第2話 魔女学園(2)

 魔女学園に通うマーヤとラーファの朝の風景です。

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 マーヤは人族ではありません、大陸の外、聖樹島に住むエルフ族です。

 生まれる前に住んでいたダキエ国が滅んで、オウミ国へ逃げてきました。

 母のイスラーファは次期エルフの女王でハイエルフでしたが、今は名を失くした魔女だそうです。


 マーヤは逃亡中に洞窟の中で生まれました、名はマーヤニラエルと言います。

 今は、魔女候補のマーヤで、年は7才の女の子です。


 父は死んだと聞きました、母はイスラーファ、何時もラーファと呼びます。

 領主の館に部屋をもらって住んでいます。


 マーヤは母親のラーファが、この国オウミから出て行く決心をした時、カカリ村に残る事にしました。

 ラーファはカカリ村から200ワーク(300㎞)離れた王都ウルーシュに住んでいます。


 離れていてもラーファとは神域で毎日会えるのは、二人以外には秘密です。

 神域は見た目からインベントリのスキルだと思われているようです。


 マーヤの魔女学園の生活は、朝、神域の中にある家で起きた時から始まります。


 顔を洗い、着替えます、マーヤは護身術を習っているので、身軽に動ける半ズボンと伸縮する素材の繊維で出来たTシャツを作って着ています。


 朝ご飯はラーファと一緒に食べます。

 神域に育った野菜と家畜から作ったハムやベーコン、チーズに卵と牛乳が食卓に並んでいます。

 それに神域の麦から作った黒パンを薄くスライスした物、ラーファの好きな麦焦がしのお茶もカップに注いであります。


 ラーファも王都の部屋から夜神域に入り、中の家で寝て、朝出かける暮らしています。


 「マーヤ、今日は何をするの?」

 ラーファはマーヤが今日することを、朝食の時に「何をするの?」と何時も聞きます。


 「今日は、護身術を習って、お昼ごはんの後から飛竜舎で子竜たちのお世話をするよ」


 「お友達は何をするの?」


 「クラスの皆は字の練習と計算で掛け算と割り算を、今日から習い始めるそうだよ」

 「後、お昼からの実習は魔石への魔力の充填だよ、最低でも1つ充填できることが目標だって」


 魔女学園の立ち上げにおばば様と共に苦労したのはラーファでしたから、気になるのは分かります。

 でも、マーヤが受けている授業以外の事まで知ろうとするのは少しうるさく感じます。


 さっさとご飯を食べてしまい、出かける事にします。

 昨日は2年生初日なのに8月の休みと勘違いして遅刻してしまいました。


 おばば様とアンナ先生に怒られた事はラーファには、秘密にしています。

 知られたら、お尻をひん剥(む)かれて叩(たた)かれるに違いありません。


 ラーファが怒ると、怖くていつまでもヒリヒリと痛いのです。

 回復魔術が行使できるようになってからは、叩(たた)かれた後で痛むお尻へ回復魔術を行使する事は禁止されてしまいました。


 今日は授業は無くて護身術と飛竜のお世話だけなので着替えを持って行けば良いだけです。

 食器を片付けて、部屋へ戻り着替えを用意します。


 学園からの連絡事項などがあるので筆記用具は最低でも持って行きます。

 筆記用具やタオルに着替えを背負いカバンに詰めて、白いフード付きのロープをまとえば行く用意の完成です。


 まだ食堂でご飯を食べているラーファに行ってきますのキスをして、家を出ます。

 ラーファは食べていた卵の味と、どこかなつかしいかすかなお乳の様な臭いがします。

 神域の庭園を駆けて行き、門まで直ぐです。


 神域を抜ければ領主館のマーヤの部屋に出ます。

 部屋を出て、お茶室へ向かいます。


 お茶室にはカークレイ爺様がボーデン奥様とお茶を飲んでます。

 サンクレイドル男爵様とエイシャ奥様はまだ食事中なのか部屋にはいません。


 カークレイ爺様とボーデン奥様に朝の挨拶をします。

 「おはようございます、カーじい、ボーばあ


 今のマーヤはラーファが王都へ移住したのでカークレイ爺様の養女扱いになっているそうです。

 呼び名も「カーじい、ボーばあ」と呼ぶように言われています。


 バタバタと二人に近寄って、「行ってきますのキス」を二人にします。

 二人もキスを返してくれます。


 カー爺様はタバコの臭いがします、ボー婆様は甘い花の匂い? がします。

 「いってきまーす」、「「いってらっしゃい」。」


 今日は遅刻の心配はしなくてよさそうです。


 領主館の下り階段を今日は歩いて降ります。

 坂下の門番には今日は余裕であいさつします。

 「おはよう!」


 「おはよう魔女候補殿」


 飛竜舎、飛行場、竜騎士学園、庭園と豪華な学生寮を通り、通用門の領兵に挨拶します。


 「おはよう!」


 「おはよう、魔女候補殿、病院内は静かにな。」

 今日の門番さんは穏やかに挨拶を返してくれます。


 病院の先の庭園を抜け、坂道に出ます。

 坂の途中で魔女学園の敷地を見ます、今日はおばば様はいないようですが油断はできません。


 おばばは空間把握をくぐって、いきなり現れる事があります。

 闇魔術の空間の隙間への干渉を使っているのだと思います、おばばはシノビのスキルだと言っています。


 耳の痛みがぶり返すような気がして、おとなしく門から入る事にします。


 魔女学園は竜騎士学園の城郭じょうかくを壁にして飛竜舎が建てられているので、飛行場をへだてた反対側に魔女の城郭じょうかくにあった魔女見習いや候補の宿舎を取り壊して作られました。


 3階建ての病院と似た白い四角い建物です。

 土魔術で骨組みを作りコンクリートでおおった、頑丈な建物で教室だけで21室、他に教員用の部屋や実習室などもあり40以上も部屋があります。


 更に別棟が平行して建てられていて、魔女見習い41名、魔女見習い候補33名がお世話する人と暮らしている宿舎です。

 結婚してカカリ村から通学している人も何人かいるので魔女見習いで宿舎に住んでいる人はもう少し少ないです。


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 イガジャ領に巣分けして来た飛竜を討伐して卵を手に入れた事から竜騎士学園が作られています。マーヤの母イスラーファが飛竜退治でも竜騎士学園の創設にも深くかかわっており、マーヤは飛竜達と卵の時から一緒に育ちました。

 イスラーファは大魔女として出てくるおばばとは、教え教えられる仲なので魔女学園には最初からかかわっていて、学園と魔女見習いの学習内容の大半はイスラーファが提供した。

 竜騎士学園の敷地はマーヤとイスラーファが土台から作ったのは知る人ぞ知る事実です。


 魔女学園の授業が始まります。

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