第五章:大惨事
5-1:マジですか
新フィールド北の大地。
モチーフは雪国を模したもの。
超上級者エリアとしてあたしがその第一人者としてやって来た。
前作のマジカリングワールドだとこの新区画は存在しないので一体どうなっているか今から楽しみではある。
「ここが冒険者ギルドか。でもなんでここでも登録が必要なんだろうね?」
―― 新区画北の大地はベータ版からの引用です。まだ詳細なデーターが取れていないのでこのフィールドで活動するプレイヤーのデーターを集めています。ですのでどのプレーヤーがこの区画に入って冒険をしているか確認をする為です ――
ナビさんはあたしの疑問にすぐに答えてくれた。
そうか、新区画なんでまだ手探りの所があるのか。
「まあいいや、とりあえず登録登録っと~♪」
あまり深く考えずに冒険者ギルドの扉を開くと一斉にごろつき風のNPCがこちらに目を向ける。
そしてじろじろとあからさまに見てくるその視線はたとえNPCとは言え気持ちの良いものではない。
あたしはそれでもカウンターまで行って受付嬢に声をかける。
「ここに登録するように言われたのだけど」
「いらっしゃいませ。北の街での登録ですね?」
受付嬢はそう言ってウィンドウを開く。
そこにはこの新区画についてのお断りが書いてあった。
「なになに?」
まあ要はまだベータ版からの引用したばかりなのでこの超上級者区画では修正が所々これからも入ると言う注意事項、この区画でしか取れない新アイテムなどの説明はナビに聞いてくれとかそう言ったモノだった。
それらの説明を一通り見て同意の空欄にチェックマークを入れるとあたしの登録は終わったようだ。
「ようこそ北の街へ。これで北の街でのクエストが受けられます。クエストはあちらの掲示板に有りますのでご覧ください」
受付嬢はそう言ってまた定位置に戻って動かなくなった。
あたしはクエストがあると言う掲示板に行って見るも、まだクエスト自体の数が少ない。
「ええとぉ、街道のイエティ討伐にホワイトドラゴンの討伐っと……」
流石に超上級者区画のクエスト。
結構と強いモンスターの討伐依頼とかもある。
そう言えばイエティ倒したけどアイテムドロップしなかったな。
お金はたんまり入るけど、もうあたしの保有できるお金が上限値に達しているのであまりうれしくない。
砂の街の宿屋はキープしたままなので、そこにアイテムとかお金を預けているけどまたすぐに手持ちが増えるのよね~。
「うーん、面白そうなのも結構あるな、それじゃぁこのホワイトドラゴンの討伐にでも……」
―― システムの修復が終わりました。ログアウトが出来ます ――
あたしがホワイトドラゴンの討伐以来でも受けようとしたらナビさんがシステム修復完了の通知をして来た。
「このタイミングでか~。でもあっちの本体のあたしがやばい状態だから急いで宿とってセーブしよ」
あたしは慌ててこの北の街で宿屋を取りに行くのだった。
* * * * *
「ありがとう、二日目も安心さん」
ログアウトして真っ先に懸念事項を確認したら人類の技術の勝利だった。
もうね、水風船。
とにかくそれを急ぎ処理してお風呂に向かう。
もう午前と言ってもお昼に近い午前。
お風呂からあがって居間のテレビをつけると、早速マジカリングワールドでログアウト出来なくなった問題がニュースになっている。
まあ、安全面を考えればあってはならないエラーだもんね。
牛乳の紙パックに口をつけて飲んでいると今回の件で専門家もいろいろと話をしている。
何となく気になってそれを聞いているけど、技術的にどうのこうのはあたしに分かるはずはない。
でもゲームが機械本体に影響を与えるという報告は初めて、ゲーム内の誰かが自由度が高い事を理由に色々やった結果バグが発生してそれにシステムが追い付けず、そして根幹となる機械本体にまで影響を及ぼすと言う前代未聞の状態だったらしい。
一部では今回の問題を重要視して機体回収まで検討されているとか。
「……ちょっと待ってよ、機体回収されたら今まで頑張って来たのがどうなっちゃうのよ? まさか今までのデーターがパアとか無いわよね?」
この【VRMMO】は世界初のフルダイブシステムによるゲームだ。
新技術によりゲームの世界にまるで本当に行ったかのようになる。
前作の頭にかぶってコントローラーでキャラクターを扱う【MMORPG】とは根本的に違う。
このゲームがどう言った理屈でそうなっているかは知らないけど、寝る間を惜しむくらいに楽しくて、あたしくらいまでキャラを育てるとこんな所で辞められるわけがない。
「どうしよう、こうなったら機体回収される前にもっとこのゲームをやり込んでおきたいな……」
既に冒険者としては最強に達している。
職業もギルガメッシュを取得しているので、何処かの街で家を買って錬金術師屋やいろいろなものを研究するのも面白い。
系列の全アイテムを取得するってのもやってみたいから、まだまだこのゲーム自体は続けたい。
「となると、長丁場か。食べ物食べておトイレ行って、二日目も安心さんを装着して……」
あたしは長時間ゲームをしても大丈夫な体制を取り始める。
部屋の窓も少し開け、扇風機も弱だけど首振りにして部屋の温度を調整できるようにしておく。
一応安全の為にベッドにも防水シート張って、その上にサラサラの敷地を準備してお腹が冷えない様に上掛けも準備する。
「水分補給よーし、栄養補給もよーし、部屋温度大丈夫、ベッドの防水もOK、二日目さんも装着完了っと。さあ、これでまた十二時間は行けるはず!」
あたしは早速あのゲーム機をかぶって横になる。
「待ってろマジカリングワールド!」
そう言いながらあたしはまたゲームの世界へと行くのだった。
* * * * *
ゲームの世界に来て宿屋から急ぎ冒険者ギルドに来ると何人かのプレーヤーらしき人たちがいた。
あたしが現実世界で色々とやっている間にここまで来たのかな?
遠巻きにその様子を見ているとその人たちが何やら話合っている様だ。
「マジかよこれ?」
「ああ、システム修復されたはいいが機体回収の予定が入っているらしい」
「まあ、ログアウト出来ないなんてシャレにならないもんな」
「しかしどこの誰だよ、そんなにバグ発生させたやつって?」
聞き耳立てているとさっきのニュースの話の事言っている様だった。
ホント、そんなにバグ発生させるなんて迷惑だよね~。
あたしはそんなこと考えながらホワイトドラゴン討伐の依頼を受ける。
と、視界になんかじじじっと揺らぎが……
「ん~、何だろうね?」
あまり気にしないであたしはホワイトドラゴンの討伐依頼を受けて早速ドラゴンが出没すると言う東側の岩山に向かうのだった。
* * * * *
「【絶対防壁】!」
到達した東の岩山は大体三日くらいかかった。
一面真っ白な銀世界にいきなり岩山が見えて来る。
結構険しい岩山の様で、雪に埋もれない断崖絶壁とかから固そうな岩肌が見える。
そして目的のホワイトドラゴンはすぐに見つかった。
レベルはやはり高い。
多分上級者パーティーでも苦労するだろう。
ホワイトドラゴンはいきなりホワイトブレス、要は吹雪のブレスを吐いてくる。
これに直撃すると体が凍ってしまい五ターン分くらい動けなくなる。
勿論攻撃は受けるのでぼっこぼこにされるから要注意。
「とは言え、あたしには効かない! うりゃっ!」
牽制の為にスラッシュと言う技を使ってみる。
要は剣の衝撃派。
攻撃力自体はそれほど高くないけど、通常攻撃と同じ感覚で使えるので便利。
あたしのその攻撃にホワイトドラゴンは咆哮を上げて魔法攻撃の体勢に入る。
「うっし、『暴食の盾』!!」
やっと試せるレアアイテム。
ホワイトドラゴンが魔法で氷の剣を沢山作ってこっちに飛ばして来る。
それをあたしはレアアイテム、「暴食の盾」で受けるとそれらの氷の剣が開いた「暴食の盾」に全て吸い込まれる。
「リバース!」
この盾はどんな攻撃も飲み込めるし、それを倍返しでお返しできる。
どのくらい効くか試してみたかったんだよねぇ~。
ぶしゅぶしゅぶしゅっ!!
どがががががっ!
もう一度「暴食の盾」の口が開いたと思ったら倍の数の氷の剣が出現してホワイトドラゴンに襲いかかる。
倍返しの謳い文句通り、氷の剣は全てホワイトドラゴンに突き刺さる。
『ぐろぉああああぉぉぉぉっ!!』
悲鳴を上げるホワイトドラゴン。
しかし氷系の魔法の為かそのダメージは少ない。
「やっぱ同系統の攻撃は補正が入るからあまり効かないか? じゃあこれならどうだ。特別スキル覇者発動、神の裁き『ジャッジメント』!!」
途端に上空に大きな魔法陣が浮かび上がりそこから女性のハイヒールを履いた足が出て来る。
ごごごごごごごごぉ……
ぬっ!
そしてその踵がホワイトドラゴンを襲う!
ぶぎゅるっ!!
『ぐろぉああああぉぉぉぉっ!!』
ぱーんっ!
痛そうな踵に踏みつぶされ哀れホワイトドラゴンはぼろぼろになって消えさっていった。
本来ならこの「ジャッジメント」はこの位強い技なんだよなぁ~。
あのアナザーワルドゴッドとかがとんでもないんだよなぁ~。
そんな事を思っているとアイテムドロップがあったようだ。
あたしは消えたホワイトドラゴンが落としていったドロップアイテムを拾う。
「ふ~ん、ホワイトドラゴンの牙かぁ…… どれどれ鑑定っと」
拾ったホワイトドラゴンの牙はそれ単体ではなにも無いけど「魔剣:氷の剣」を作る素材にはなるらしい。
「おおっ! 魔剣とかも作れるんだ! 確かに『砂の剣』も作れたからこれはしっかりともらっておこう。そうだ、もう少し欲しいから他にもホワイトドラゴンいないかな?」
あたしはアイテム欲しさにまた岩山の付近の探索をする。
ホワイトドラゴンのもう数匹くらい狩っておきたいから。
「どこだ私の素材ちゃん~♪」
疑似感覚で雪を踏む感覚も少しひんやりする感覚も現実世界で暑くなり始めた季節には助かる。
本体がそれで冷やされる事は無いけど、ゲームをしているあたしには助かる。
と、あっちにドラゴンの姿が!!
「いたぁっ! マテぇ、あたしの素材!!」
急ぎそちらに向かおとしたその瞬間だった。
ぼこっ!
「へっ?」
いきなり足元の雪が崩れクレバズが現れた!?
「て、またこのパターンかいぃいいいいぃぃぃっ!!!!」
あたしの叫び声を残して雪の岩山はまた静かになるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます