第5話 スカトロンの山道

「メチャイカセ隊の戦闘能力は我々の10倍程度と考えてくれ」


学校をサボって俺たちは森の中の廃屋で作戦を練っていた。


「ここがメチャイカーセ洞窟、分かるな?イカセ隊の本拠地」


地図を指さしながら場所を示していくナーニャ。


「次にここだ。スカトロンの山道。一番の難関ポイントだな。道幅が極端に狭くなっていて、この下はイキショーンの川が流れてる。飲まれたら最後死んでしまい死体が臭くなることで有名だ」


人間って怖いよな。


もう慣れてきたわ俺は。


こんな単語聞いてもなにも思わなくなってきた。


「洞窟まではこのルートを通る必要がある。しかしイカセ隊もまた厳重に警戒してるはずだ。どうやって洞窟まで向かおうか」


俺は地図を指さして口を開く。


「この山道だけど、ちらほら隠れられる所があるよな」

「なくはないが」

「夜に向かえばいい。黒い服を着て視認性を悪くして、巡回兵がきたら近くの茂みに隠れてやりすごす」

「なるほど……だが。私は隠密は苦手だ。私の体からは淫乱フェロモンが流れてるからな。それで気付かれる」


俺はナーニャの視線を受けて頷く。


「問題ない。俺についてこい。俺のスぺールマのにおいでかき消してやる」



スカトロンの山道。


この道は全長3キロくらいの道だが、左側が崖になっててその下は川が流れてる。

んで、右側は断崖絶壁、上が見えない。


しかし、ところどころに岩があってその岩陰に隠れられるって感じだ。


「雨が降ってんな。好都合だ」


突然天気が悪くなって雨が降り始めた。


俺たちは今から隠密行動をする。

だから視界が悪くなるのはこちらに有利に働くだろう。


俺はナーニャに拳を突き出した。


「なんだ?」

「なに、始める前の挨拶みたいなもんさ」


俺としてはコツッと拳を当ててくれたら良かったんだが。


ムニュッ。

胸を押し当ててきた。


「メスマンの誇りにかけて」


んな誇りにかけなくていいよ。

そう思いながら俺は山道を歩き始めた。


月の明かりだけが頼りだ。


俺もこうして自分でやって見るまで分からなかったけど、月明かりが意外と見やすいんだよな。


作戦を開始して3分経過したくらいの頃。


スッ。

先に右腕を横に出して近くの岩陰を指さした。


「隠れろ」


コクリと頷くナーニャと一緒に岩陰に隠れた。

すると話し声。


「ここいらの人間も大分捕まえ終わったな。後はレイ〇して終わりだぜー」


そう言いながら俺たちの方に向かってくるオークみたいな生き物が見えた。


全身裸で立派なモノを持っておられる。


(たしかにあんなもの突っ込まれたら窒息死するな)


この世界の男根は非常に危険な代物だ。


俺はナーニャの顔を見た。

そしてボソッと呟く。


「殺れるなら殺そう。闇討ちが失敗したときは覚悟しといて」

「うん」


俺はそのままオークが歩いてくるのを待ってた。


「ぶひひー。カレリアとかって女は特に上玉だなぁ。あれは最後のデザートってわけさ」


そう言いながら俺たちの横を通ろうとした時


グッ!

足に力を入れて岩陰から出ると、タックルでオークを影側に突き飛ばした。


崖側の方を歩いてくれてたから簡単に突き落せた。


「ぶひっ!」


空中に放り出されてから俺の顔を見るオーク。


「き、貴様!人間!しかし、なんだこの攻撃力は!」

「じゃあな。オーク」

「ぶっひぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


落ちていくオーク。

その下はイキショーンの川。


落ちれば最後臭い死体になるだけの場所。


俺はオークが見えなくなるまで見送った。


しばらくすると真っ白な柱がビュルルルと噴き上がってきた。

たぶん撃墜のエフェクトだと思う。


(大乱交スマッシュブラジャーズみてぇ)


この世界には一応経験値とかっていう概念があったはずだが、即死ギミックを使ったからさすがに貰えないんだろうか?


と、不安になったけど


【経験値を45入手しました】


と、出てきた。

なるほど、即死ギミックを使っても経験値は貰えるということか。


それの確認はできた。


「さぁ、行こうか」


ナーニャの顔を見て俺は洞窟への道を進んでいく。


その後も順調に進んで行った。


殺せるときは殺して、無理そうな時は左側の崖に手だけで捕まって視界に入らないように移動して……。


「あれか」


雨が降ってるせいで遠くからは見えなかったけど近付くにつれて、洞窟とやらが見えてきた。


どうでもいいけど序盤の展開からは想像もつかない程のシリアス展開じゃねぇかよ。


正直言うとさ。

メチャイカセとかふざけた名前ばっかなせいで、もっと軽いノリで進むもんかと思ってたけど


(気が抜けんなこれじゃ)


まぁいい。


「入るぞ」

「うむ」


俺が先導して洞窟の中に入っていく。


すると、イカみたいな匂いがその瞬間鼻に入ってきた。


「……くっさ」


壁を見ると白い液体がかかってたりそれがカピカピに乾いてたりする。


「ここがイカーセの洞窟だ」


そして、ここにメチャイカセ隊の隊長であるイッカーセがいるらしい。


ふぅ……


「イッカーセってのはどれだけ強い?」

「イッカーセはイカセ隊ナンバーワンのチ〇コ力を持ってる」


謎の力を出してくるな。


なんだよその力は。


「はぁ、それで?」

「奴のチョー勃〇技であるチンボッキングを喰らわないように注意しろ」


どんな技だよそれは……。


まったく見当もつかないけど、こいつらは知ってるんだろうか。


「ところでチンボッキングってのはどんな技なんだ?」

「チンボッキングはイッカーセの必殺技。おそろしい技だから見ないようにして」


へいへい。

そう思いながら洞窟内を進んでいると。


横穴から


パンパンパンパン!


そんな音が聞こえてきた。


ナーニャと目を合わせて俺はそっちの横穴を壁から少しだけ乗り出して目をやった。


「うぎゃははははは!!!こいつの穴は最高だぜ!!!!」

「おら!もっとしゃぶれよぉぉぉ!!!」

「……」


オーク2匹が一人の女の人で遊んでる光景がそこにはあった。


ギリッ。

歯を食いしばるナーニャ。


「あれがイカセ隊の戦い方。くっ……おそろしいものだ……」


(たしかにな)


ここに来る前までは笑ってたよ。

どんな戦い方だよって……でも実際に見たら笑えなくなってきた。


「おい、ナーニャ」

「どうした?」

「先に進め。カレリアを探してきてくれ、俺はあの人を助けてお前を追う」

「……メスマン戦士の誇りにかけて」


そう言って先に洞窟の奥に走っていったナーニャ。


オーク共は女の人に夢中で俺に気付いてない。


なら、簡単だ。

勝負は一瞬で決める!


ヌラリ。


闇夜から現れて。


(フッ!)


ザン!


オークの首を切り飛ばす。


2匹まとめて。


【経験値を90獲得しました】


それを確認してから女の人を抱き起こす。


「おい、しっかりしろ」


裸の女の人に上着を貸しながら声をかける。


「あ、あなたは……」

「名乗る名前なんてない」


ベニスなんて名乗りたくない。


うつろだった目が俺を見るときには光を取り戻していた。


「あ、ありがとうございます、私イカセ隊に殺されるところでした」


どうやらそのようだな。


「ここにいてくれ。必ず迎えに来る」


俺はそう言い残して横穴を出ていく。

ナーニャのやつを追わなくてはならない。


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