第5話 魔女学園(5)

 竜騎士学園で、波乱含みの幕開けです。

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 アンナ先生と連れ立って竜騎士学園の飛竜舎へと歩きます。


 病院を抜け広い庭園をしずしずと歩きます。

 竜騎士学園寄宿舎群、王家と3大大公家とイガジャ侯爵家(仮)の宮殿と見紛うばかりの寄宿舎を過ぎ。

 竜騎士学園の建物を横目に飛行場を飛竜舎へと横断します。


 竜騎士学園の飛竜舎は現在1頭の飛竜と6頭の飛竜の子がいる。

 他の2頭はダンケル城塞で、竜騎士隊と共に防衛戦を戦っている。


 飛竜舎は飛竜を飼育している以外に、領兵竜騎士科を併設している。

 魔女学園の飛竜舎は飛竜の飼育だけだが、竜騎士学園は飛竜舎に併設された建物で領兵の竜騎士育成が行われている。


 竜騎士学園の元となった、魔女候補が受けた竜騎士訓練を引き継ぐ現在の竜騎士科の内容と違い、領兵竜騎士が受ける学習は一段と高度な内容に成って居る。

 イガジャ領竜騎士隊隊長のレン兄やイガジャ侯爵夫人のアリス姉が受けた竜騎士見習いの内容をそっくり受け継いだ学習内容に成って居る。


 現在8名の領兵が領兵竜騎士科に所属して訓練に学習に励んでいる。

 今は授業中なので飛竜舎の中は飛竜以外に人はいない。


 マーヤが近づくと、マーヤに気が付いた飛竜のメスのティーが「ピーッ、ピーッ、ピーッ」と鳴いてマーヤに警告してくる。


 飛竜がやかましく鳴いて騒ぎ出したので、飛竜の子まで落ち着かなく騒いでいる様だ。

 マーヤは飛竜のリーダのままなので飛竜が群れに起きる事件が在ると知らせてくるのだ。


 「相変わらず魔女候補は、飛竜にモテるのね」

 アンナ先生はマーヤが近づくと騒ぐ飛竜を知っているのでからかっているのだ。


 「ティーは私に飛竜の子を叱ってほしいみたい、いま飛竜の子がいるから警戒心が強いのよ、私に来るのが遅いって言ってるわ」

 「どうせ巣立ちで子供たちがティーの側に近寄らなくなった不満をぶつけたいだけなのよ」


 飛竜は巣立つと、その群れの子が自然に集まって行動するようになる。

 親の行動は分からないが、飛竜を育てたマーヤは飛竜の学校だと思っている。


 今まで飛竜達の先生は親代わりのマーヤだったが、今はティーが親の代わりをしている。

 処が、ティーの警告は本当の警告だった。


 飛竜の子が騒ぐ音以外に人が呼ぶ声が聞こえる。

 急いで飛竜舎の中へマーヤとアンナ先生も入って行った。


 飛竜舎に竜騎士学園の学生が数人纏まって飛竜の子をかまっている。

 何か食べさせている様だ。


 餌付けは群れの統率を乱す元なので、係の者が決められた時間に出す以外は、竜騎士が騎乗した後でお疲れ様とご褒美で食べさせるぐらいしかしていない。

 マーヤが近寄って飛竜の子達に念話で彼らから離れる様に強く言い聞かせた。

 『飛竜の子ら! 食べてはいけない! 人から離れる!』


 でも遅かった様です。

 「ピーピーピルル」


 一匹のメスが「甘い、甘い、好き」と離れようとしない。

 マーヤは甘いと鳴いているのをいぶかしんだ。

 飛竜の子には果物で甘めの物は食べさせた事はあるけど、これほど執着するような事は無かった。


 急いで飛竜の子の側へ近寄ると、竜騎士学園の学生の一人が、手に持った何かを飛竜の子に食べさせた。


 「待って! それ以上甘い物を食べさせないで!」


 マーヤの制止の言葉を聞いて、飛竜の子に何かを食べさせていた男子学生がマーヤの方を向いた。

 「お前は誰だ、そしてなにゆえ俺の行動をじゃまする?」


 「それは砂糖ですか?」

 マーヤは男子学生が手に持っている物を見て飛竜の子が甘いと鳴いた意味が分かった。


 周りにいた一人の学生がマーヤの側に来てマーヤを突き飛ばした。

 マーヤは、とっさに身体強化の魔術行使(金剛身の術)を使って体を衝撃から守る。


 「グッ! 硬い!」

 身体強化(金剛身)したマーヤの体は固かった様だ。


 アンナ先生が駆け寄って突き飛ばされたマーヤを抱き起した。

 「大丈夫? 何処か痛いところとか無い?」


 「うん、金剛身の術(身体強化の魔術)をとっさに使ったから、ケガは無いよ」


 アンナ先生が突き飛ばした学生に向かって抗議した。

 「何をするのです、幼い子を突き飛ばすとは危ないでしょう」


 年恰好からすると、餌を上げてた学生と同じくらいの学生は、マーヤとアンナ先生を睨みつけると。

 「うるさい、オイラート様への侮辱は見過ごせん、何なら切り捨てるぞ。」


 侮辱も何も、本来飛竜舎に居るはずもない学生が飛竜舎に居て、飛竜の子へ餌付けするなど許されるはずが無い行為だ。

 アンナ先生があまりな言いように声を張り上げて学生に言い返した。

 「馬鹿な事を言うんじゃないわよ、見た所 竜騎士学園の学生のようだけど、飛竜舎へは授業でしか入れないはずよ」


 「村人風情がご子息のされる事に楯突くなど、許さんぞ!」

 更に腰の剣に手をやって、今にも抜きそうな勢いです。


 不穏な状況にマーヤはこのまま身体強化(金剛身)を解かず、見守る事にした。

 ゆっくりと起き上がり、何時でもアンナ先生を守れる位置取りをする。


 剣を抜いたら、危険なので剣を腕で止める覚悟をして、相手の動きを見極める。

 身体強化(金剛身)なら、剣で切られても止めれる。


 学生の剣ぐらいなら、腕が少し切られても跳ねのけられるかも?


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 一発触発の事態と成ってしまいました。

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