第4話 超弩級ベヘモス攻城戦


 一大スペクタクルだった。

 今現在進行形で。

「うわああああああああああああ!?」

 巨大な獣が城の壁に備え付けられた棘に体当たりをかましていた。

 その棘の

「これバリスタって言ってねー、そのうち射出されます」

「はぁ!?」

「3,2、1――」

 GO!

 俺達は棘ごと巨大な獣の背に射出された。

 突き刺さると同時に着地する。

「し、死ぬ!?」

「あっははー死なないよー、お兄ちゃんってばおおげさー」

 そら防御力カンスト勢からしてみれば痛くも痒くもないのだろうが。

 こちとら平々凡々のB級冒険者である。

 なにが死に繋がるか分からない。

「この棘、大量に刺さってるけど、ダメージになってるのか……?」

「なってないなってない、一億あるHPのうちの十分の一も削れてないよー」

「一億……?」

 俺の体力は確か百五十だ。

 帰りたい。

「どうする? 全てを消し去る白き光オーバー・ザ・リライトする?」

「……やってやらぁ!」

 俺は腰から剣を抜き出すと真っ直ぐ構えた。

 思い切り地面に突き刺す。

「ファイア!」

 炎魔法を唱える。

 剣が炎を纏い切っ先からベヘモスの体内に向かって炎が迸る。

「どうだ!?」

「ノーダメ」

「No!?」

「私がやるしかないみたいだね、はあ、詠唱って舌噛むから嫌なんだけどなぁ……」


 ――夢見るままに待ちいたり、其は白銀の鍵、五芒星に瞳の印、星辰は真っ直ぐ並び立つ、降り立つ神の名は「■■■■■」赫き身体は、燃え上がる化身、闇夜を照らす一等星、旧神、外神、そして此処に新たな神を記そう。IFの記憶、改竄開始――落ちる流星は煌めき踊る滅びの雨!


 空が割れた、比喩抜きで。

 堕ちる星は雲を割り、空を割り、ベヘモスへと落ちた。

 圧し潰した。

 勿論、俺らもその上にいたわけで。


「死ぬ死ぬ死ぬ!?」

「ヘーキヘーキ、自分の術で死ぬ馬鹿なんていないよ」

 極光。

 後に暗転。

 するとバーに戻っていた。

「あれ……? ゆ、夢?」

「依頼達成したからバーに戻ってきたんだよ、さ、依頼報酬もたんまりだよ。帰ろ」

「帰るってどこに?」

「魔王城だけど」

 俺、勇者側じゃなかったっけ。

 そんな疑問を呈する暇もなく。

 バーの扉は暗雲立ち込める城へと繋がる。

「……なんだかなぁ……」

「誰かおらぬか! 魔王の凱旋である!」

 がらんとした魔王城。

「むー、みんな出払ってるみたい」

「その方が気楽でいいよ……どうせ、その、身内、なんだろ?」

「ん? ああそうだね、この世界には身内しかいないよ。夜鷹町の認知世界、それがこのオリュンピアだからね」

 認知世界、人の認識によってねじ曲がった世界。

 その集合体。

 それがこの異世界。

 俺はそんな場所で何を為すべきなのだろう。

 疑問は尽きぬまま、俺は妹(魔王ハデス・イン・ザ・ギャラクシー)に案内されるまま寝室に案内されると疲れが出て眠りについた。

「おやすみお兄ちゃん」

「んごぁ」

 俺はすっかり忘れていたんだ。

 俺は勇者で。

 此処が魔王の城だって事を。

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俺が勇者で妹が魔王ってなんだこれ 亜未田久志 @abky-6102

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