オリエンテーション編
第15話:オリエンテーション初日
学校からバスで4時間、元は国の保養所だったオリエンテーションの施設へ到着した。
相変わらず付近には何もない所だ
「んんー!! ついたー!!」
隣で檸檬が大きく伸びをしている。
「そうね……肩が凝るわぁ……」
前世でも思ったんだが、あの狭さのバスに3時間詰め込まれて休憩一回って、よく問題にならないなと思う。
「雨音は体大丈夫か?」
「んーまぁ、窮屈だったけどそこまででもないかな……それよりお前の方は?」
「当然バキバキだよ」
身体をひねるとバキバキ言う、前世で長時間労働した時の様な感覚だ。
(今思うと、社畜時代よく耐えれたな俺……)
「ほらーお前ら集合~」
そう言って担任の先生(27歳独身・彼女無し)が皆を呼ぶ。
「37……38……39……40、よしちゃんと居るな。サービスエリアで置いてこなくて良かった良かった」
そりゃアンタ寝てたからね……高いびきかいて……。
「それじゃお前ら~まずは自分の部屋に荷物置いてこいよ~」
そう言って自分の荷物を持ち上げる。
「せんせー! 部屋番号がわかりません!!」
檸檬が手をあげて聞くと、「先生はそうだっけ?」と言って鞄の中からくしゃくしゃなプリントを出した。
「あー柊。お前に託した」
そう言って先生はそそくさと施設へ入って行く、あの人本当に教師か!?
「えぇ……どうしよ……」
いきなりプリントを渡されて困惑し、こちらを見る檸檬。流石に見て見ぬふりは出来ないよな……。
「雨音」
「おう、任せろ」
「檸檬」
「あ、翔と雨音……」
「プリント見せてくれ」
「あっ、うん」
わかり辛いけど、全員分の部屋割りが書いてあるのがありがたい。
「そうしたら雨音は男子の分の鍵を取りに……弓場さん!」
弓場さんに手招きをして来て貰う。
「弓場さんは雨音と一緒に行って女子の鍵を貰ってきてくれ」
「わかったわ、どこに行けばいいの?」
「うーん鍵の場所は書いて無いから、他のクラスの先生に聞いた方が早いかも」
「わかったわ、それじゃあ聞いてから鍵を取りに行くわね」
そう言って二人が他のクラスへ向かった。
「そうしたら……はい、切れた」
部屋割りの紙で女子の階の方を檸檬へ手渡す。
「多分名前の書かれ方的に、二人一部屋だろうから名前を読み上げてペアを作ろう」
「わかった。ありがとう、翔」
「手伝えることで良かったよ、そっちは任せた」
それから男子へ向き直りこえをかける。
「じゃあ男子、同じ班のメンバーで一部屋だから。同じ班の奴とペアを作ってくれ! 鍵が来たら渡していくからな~」
それから鍵を受け取り、全部のペアに渡して、俺達も部屋に向かう。
「はぁ……疲れたぁ……」
雨音がベッドにダイブする、確かに最初から滅茶苦茶、精神的に疲れる事になった。
「助かったわ雨音」
「おー、良かった良かった、それで次の内容は?」
学習説明会と、それから夕食、風呂と自由時間だって。
「そかそか、じゃあ少しでも休んで英気を養おう……」
その後時間になり、前世でも非常に退屈で記憶にない説明会に向かった。
「しかし無駄だよな……この内容って、入学説明会でも受けてるんだから」
「そうだっけ?」
「あぁ、しかもホームページでも見れる……という訳で皆寝てる訳よ」
周りを見ると半分くらいの生徒が舟を漕いでいる。
「という訳で俺は寝る!」
そう言ってそのまま寝る雨音、生憎俺は眠くないのでぼーっと聞いている。
『学科も進学科、普通科、2年からはスポーツ科が増え、カリキュラムも国数英里社の基礎科目に始まり保体、芸術、情報、家庭科目に加え、特科と呼ばれる7時間目を任意で受けられる。その内容は90分となり一部大学の講義を受ける事で単位の認定をする制度もある。内部進学をする場合、特科で受けた大学の認定単位が加算されたりする。
無論受けずに部活動に参加してもよし、各種授業の補講を受けに行く事も可能となっているよ』
(そう言えばそうだった。まあ、前世は特に何も受けずに放課後はダラダラしてたけどね)
とそんな思い返しをしながら真白達を探す。
(居た居た、って蕾は寝てるのか)
特進科の人達、真白や藍那はしっかり聞いており、普通科の人はまちまちだ、特に檸檬は既にダウンしている。
好きに科を移動できるけど基本は普通から特進だ、それに成績不順等で落ちる事は無いから好きなとこで学べる。
まぁこのまま3年間緩々と単位を取りつつ、3年から特科をやって内部進学をすれば大学時代も楽に単位が取得できる。
(前世では全くやってなくてギリギリの内部進学だったからなぁ……)
成績も良くなくて就職活動も適当だったからな、そのせいでブラック企業を転々とする羽目になったんだけど……。
兎も角この退屈な講義が後2時間続くという地獄をどうにかしてほしい……。
(早く明日になってくれ……)
明日はハイキングに飯盒炊飯にキャンプファイヤーと楽しみで仕方ないんだ。
前世とは違う、友達がいるという期待を胸に膨らませ、退屈な講義に耳を傾けるのであった。
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