第4話 魔女学園(4)
魔女学園に通うマーヤの日常風景のはずです。
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護身術で卒業認定を貰ってしまった。
早めに終ったので、水場で上半身裸になって体を拭きます。
領兵の人達はまだしばらく訓練が続きます。
9月になると夏の暑さが弱くなりますが、まだまだ水で体を拭くのは気持ち良いです。
いきなり耳を引っ張られた。
「いたたたたっ」
アンナ先生がマーヤの剥き出しの耳を掴んで引っ張っています。
痛みと共に昨日おばば様に耳を引っ張られたことを思い出す。
マーヤの耳が長いのは絶対引っ張られるから長いんだ。
「魔女っ子、あれほど気を付けて、見られないようにしなさいと言ってたのに」
「あっ、ごめんなさい、汗がひどかったので拭きたくなったの」
そうでした、魔女学園の生徒に対して秘密にしている事があるのです。
特にハイエルフだと言う事は知られない様にしています。
エルフの血が入っていて成長が遅い、くらいは思われているかもしれません。
「気持ちは分かるけど、魔女候補は狙われている事を忘れちゃだめよ」
「それに女の子だから肌は隠しなさいね」
「上だけなら男の子と同じだよ」
言った瞬間、不味い! と思った。
この減らず口の癖は、マーヤにとって被害が一番多いのだ。
アンナ先生の顔つきが変わるのが分かりました。
「へぇー、男の子と同じなんだ」
「じゃあ、これから食堂で上半身裸で食べても平気なんだね」
「領兵の宿舎じゃ、夏の間半裸で過ごすのは多いからね」
「ごめんなさい! 直ぐに服を着ます」
素早くあやまります、アンナ先生は生徒への罰を申し渡す事が出来るので、言った事をさせる事だって出来るのです。
上半身裸でご飯を食べるのは嫌です。
この所油断しすぎです、空間把握で周りを把握しているのに、アンナ先生が近づいても気にしていませんでした。
この魔女学園の中に敵は居ないので警戒する必要が無いのは確かですが、叱られる事まで予期する事は難しいです。
ラーファ直伝の温風魔術を行使して、素早く体を乾かします。
着替えの服を着てアンナ先生と食堂へ一緒に行きます。
「先生どうして私の所へ来たの?」
いつもはクラスの皆と一緒に食堂で待ってるのが普通なのに、わざわざ訓練室まで来たのは何か理由があるはずです。
「飛竜の子を魔女学園へ連れて来る前に慣れてもらう必要から、私が魔女候補と竜騎士学園へ昼から行く事になったのよ」
「それで、早めに魔女候補に伝えようと思ってね」
食堂では話し声が、声を大きくしないと伝わらない事が多いので、迎えに来る序(ついで)に話しに来たようです。
アンナ先生のような魔女学園の初等科の先生は、高等科のイガジャ領出身者が先生をしています。
初等科の学習指導は昼7前(午前)だけで、昼7後(午後)からは実習になって居ます。
高等科の昼7前(午前)は魔術の講義がおばば様やイザベラたち魔女によって、イガジャ領以外の高等科の生徒へ補講する時間になります。
この8年間でイガジャ領出身の魔女見習いも候補たちも、魔術をしっかり身に着けています。
他の領から来た魔女見習いは、魔術の学習と魔力を増やす努力をしないと追いつかないのです。
いずれ人材が育ってくれば、初等科だけでなく高等科の先生も専属の人がするようになるでしょう。
食堂は寄宿舎にあります。
魔女学園の生徒と職員が全員同時に食べれるだけの広さと設備があります。
食堂へ入ると、「ガチャガチャ」と洗い場の音が聞こえてきます。
空の食器をトレイに乗せて配膳の棚にある料理を食器に自分で食べれる分だけ盛り付けます。
トレイも食器も木で作られてて、魔樹の樹液が塗られているので軽くて落としても割れません。
マーヤの様な背の小さい子のために料理の前に踏み台を置いてあります。
「ジャッジャー」、「グツグツ」と料理を作る音がします、配膳の棚の奥は厨房です。
「こっちは空になったから、代わりを持って来て!」、「グヤーシュ行きまーす。」などの厨房内の会話も聞こえてきます。
今日はキノコと野菜の炒め物とグヤーシュシチュウです。
パンは黒パンとジャガイモのパンケーキが定番でいつも置いてあります。
マーヤはパンケーキが油が多いので苦手です、味そのものは美味しいのですが表面が脂っこいのです。
お皿とスープ皿に炒め物とグヤーシュを少量取り、黒パンを一つ載せます。
アンナ先生はマーヤの3倍ぐらいの量をお皿とスープ皿に入れ、パン皿にパンケーキを3枚も取っています。
オウミ国も昔は一日2食だったそうで、昼9時(午後2時)から昼11時(午後4時)ごろに取る正餐の名残でお昼ご飯がとても量が多いのです。
今では一日3食が村人でも普通になって居ますが、貴族の中には未だに一日2食で生活している人も居るそうです。
最後にお茶が用意されています。
カップにハーブティーを大きなヤカンから注いでトレイの端に置きます。
食器を乗せたトレイを持って食べようと食堂内を見ると、「初等科2年の先生と2年生、こっちだよう」と声が掛かります。
2年生の皆が一つのテーブルを占拠してマーヤ達を招いています。
背の高い椅子を持って来て座ります。
皆が席に着いたので、今日も食事への感謝を祈ります。
「「「「「「「日々の食べ物をお恵み下さる、天と地の神々に感謝します」」」」」」」
別に神様の名前を知っている訳ではありませんが、魔女の住む地域では多神教で天と地に住む神々に感謝をささげて何かを始める習慣があります。
「さあたべるぞ!」、「いただきます」
最も背の高いカーシャ(カトルーシャ)とマーヤが声を出します、アンナ先生を含めて他は無言で食べ始めています。
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次は竜騎士学園で飛竜達のお世話をします。
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