1-4ま、いっか
バグで西の大陸、しかも前作ではクエストの最後の方だった砂漠の塔の前にあたしはいる。
「マジですか? これって近くの街に行くまでにサンドワームや砂ピラニアが出る場所のはず…… 今の職業じゃヤバいじゃん!!」
この西の砂漠は上級者向けのエリア。
実際その辺にいるはずの雑魚モンスターも中級者向けエリアのボスクラスの強さを誇っている。
現在あたしの職業騎士では瞬殺の場所だ。
―― 騎士レベル100に到達しています。上級職にジョブチェンジしますか? ――
「するするするっ! 今すぐしてっ!!」
正直聖騎士でもちょっと危ない。
聖騎士も確かレベルカンストは100だったはず。
そこまで行けば中級エリアのボスくらいなら簡単に倒せるはずだけど、上級エリアではそれでもいつやられるか分からない。
しかも今のあたしは魔法が使えない!
「とにかく一旦聖騎士にジョブチェンジして! そんでもってステータス上げたら速攻で薬剤師まで戻って神官職とって!!」
こうなったらせめて回復魔法だけでも手に入れたい。
回復とか状態異常を直せるのは神聖魔法だけ。
自分が神官職のジョブをとればそれらの魔法が使える。
ほんと、有ってよかった「やり直しシステム」。
慌てて聖騎士にジョブチェンジしてステータスを上げる。
そしてすぐに薬剤師まで戻って神官職にジョブチェンジする。
―― 神官職にジョブチェンジしました。 規定レベルまで到達しています。上級職、大神官にジョブチェンジしますか? ――
「あれ? もう大神官になれるの? なるなる! 確か強力な神聖魔法とか使えるんだよね!!」
大神官になると死んだ仲間も生き返させる大神聖魔法があったはず。
MPほとんど一発で使い切っちゃうけど、この魔法があるのと無いのとでは全然違う。
……って、その魔法取得してもソロじゃ意味ないじゃんっ!?
―― 上級職大神官になりました。既定のレベルに到達しました。上級職賢者にジョブチェンジしますか?」 ――
「はいっ!?」
いやちょっと待って、確か大神官になってもレベル80まで行かないと賢者になれないんじゃなかったっけ?
神官から大神官になっただけでも相当なレベル上げが必要だと言うのにいきなり賢者になれるの?
「えっと、もう大賢者のレベル80になってるの?」
―― はい、ソロでベヒモスを倒す事により経験値はその個人に全て入ります。ですので取得した経験値は全てあなたのモノとなります ――
にゃんと!
前作と違い倒したモンスターの経験値は分配方式だったのか!!
そうするとソロで頑張れば頑張るほど経験値がざっくざくに入って来る?
「なるなる、賢者になります!」
―― 了解しました。しかしその前にセーブをお勧めします。あなたの体調は血糖値が下がりすぎています。このままでは健康に害が出ます。十分な食事をとる事をお勧めします ――
あ、そうか。
そう言えばお昼前だった。
そろそろリアルな私がやばいかも。
そう言えば、なんかお腹の下も張って来たような……
あたしは慌ててセーブをしてログアウトをしてから真っ先にトイレに駆け込むのだった。
* * * * *
「おい、優津子ゲーム機返しやがれ」
「おおっ? 星になったお兄ちゃんが帰って来てた!?」
あの後トイレに駆け込んで事無きを得てからお腹が空いたので下の階に遠征に行ったらお兄ちゃんがいた。
どうやら今日は午後の講義が無いのでお昼で戻って来たらしいけど、久しぶりに会うお兄ちゃんはむすっとしていた。
「せっかくバイトで買ったゲーム機を妹にいきなり取り上げられるとは思わなかった。お前さんて帰ってきたらいっつもゲームやってんだもん、何度強制終了してやろうかと思ったわ!」
「何よ、妹の裸を見ておいてそれくらい良いじゃない!」
がるるるるるぅ~
あたしがそう言うとお兄ちゃんはふっと寂しげな顔をする。
「成長しない妹の裸見てどこが楽しんだよ」
「お”いっ!」
思わず中指立ててしまった。
おにょれ不遜な兄よ。
この超絶美少女の生乳だけじゃ物足りないってのか?
「じゃあ、おっぱい触らせてあげるからもうちょっとあのゲーム機貸して」
「いや、おっぱいは要らんからゲーム機返せ」
「じゃあ特別サービスで生乳触らせてあげるから!」
「だからそんな有るか無いかの乳触って誰得よ!?」
「な”っ!! お、お兄ちゃんのばぁかぁああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ばきっ!!
「はうっ!」
キラーン☆
はぁはぁ。
この私が生乳触らせてやるって程譲歩しているのに何と言う言い草!
現役JKだぞ?
しかもぴちぴちの十六歳だぞ?
その高貴な生乳触らせてやるってのになんだあれは!?
「ふん、また星になったから当分帰って来ないわね。じゃあ当分あのゲーム機はあたしが借りておいてあげるからね!!」
あたしはそう言ってお兄ちゃんの名前が書かれたプリンも冷蔵庫から強奪してまた二階の自室へ戻るのだった。
* * * * *
セーブしておいた西の砂漠の塔の前に戻って来た。
すぐに賢者になってから「やり直しシステム」で大魔法使い、魔法使いへと戻る。
難儀なもので魔法使いまで戻らないと魔法が使えないって、そうすると大魔法使いは名前だけになってしまうのか?
そんな疑問をナビさんに聞くとこう答えられた。
―― スキル及び魔法の取得は出来ていますが、エラーが発生していて使用できません。最初の職業魔法使いを選択しそこから上級ジョブへとジョブチェンジをしてください ――
つまり基礎が出来ていないから上級の魔法が使えないと言う事らしい。
まあ、その辺は仕様なのだから仕方ない。
でも、これでとうとう……
「魔法が使える! しかも成長しているからMPもぐっと増えてる!!」
そう、私は聖騎士の姿でサブ職業賢者、忍者を取得しているので魔法をぶっぱなしながら強力な攻撃や俊敏な動きが出来、そして回復魔法も扱えると言うまさにオールマイティーなキャラへと進化したのだ!
「くふふふふふっこれだけ強く成ればこの西の砂漠を渡って砂漠の街に行けるわね! 確かあそこにはいろいろなアイテムがあるはずだからお金もたっぷりあるし買いあさるわよ!!」
ぐっとこぶしを握ってあたしは砂漠を歩き始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます