第17話:くまさんが、あらわれた!! (「・ω・)「<がおー

煮込んだ鍋の蓋を開け、野菜を取り出し串を通す。


「よし、野菜に串がスッと入るね」


「それじゃあ翔、ルー入れていいの?」


「ああ、お願い」


どぼどぼとルーを入れる、少し火から遠ざけて蓋をする。


「大体五分位したらかき混ぜて、そうしたら綺麗に溶けるから」


「へ~」


「すごいねぇ~翔は」


「はい、私はいつも面倒なので、火を止めてすぐ入れて混ぜてました」


前世は、休みの日の度にカレー作って凍らせてたなぁ……そのままタッパーにご飯と一緒に入れて冷凍しとくと便利なんだよ……。


前世の死後、部屋の処分で両親が冷凍庫見たらビビるだろうな、カレーの山が積まれているから……。


「さてそろそろ5分くらいたったから……かき混ぜて」


「はーい、檸檬さん私やっても良いでしょうか?」


「いいよ~ほらこのお玉でぐーるぐーる」


「ぐ~る、ぐ~るですね~」


調理初体験の藍那がかき混ぜていく、綺麗に溶け出してるし大丈夫かな。


飯盒の方を見に行くと丁度火から遠ざける様だ。


「あつつ……これをひっくり返してっと!」


「雨音、大丈夫? 火傷しないでよ?」


「二人共、どう?」


声を掛けると二人共こちらを向く。


「翔、こっちは大丈夫」


「一応動画サイトでやってた通りにやりましたけど……今は蒸らしてる所ですね」


「そっか、後大体10分は蒸らすから、そうしたら飯にしよう」


「おーやっとかぁ……」


「さっきから良い匂いが佐伯君達の方から漂ってきて、お腹を押さえるのが大変だったわよ……」


「あはは……多分美味しいから期待しててくれ」


少し恥ずかしいので誤魔化して言うと。


「いいや、この匂いは絶対に美味い! 断言する!」


「そうね……キャンプ場ってのもあるし、自分達で作ったとなれば美味しいわよ」


「そうか、じゃあもうちょいしたらご飯をテーブルに持ってきてくれ」


「「はーい!」」


それから戻る途中、ウチの班の所が人ごみになってたけど……気にしないでおこう。


鞄からレジャーシートを出して長椅子の上に敷く、椅子自体風雨に晒されてるし虫が昇って来るのを防止するためだ。


「よし、これでOK」


敷き終え、風に飛ばない様に荷物で抑える、さあ後は持ってくれば食べれるな!


その瞬間、悲鳴が響き渡る。


「クマだー!!」


「キャーーー!」


その方向を見ると炊事場の方で、黒い影が動いていた。


「あそこって……俺らの所!?」


急いで戻ると、倒れた鍋と、それに貪り付く熊。腰を抜かしたのか逃げられない皆の姿だった。


(どうする!? 全員を抱えて逃げるのは無理だ、それに変にバタバタ動いたら熊を刺激する……何か安全に動ける手段は!? そうか!!)


「やってみるか……」


熊に効くかわからないけど、俺や皆になら効くだろう……。

 

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 始動キーは【逃げろと叫んだら】


 内容は【皆は立ち上がり教師たちの元へ逃げる】【熊は森へ帰り、二度と俺達と顔を合わさない】もしもの保険として……【俺が熊の攻撃を避けれるようになる】


 解除キーは【熊は催眠術の解除は無し!】【皆は先生の所に着いたら!】【俺の方は解除したいと思ったら!】


---------------------------------


実行したい内容を頭に決め、腹を括る。次の瞬間、腹に力を入れ叫ぶ。


「逃げろ!!!」


俺がそう言うと皆が唐突に立ち上がり、一目散に走り出す。


そして熊はこちらを見る。


十秒……二十秒と見つめ合う。


じりじりと下がりながら熊と見つめ合う。


(皆は逃げきれただろうか先生の元に着いただろうか……)


凄く長い時間に感じる。


そして熊は、山に帰って行った。


「ふぅ……やばかったぁ……」


気が抜けその場に尻餅をつく。


足の裏と背中が汗でびっちょりとなったが、誰も犠牲にならずに済んだ。


(催眠術が効いたか、熊の気まぐれかわからないけど良かった……)


催眠術を解除して思い立ち上がろうとすると、腰が抜けたのか逆に俺が立てなくなっていた。


そうしてる内に先生たちがやって来て、怪我の心配をされたりどうして逃げなかったのかと怒られたりした。


それから先生達に肩を借りて戻ると、泣きそうな顔をした皆が居た。


「あはは……すまん、腰が抜けちゃってさ……」


「心配したんだからね!!」


「ほんと無茶して!!」


「これは私もおこるよぉ~」


「無事で良かったです……」


「ほんと……皆が帰って来たのに佐伯君だけ来なくて肝が冷えたわ」


「かっこいいけど……締まらないな」


「うっせー、本物の熊ってめっちゃ怖いんだぞ……」


「すまんすまん、でもお前は本当にカッコいいぞ」


そう言って肩を貸してくれる雨音。


というか……自己暗示の催眠使えば立てたのでは?


時すでに遅しだけど……まぁ仕方ない。


「まぁよかったよ、皆が無事で」


そう言って引き攣った笑いをすると何かみんなの顔が赤くなったけど……何故だろう……。


「ホント、コイツは……」


ため息つく雨音の言葉に困惑する俺だった。

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