第2話
金曜日は祝日で、学校は休校だ。
本当ならサークル活動があるのだけれど、事故の後ということもあって、サークル活動もしばらくはお休みになった。
そう、あの列車事故は、あたしたちの生活にも多かれ少なかれ影響を与えていた。
大学で仲良くなった友人の何人かが、あの事故で怪我を負ったのだ。
それだけではない。
近所の幼馴染も、あの事故に遭ったのだ。
鉄道会社の人たちは、連日うちの近辺にやってきては所かまわず車を停めて、不快な音を立てたり煙草の吸殻を投げ捨てていったりしている。
そんなことを思っていると、表から車のドアを開閉する耳障りな音が響いてきた。そういえば、少し前から黒い高級車っぽい車が玄関先に停まっていたような気がする。
『……まったく。こっちだって忙しい中謝りに来てやってるって言うのに、全然出ててきやがらねぇな』
声が聞こえてくる。知らないおじさんの声。スーツを着た、偉そうな感じの人が数人、車のドアを開けたり、閉めたり、乱暴な音を立てているのが窓越しにちらっと見えた。それに、煙草。玄関前に車を停めたまま、あのおじさんたちが苛々と煙草を吸っては捨て、吸っては捨てしているのが見えている。
『あ、もしもし?』
おじさんの声が聞こえてくる。携帯でどこから通話しているらしい。
『……いや、まだなんですよ。忙しい中来てやってるのに、ドア閉めたまま居留守使いやがるんですよ。ったく、参りましたよ』
聞きたくないような罵詈雑言を並べ立て、おじさんたちはまたバタン、と車のドアを閉める。
気を紛らわせようとテレビをつけると、列車事故のニュースが流れていた。あたしが乗るはずだった、列車だ……。
バン、バタン、とドアの開閉音が響く。
ママがそっとテレビのチャンネルを変える。
たまりかねたパパが静かに表へ出ていった。
「あんたら、他人に迷惑かけに来たのか、それとも謝りに来たのかどっちなんだ」
いつになく厳しいパパの声が聞こえてきた。
「片付けてくれ」
そう言って、玄関先に投げ捨てられた煙草の吸殻を掃除させている。
「うちには関係のないことだから、車はここに停めないでくれ。ここから数百メートルほど先に駐車場があるからそこに停めればいい。次にここに停めたら警察を呼ぶぞ」
掃除をするおじさんたちに、パパが伝える。
すっごく怒っている。
車をうちの家の前に停めたこと……では、ない。
おじさんたちは決まり悪そうな顔をして、それでもどこか気に入らないといったムスッとした表情のまま、車に乗り込んで行ってしまった。
「また戻って来るのかねえ」
おばあちゃんがポツリと呟く。
「そりゃあ、来るだろうな」
おじいちゃんが静かに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます