった。
下手をすれば植物人間状態だったらしい。
それで何やら政府もこの問題を重要視して、あの時プレーをしていた全員に引き続きゲームをプレーして問題の洗い直しを要望すると言う事態に発展していたのだった。
「普通はゲーム機の販売とかゲームの販売自体が止められるんだよね?」
「ああ、本来ならそうなんだけど、このゲーム機は世界初でこれからのデジタル戦略の要としていろいろ政府も国際的にこの機械を使用したいと言うのが本音らしい。例えば要人たちの会合なんかを素早く、そして安全にしたりとかね。最近なんか国をまたいでの要人の移動が難しくなっているからね。テロとかの脅威もあるけど国どうしの要人が話し合う必要はどんどん高くなっているからね。そこでこのフルダイブシステムの出番って事だよ。もともとゲーム機だけの使い方を目指してたわけではないからね」
ゲームを終えてヘッドギアを取り外し、居間に行くとお兄ちゃんが新しいヘッドギアを設定していた。
なのでさっきの事を聞いてみるとなんか難しい回答が来た。
「ゲームだけで使うつもりじゃなかったんだ…… どうりで会いたくもない政府のお役人さんがわざわざ家にまで来るわけだ。でもそれってすごい事なの?」
「ああ、凄い事だよ。同時翻訳も出来るから通訳もいらない、余計な事をしゃべらない様に先にAIのフォローも入れられる。相手の顔を見ながら話も出来るで今まで以上に政治家の質が問われるからね。でもこのシステムを使ったベースをいち早く日本が世界基準に持っていければ大きなアドバンテージが取れるからね!」
余計に分からなくなった。
やっぱりあたしに難しい事はだめだ。
でも一つだけ良かったことがあった。
それはゲーム内のあの魔女のプレーヤがいよっちだったって事だ。
再会できて本当にうれしい。
そしてアドレス交換してさっき見たいに連絡の取り様が出来た。
当面政府やゲーム会社、ゲーム機の会社の監視付きだけどあたしにしてみればそんな事は些細な事だった。
いよっちとつながれる。
それがあたしにはどれだけ大きなことだったか。
そしてゲームの世界では徐々に他のプレーヤーさんとも話が出来るようになってきた。
時たま一緒に冒険に行かないかとか聞かれるけど、あたしの職業やステータス見ると唖然とされる。
だってあたしはあの世界では無敵なのだから。
もっとも、一緒に冒険をするお誘いは今の所全てお断りしている。
何故なら噂では個人でギルドを作れるシステムがもうすぐ導入されるらしい。
どう言うモノかというと、拠点となる街を決めて自分たちの家を作って確保し、個人ギルドを立ち上げるとそこがベースとなり、仲間になりたい人はそこを基準にパーティー編成とかいろいろできるらしい。
つまり、冒険者ギルドで知らない人とパーティー組む必要が無いのだ!
それに個人ギルドだとイベント中心にパーティー人数の上限が解放されるのでもっといろいろな事が出来るとか。
今まで冒険者ギルドでパーティー編成の上限人数は一つのパーティーで四人までだった。
それが上限解放されるって事は凄い事らしいけど、あたしたちはすぐすぐには仲間を集められないだろう。
いやだって、だんだんとプレーヤーの皆さんと話は出来るようになっては来たけど、いきなりパーティーはあたしの心が死ぬ。
確かにあの時以来少しずつあたしも変わって来たけど、すぐすぐには変わり切れない。
だからこの新システムで「友達」を作ろうっていよっちと話していた。
いよっちも結局はあっちの高校でなかなか友達が出来なかったらしい。
だからバイトしたり、お婆ちゃんから支援してもらって無理してあのゲーム機とゲームを買った。
そしてゲームの世界に逃げ込んでいたら声をかけられてそのままあのパーティーに。
居場所が無かったいよっちはこのゲームにはまりにはまって、睡眠時間中はずっとこのゲームをしていたそうな。
すみません、あたしは一日中やってました。
でもやっぱりいよっちも現実世界も無視は出来なので学校にだけはちゃんと行っていたらしい。
「憂津子、そろそろ時間だよ」
「あ、うん、分かっている」
お母さんにそう言われ制服の襟を正す。
そう、あたしは今日学校に復帰することを決めた。
多分いろいろ言われるだろうけど、それでも前に進むことを決めた。
だってもう一人は嫌だから。
「あたしはぼっちからもログアウトおっ!」
気合を入れてお母さんと一緒に玄関を出るあたしだったのだ。
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