第7話 魔女学園(7)
事件の結末はマーヤには納得できないようです。
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10日の夕食の後、男爵様が今回の顛末を裏の話まで含めてマーヤへ話してくれた。
飛竜舎で起こった事件は、マーヤとアンナ先生から竜騎士学園の先生をしている領兵竜騎士へ伝えました。
学園長のイガジャ男爵サンクレイドル様も竜騎士学園の先生から聞いたそうです。
男爵様はその日の内に魔女学園長のおばば様と共にこの件の調査を始められ。
男爵様はかかわった竜騎士学園生を呼び出して調べ、おばば様はアンナ先生とマーヤの事情徴集です。
男爵様が呼び出して話を聞くときも、オイラートは「たかが男爵風情が!」と呼び出しにも応じようとしなかったので、領兵を使って寄宿舎から強制的に連れて来て尋問したそうです。
その日の内に、男爵様から侯爵様へ取り調べの内容と学園長としての判断と処分、そして処分の理由を書いた書類を送って侯爵様の確認を済ませれば処分する予定だったのですが。
「マーヤと大公の息子が絡む事件だったからと侯爵様が陛下へ知らせた事で、北の大公様が処分前にと横やりを入れて来たんじゃ。」
其処から時間が掛かったのは王様と北の大公の政治的なお話会いが在ったからだそうです。
それでも10日には処分が決まった。
オイラートの飛竜への餌付けが、王家の戦力を損なう行為だとされた。
その事は反逆罪に問える行為だが成人前の学生なのを考慮して処分は二人とも退学となった。
手助けした上級生4人も謹慎処分が下った。
アンナ先生へ切りかかった件は未遂の上に襲い掛かったブライアンがケガをしている事から、退学以外の処分は無しとなりました。
ブライアンの負傷は学園に備え付けの初級回復薬でその日の内に回復した。
マーヤとしては、単純骨折で済んだんだろうと感想を持っただけだ。
マーヤを突き飛ばした事は処分の内容から消えてました。
「マーヤは退学される前にせめてアンナ先生に謝罪の一つもしてほしかったです」
「おばば様から学園の帰り際に、退学させられて家へ帰されたって聞きました」
「そうだったのか、マーヤには悪い事をしたのう。」
「退学を告げた後も一悶着あったんじゃ。」
「オイラートが子供みたいに暴れての。」
「最後までぐずっておったので引きずり出して馬車に放り込んでやったわ。」
「ブライアンの方が処分は覚悟してたのか折れた剣を大事そうに抱えて馬車に乗っておったの。」
「そうでしたか、いったいオイラートはどうしてあんな事をしたのですか?」
「オイラートの動機か? 飛竜の子を餌付けして自分の飛竜にしたかったと言ってたのう。」
「飛竜は男爵家の物だと知った上で、手懐ければ自分へ譲ると思うような、思い上がったわがままな子供だった。」
そう言って男爵様はどうしようもないと首を振った。
「授業中なのにどうして飛竜舎へ入り込めたのですか?」
上級生まで引き連れて堂々と飛竜舎へ入り込むなんて常識が無いのでしょうか?
「新学期が始まった2日目が上級生による学園の説明を兼ねた学園内の見学なのを利用したんじゃ。」
「最初から飛竜舎へ強引に案内させて入り込んだ所からすると、入学前から狙っていたんじゃろう。」
「案内していた上級生の4人は、北の大公に仕える伯爵家と子爵家の息子らで、大公の息子の意向には逆らえなかったと調べでは言っていたよ。」
ここで前から疑問に思っていたことを聞いて見る事にした。
「アンナ先生に切りかかったブライアンは何故オイラートが何かする前にマーヤ達に襲い掛かって来たのですか?」
彼の行動はオイラートの意向を先回りして実行している様に感じました。
それが過激なまでに手の早い理由のように思います。
「ブライアンか、彼は大公家へ使える騎士の息子で7歳の頃からオイラートに仕えるいわゆる乳兄弟だよ。」
「今回はオイラートの学友として竜騎士学園へ一緒に入学した。」
「まぁそれが理由だろうな、彼にしてみれば単なる露払いで行っているんだろう。」
「オイラートしか見ていないから、足元の小石を取り除く様にマーヤを突き飛ばしたのさ。」
「彼は忠臣ではあるんじゃ、まだ若すぎて周りがみえて無いから暴走したんじゃな。」
「実際今回の様な事が在った時の身代わりでも在るしね。」
「処分を言い渡す時にブライアンからは、魔女見習いへの暴行はブライアンが行った者でありオイラートへの処分はおかしいとの意見が出てたけど。」
「オイラートの意向を汲んで行動したブライアンは実行者であって、オイラートが明確に意思を示している事は調べで明白な事からブライアンの意見はその場で却下したよ。」
「特に今回問題と成った飛竜の子への餌付けはオイラートが率先して実行しているからね。」
「侯爵様に報告した処分内容は、飛竜の窃盗未遂、マーヤへの2回の暴行、魔女見習いのアンナへの暴行未遂で停学処分と考えていたんじゃがなぁ。」
「ブライアンが腕を折った件は、マーヤの正当防衛によるブライアンの自損事故なのは明白じゃから問題無しとしたし。」
そうだったんだ、この時はまだ退学処分は決まってなかったんだ。
「事件の事を知らされた北の大公様が、マーヤとアンナへの謝罪をしたいから面会させろと言い出した事から
「北の大公様はマーヤの名を出したくない陛下に、謝罪と銘打って公に名前を出すぞと脅して処分を無しにしたかった様じゃ。」
「領土の割譲や建国時の経緯等元々問題を抱えてた所に今回の事件じゃ、オウミ国の政治問題に成ってしまった。」
「ほれ、マーヤの母親のラーファがオウミ国を出た事は神聖同盟もル・ボネン国も知る所だしの。」
「じゃが、娘のマーヤがオウミ国に残っている事は知られたく無い極秘事項じゃでの。」
「北の大公はその事実を表ざたにして良いのか? と陛下を脅したわけじゃ。」
「結局マーヤの事を秘密にしたい陛下は謝罪は無しで良いと決められたから、マーヤは今回の事件に一切関係ない事が決まったんじゃ。」
「それで済めば北の大公の勝利だったが、陛下の怒りの矛先が退学処分と言う形で北の大公へ跳ね返ったわけじゃ。」
「事件の発端が飛竜の子と言う陛下にとっても敏感な所だったのが悪かった。」
「だから退学した二人の代わりに別の二人を入学させる話は陛下が許さなかったと聞いとる。」
北の大公様が謝罪など言い出さなければ停学だったのに、言い出したばかりに反逆罪を持ち出され結果退学処分にされてしまいました。
ほんとダメ大公です。
停学+謝罪無しで退学にした王様も大人げ無いと思います。
マーヤとしては、アンナ先生への謝罪も無く帰って行った二人へは大いに不満がある。
しかし、カークレイ爺様から。
「今回の件はマーヤがかかわっている事を公にする訳にはいかんかった。」
「処分する側もされる側も落としどころが難しくてな、陛下の裁定でこうなったんじゃ。」
「マーヤには不満が在るじゃろうけど、どうか我慢してくれ。」
と言われてしまえば、ダメ大公と大人げ無い王様だと思っていても口にする事はできなかった。
王様からこの事件の通達が王家だけで無く3大公家へも出され、入学2日目で学園の規則を破り騒動を起こした学生を退学させた事を知らせた。
今後入学して来る学生に対し、学園の規則を守れなければ退学もあり得る事と、学生を送り込む側は学生を選ぶ際に厳しく審査するように通達した。
又、通達の中で改めて飛竜は全てイガジャ男爵家の財産であり、イガジャ侯爵家の采配する所だと言う事、
事件の後の騒動も魔女学園ではほとんど影響は無かった。
ただ、高等科の魔女見習いの間で金剛身の術を身に着けようと練習する学生が増えた点が、影響が在ったと言えるぐらいです。
アンナ先生は相変わらず遅刻に厳しいけど、拳骨はしなくなりました。
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退学処分は思ったより重い処分です、これもダメ大公と大人げ無い王様の暗闘せいですが、マーヤにとっては良かったのではないでしょうか。
停学だと処分明け後にマーヤがいじめられるでしょう、あの性格ですから。
次話は、マーヤが今回の件をラーファに話します、ラーファの旅立ちの準備も着々と進んでいるようです。
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