第3話 魔剣の話

家に帰るとメイドが迎えてくれた。

ちなみに家の場所はナーニャに聞いた。


メイドに名前を聞くのはやめよう。

この世界にマトモな名前をした奴って多分出てこないから。


俺これでも必死に我慢してるけど、ヴァギナーニャを連呼された時は笑いそうになったんだぜ?


「お母様が呼んでおられます」


メイドにそう言われて俺は母親の待つ部屋に向かっていった。


なんで部屋の場所が分かるか?って?


壁を見ろよ。


【↑おかあさまのおへや♡】


わざわざこうやって看板で案内してくれてるんだぜ?


分からないわけがない。


そうしてお母さんの部屋までやってきた。

メイドがいたってことはそこそこ高貴な家ではあると思う。


コンコン。


「失礼します」


親しき仲にも礼儀あり、だっけ?

って訳で。いつもより丁寧にノックして声をかけると。


「はぁ〜い♡ベニス〜。いらっしゃーい」

(帰りてぇ〜)


そう思いながら俺は扉を開けた。


中にいたのはまだ年端もいかないだろう女。


本当に俺の母親なんだろうか。これ。12才くらいの幼女に見えるのだが。


「おかあさん心配してたのよベニちゃん学校でいじめられてないかかなぁとか」


あのさぁ。


(はぁぁぁああぁあぁぁぁ……)


お母さんじゃねぇだろこれ。


見た目だけなら俺より年下じゃないか。


そう思いながら


【ステータスオープン】


心の中で呟きこの人のステータスを開けた。


名前:オーマコーン

種族:エルフ

レベル:320

年齢:処女

状態:処女

スキル:処女

性格:処女

タイプ:処女


(こいつのステータス設定したやつユニコーンかよ)


子供出産済みの処女とかすげぇよな。


こんなふざけた奴に敬語使う必要あるのかどうかは分からないけど一応敬語で続けよう。


「なんの用ですか?」

「チンスタンティノープルが陥落しました」


ズゾゾゾゾー。


お茶を飲みながらそう言ってくるおかあさま。


(あ、はい。そうっすか)


「魔王の襲来によって陥落したのです。メスマン帝国もまた甚大な被害を受けました。聞きましたか?あの生まれてからイッったことがないと呼ばれていたメスイキシスターズがイカされたという話を。彼女たちは『絶対にイカない』ということで有名だったのですが」


なんだろう。

この人達俺にわかる言語を話してくれてるはずなのに、一向に分からないんだよなぁ。


原作でも日本語書いてるはずなのに分からなかったから、まぁこんなもんなんだけどさ。


「世はまさにピンチという状態ですね。いやーん困っちゃうー」


困ってるならもっと困ってるように演出してくれよなー。


「で?」

「本題ですが」


コホン。

咳払いをひとつ。


「一週間後。私はここで産みます」

「なにを?」

「魔剣をです」


(あー、もう1回言ってくれ。魔剣を産む?どうやって)


もうほんとに頭が痛いんだって。


意味が分からないことを口にしないでくれほんとに。


原作ではベニスが魔剣を入手するまでの過程は省かれてたから知らなかったけど、ここでも訳の分からないことが起きているようだ。


「魔剣継承の儀式をここで行います。私の子宮から出た魔剣はあなたの手に渡ります」


生々しい描写いらねぇから……。

もう何が何だか分からないんだよ。


「はぁそれで?」

「魔剣に飲まれないように日々の訓練を怠らないでくださいね」


そう言って俺に下がれ言ってくるお母さん。


俺もこの部屋にいたくなかったので出ることにした。


誰かこいつらの言葉を翻訳して俺に教えてくれ。



その日の夜。

俺は自室で考えていた。


「……はぁ……なんでよりによってここなんだよ」


起こってしまったものは仕方ないことではあるがそう思わずにはいられない。


俺の周りの人間全員やばいんだもん。


マトモな要素が何一つない。


ヴァギナーニャ。


オーマコーンはともかくとしてヴァギナーニャはもう名付け親に悪意があるとしか思えんわ。


てか


「俺のベニス・ションベーンもひどいけどな、ははっ」


いや、笑い事じゃないんだけどな。


でもさ。


俺の名前、ひょっとして女の子に呼ばせると背徳感が毎回感じられるんじゃないか?とも思う。


「いや、どうでもいいか。そんなことはいいや」


とりあえず確認することがあるよな。


「ステータスオープン」


俺はまだ自分のステータスを確認していないからな。


名前:ベニス

レベル:8

攻撃力:69

防御力:2

維持力:4545

発射力:1919

感度:100

チン闘力:4545万



「……んだよこのふざけたステータスは」


てか攻撃力と防御力は分かるとして維持力と発射力ってなんだよ。感度も、なんの感度だよ……。クソが。

意味分かんねぇステータスつけんじゃねぇ!

チン闘力も意味わかんねぇし。


つーか無駄にこの三つのステータスが高いのはなんなんだ?ほんとに、ムカつくわ。


「くそ……」


爪の指を噛む。

あー。これさ、別の人間が転生してて俺がそれを天の視点で見るならくっそ笑えるんだろうけど、笑えねぇよなぁ。


現時点で意味の分からないステータスが2つもあるし。


「残り一週間か」


俺が魔剣を継承するまでの時間。


原作では特になにかしていたみたいな描写はなかったからそのまま受け取りに行ったんだろうけど。


チラッ。

俺は自分の股間に刺さってる聖剣エクスカリバーに目をやった。


ゴクリ。息を飲む。


「発射力、維持力ってこれのことか?感度も?」


謎のステータスだけどどう考えてもこれ関係としか思えないんだよな。


「……なんにも分からないし……とりあえず触ってみるか?」


異世界にきてやる事が聖剣シコリカリバーのメンテナンスって思うけどさ……でも触ってみるしかないんだよな、この状況。


ソロ〜。

パンツ脱いで聖剣を掴んでみるけど


「……あれ?なんともないぞ……?」


俺が日本にいた時と変わらない感度がそこにはあった。


全然気持ちよくらならない。


「……俺の頭もだいぶ毒されてきたのか?」


そのままベッドに転んでみる。


このゲームの主人公はベニスじゃない。

ベニスは悪役だった。


ちなみに本来のベニスの性格と今の俺の性格はぜんぜん違う。


ナーニャのやつも何でベニスと恋仲にあったのな謎なくらいベニスってクソ野郎なんだよ。


「とりあえず寝るか……」


考えても埒が明かないし。

とりあえず今日は寝てみることにした。


ってかパンツ脱いだ時に気付いたけど


「なんで競パン履いてんだよこいつベニスは」


明日も学校だ。

ナーニャの奴にいろいろ聞いてみよう。


ベッドに寝て窓から見える月に目をやった。


「きれいだなぁ」

「やだっ!きれいだなんてべりべりハッピーー!!!」


月が脳内に直接話しかけながらもだえだした。

俺はベッドから立ち上がると窓際に走ってカーテンをそっと閉めた。


いいな、俺は何も見てない。

断じて、何も見てない!!!!!!


いいな!月はしゃべらない!!!!

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