第三章:一人は楽しい
3-1:レベル上げ
「剣舞!!」
ざしゅ、ざしゅっ!!
あたしは剣王スキル、剣舞を使ってボスモンスターを倒していた。
あれから何だかんだ言ってもう第六層まで来ている。
レベルはもう少しで天性騎士90にまで上がる。
流石にこの職業になってからはレベルの上がり方もゆっくりだけど、その分他の職業が「大賢者」から最後の「悟る者」なんて職業にジョブチェンジで来た。
この「悟る者」って前作では無かった職業で、全ての魔法は使えるわ、種族限定の精霊魔法まで使えるわで魔法系の最強キャラになっている。
そして「お頭忍者」もレベルカンストしてその上の「影の実力者」とか言うやつになっている。
これも前作には無かった職業で、もうほとんど闇の帝王。
魔法じゃないけど闇スキルなんてのが沢山有ってどれもこれもチートすぎるスキル。
なので後は天性騎士をカンストさせてその上の神性騎士になれば冒険者系の職業の頂点になるんじゃないだろうか?
「よっし、また経験値もたくさん入って来てレアアイテムのドロップも出たか。どうしよかな、一旦街に帰ろうかな?」
アイテムボックスも結構と埋まって来たし、何よりセーブするなら宿屋でしたい。
あそこなら安全に色々と出来るしね。
「んじゃ、いったん戻ろうか!」
あたしは【空間転移】の魔法で宿屋に戻るのだった。
* * * * *
「レベル上げは順調っと、アイテムも錬成して強力な物に変えて、んでもって売っぱらったアイテムのお金で必要なモノを買いそろえてっと……」
宿屋に戻りアイテムボックスの整理整頓。
必要なモノの買い出しをして情報収集っと。
冒険者ギルドでは相変わらず緊急クエストの「聖なる宝石」しか仕事が受けられない状態。
街もNPCの皆さんが弱ったままで、路上には白骨化した死体なんかが転がっていたりする。
いや、変な所までリアルだなこのゲーム。
アイテムのお店とか冒険者ギルドの受付嬢とかもだんだん瘦せこけて来るとか、ちょっとリアル過ぎませんか?
元気そうにしているのはプレーヤーのキャラクターだけ。
お陰で一目でプレーヤーと分かるのは好いのだけど、なんか最近はそのプレーヤーの皆さんが街や冒険者ギルドに行くたびにあたしを見ているような……
「(ひそひそ)あの人がそうなのか?」
「(ひそひそ)ああ、ソロで王家の墓に何度も潜って何度も冒険者たちの窮地を救っているらしいぞ?」
「(ひそひそ)すっげーよな、ソロの騎士なのに魔法とか使えるらしいぞ」
「(ひそひそ)なんだよそれ? 騎士なのに魔法使えるってどうやるんだよ?」
「(ひそひそ)それだけじゃなく、ほかのスキルもたくさん使えるらしいぞ?」
「(ひそひそ)なんだよそのチート!」
うっ、なんかみんなしてこっちを見てひそひそ話をしている。
そりゃぁソロでこんな上級者エリアいるってのは珍しいよ?
でもいくらソロだからってひそひそ話される程なの?
気まずい。
もの凄く気まずい。
あたしは何となく彼ら冒険者を見る。
と、真実の眼鏡が邪魔だな。
あたしは眼鏡を取りなあがらもう一度そちらを見ると、いきなり視界が変わったので思わず目を細めてしまい、独り言を言ってしまった。
「なに(これって眼鏡外すと視界がぼやけるんだ)?」
いやぁ、こんな所まで現実に近く作り込んであるなんて流石に最新作。
するとなぜか皆さん一斉にあたしから視線を外す。
なんだろうね?
あたしが目を向けると皆さん何故か脂汗を書きながら必死にあたしと目を合わせないようにしている。
まあいいか、話しかけられる事が無ければあたしも緊張しなくて済む。
あたしはそのまま冒険者ギルドから出てまた王家の墓へと転移魔法で移動するのだった。
* * * * *
「さてと、第六層クリアーしたしいよいよ第七そうだけど何処にあるんだろうね『聖なる宝石』って」
そんな事言いながら又「真実の眼鏡」をかけて先へと進む。
すると、ダンジョンでは珍しいフリーフィールドになっている。
「あ、そうか確か第七層ってキープポイントがあるんだっけ」
前作でもこの王家の墓には魔物がいないフリーフィールドと言う場所があって、ダンジョンなのに広々とした場所になっている。
ここを拠点にまたいろいろできるけど、確かここってセーブも出来たはず。
「ねえ、ここって今回の作品でもセーブできるの?」
―― はい、王家の墓第七層フリーフィールドですのでセーブポイントにもなります。簡易テントなどを展開するとHP、MPの回復も出来ます ――
ナビさんに確認してみるとやはりフリーフィールドで、セーブや回復が出来るらしい。
今のところあたしは万全の状態なので別にここに拠点を作る必要はない。
それに【空間移動】の魔法があるから行った事のある場所なら何処にでも行ける。
「まあここもオートマッピングで記録出来たから何時でも来られるし、先に行こうかな?」
そう言いながらこのフリーフィールドを過ぎてまたダンジョンを進もうとすると、向こうにテントを張っているパーティーがいた。
うーん、プレイヤーさんだろうけど会話とか苦手だしな……
そう思いながらもその横を過ぎないとダンジョンに戻れない。
仕方なくあたしはその横を通り過ぎようとすると、だいぶぼろぼろになったパーティーの皆さん。
なんかダメージ蓄積で片腕消失とかしている。
あれって神殿や大神官とかの【蘇生魔法】が無いと治らないやつだ。
と、ここで女性キャラクターがあたしに気付く。
「あれ? あなたは…… もしかして女神騎士さん!?」
いや、女神騎士って誰よ?
変な事言われて思わず歩みを止めてしまった。
そしてこっちを見ているその女性キャラクターって、なんか雰囲気が知っている奴に似ている。
そう、中学校まで一緒につるんでいたあの娘に。
彼女は親の離婚で母方の住んでいる街に引っ越してしまった。
何故か彼女とだけは馬が合い、中学時代はなんやかんや一緒にいた。
高校も本当は同じ高校へ行こうと誓っていたが、親の離婚のせいで遠くの街に行ってしまった。
そんな事をふと思い出しながらあたしは先へ行こうとすると彼女のパーティーの人たちが徐々にログアウトしてゆく。
「すまん、いよっち、俺もログアウトするわ。またな!」
「あ、うん、じゃあまた……」
そんなやり取りをしている彼女たち。
現実世界も時間的にそろそろ街が動き出す時間。
引きこもっているあたしには関係ないけど、社会人や学生はそろそろ動き出さなきゃいけない時間。
あたしは興味を無くしてそのまま無言で通り過ぎようとする。
すると彼女のつぶやきが聞こえる。
「はぁ、みんなログアウトしちゃった…… 学校サボっちゃおうかな…… どうせ友達もいないし……」
すみません、あたしも同じです!
なんか他の人に声に出されて言われるとあたしの事言っているみたいで何かが刺さる!
「はぁ、でも行かなきゃな、『ゆっきー』が一緒だったらまだよかったのだけど…… ログアウトっと」
ひゅんっ!
「えっ!?」
あたしはログアウトした彼女の方を見るも、もう誰もいない。
彼女は最後に「ゆっきー」って言った。
それはあたしが中学時代、仲の良かった友人に呼ばれていた愛称。
「まさか、ね……」
あたしの友達、江西奈伊代(えにしないよ)が同じゲームしているとは限らない。
彼女は離婚の際、携帯電話とかの連絡先が消えてしまった。
どうやら離婚の際に携帯電話とか解約してしまったのだろう。
あたしもあたしで、中学時代から持っていたスマホは……
「やめやめ、嫌な事思い出すから、やめっ!」
春先の嫌な事を思い出し、頭を振る。
そしてダンジョンの先へと進むのであった。
* * * * *
第七層は予想以上にモンスターが強かった。
でも「天性騎士」と「悟る者」、「陰の実力者」の職業を持つあたしはそれらのスキルを活用して破竹の勢いで先へ進む。
何度かヤバかったけど、レアアイテムである「魔獣装甲」なんかのお陰で休み休み回復していたおかげで何とかなっている。
場合によってはマジックポーションを使ってMPを回復して【空間移動】のテレポートで宿屋とかに戻ってもいいのだけど、面倒なので戻りたくはない。
「それにもう少しで天性騎士のレベルがカンストできる! そうすれば最強の神性騎士に成れる!!」
騎士系の最強職業、神性騎士。
これにジョブチェンジできれば冒険者の中では最強を誇れる。
「あと少し、あと少しなのだよ! さあモンスターたちあたしの肥やしになれぇっ!!」
―― 血糖値、脈拍、心拍数に異常が認められます。すぐにゲームを中止して身体の安全確保をしてください ――
テンション上がって盛り上がって来たのにナビさんから緊急通知が入る。
あ、あれ?
あたしそんなに長時間ゲームしてた??
経過時間を見るともう連続八時間を過ぎている!?
「そう言えばおトイレにも行きたくなってきたような……」
現実世界のあたしがやばい!
あたしは慌ててセーブをしてログアウトをするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます