第16話:ある日、森の中……

退屈な初日を終え翌朝、俺のテンションは上がっていた。


前世では色気も無く、無言だったハイキングだが今回は違う!


何故ならグループ中俺と雨音以外は全員女の子なのだ! しかも超美少女!


これが嬉しくなくて、何が嬉しいんだよ!


「————♬♫♪」


「うわ……お前ちょっとキモイぞ……」


「え? マジ?」


「あぁ、流石に意気揚々と鼻歌を歌ってたらやべぇって……」


「あはは……聞かなかったことにしてくれ」


(めちゃくちゃ恥ずいのですが!! え俺そんな鼻歌する程だったの?)


「まぁ、気持ちはわからんでもない、ウチの班だけ、顔面偏差値が馬鹿に高いからな」


「だよな~皆、可愛いもんな~」


そう言うと雨音はため息を吐いた。


「お前、鏡見て来いよ……」


「何だよいきなり?」


「お前の顔面偏差値も、かなり高いからな?」


何を言ってるんだ? 我が家の中じゃ俺は下だぞ?


「あーコイツ本気で分かってない……」


「えぇ……」


「お前、一発殴らせろ」


そう言って笑顔でポキポキ指を鳴らす雨音。


「ちょ顔がマジだな! やめろよ!」


「そうだな、佐伯はイケメン過ぎてムカつくな」


「こいつは処刑しても、許されるのではないだろうか?」


話を聞いていたであろう、クラスの男子も混じる。


「ちょ! 待てよ! どうして俺が殴られなきゃいけないんだ!? 雨音の顔だってイケメンだろ!」


「そうだな」


「よし、進藤もだな」


「おまっ! 道連れにしやがったな!」


「ふふふ……お前も共に殴られようぞ……」


そう言って、笑っていると、声がした。


「何やってるの? 翔と雨音」


「「「「!?」」」」


「ひひひ柊さん!?」


「い、いえ! 特になにも!」


「あれ? 檸檬だけか?」


「うん、ひとみんはまだ準備してる。」


「あーアイツ、準備長いもんな……」


「そうなんだ?」


「まぁね、伊達に幼馴染やってないよ」


「それで、翔と雨音はなにしてたの?」


いつの間にか、周りを囲んでいた男子は消えていた。


「いやね、翔が今日の朝から機嫌が良くてな~」


「そうなの?」


「どうやらハイキングが楽しみだったらしい」


「へぇ~なら、私と同じだね!」


そう言って笑う顔に浄化される。


「うぐっ……」


「——(ニヤニヤ)」


雨音がやたらニヤニヤしてるお前な……。


「お待たせしました!」


そんな事を話していると弓場さんが走って来た。


「お、ひとみん来たね! じゃあ早速いこー!」


「それで? 真白さん達は?」


「「「あっ……」」」


すっかり、忘れていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆

それから真白達と合流をして、山の中を歩き出す。初心者用のハイキングコースで大体1時間程歩くとキャンプ場だ、お昼以降はそこで飯盒炊飯等を行い、戻って来てからキャンプファイヤーの日程となっている。


出発して約40分、木陰はあるが日が高くなってきたので。日が当たるようになってきた。


「いやー、晴れて良かったな」


「つか、暑いな……」


雨音が羽織っていたジャージを脱ぐ。


「そうですね、お陰で少し暑いですが……」


「そうだねぇ~少し日差しが強いよねぇ~」


「檸檬さん、日焼け止めは塗りましたの?」


「塗ったよー」


各々気楽に進んでいる。


「そうだ雨音、はいコレ」


「ん? あぁ、虫よけか、すまん」


虫よけスプレーを鞄から取り出して手渡す。


「翔は準備が良いねぇ」


「ですねー、先程私も借りましたー」


「まぁ、母さんに言われたからね」


「それでも、忘れずに持ってきてるのは偉いです」


まぁ前世で酷い程虫に喰われた人が同じ班に居たからね……嫌でも覚えてた。


「ペース的にもう少しですよね?」


「そ~だねぇ~もう少しで到着だよぉ~」


そんなこんなでキャンプ場へ到着した、設定時間は1時間だが皆の足取りが軽く、予定より早かった。


「あーお腹空いた!」


「そうだな、だけどこれからもうひと頑張りだぞ」


「そうだった……」


肩を落とす檸檬、一方真白達は準備に取り掛かっている。


「お昼何作るんだっけ?」


「確か、カレーライスですね」


「カレーライスって、お外で作れるんですね……」


「流石お嬢様……キャンプの定番を知らないなんて……」


まぁ確かに、藍那の通ってた学校じゃキャンプとかもしなさそうだしな。


「ともかく、作ろうか。それなりに時間はかかるし」


「「「「「はーい!」」」」」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「さて、まずは米からだな」


手早く米を研ぎ飯盒に入れて水を入れる。


「雨音、火起こし頼めるか?」


「おう……お前凄いな……」


気付けば皆が見ていた。


「翔って料理できるんだ……」


「凄く手馴れてますね……」


「びっくりだよぉ~」


「素晴らしいですわ~」


「驚きましたね」


まぁ……前世は同棲もしてたけどほぼ10年近く一人暮らししてたからな、嫌でも覚えるさ。


「まぁ、少し家でも何か作ったりはするからね」


「はぁ~すげえなぁ……」


「そうだね、料理は出来た方が良いね」


「嫁ぎ先にも困らないしね!」


「嫁がないよ!?」


「嫁がないんですか~?」


「良いお嫁さんになりそうね」


「流石に笑えないぞ……」


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