第10話:帰り道と約束とおっぱい

それから時間も良い頃合いになり、窓から見える景色が茜色に染まって来た。


「お嬢様、そろそろ……」


「あら、こんな時間ですか~」


「もうそんな時間か」


「時間が経つのは早いわね」


「ね~あっという間だったよぉ~」


「そうだね、楽しかったですっ!」


「緊張はしたけど、楽しめたよ」


皆がそう言うと藍那は、花が綻ぶように笑顔になる。


「私も、これほどお友達が出来て嬉しいです~」


「私からも礼を言わせてくれ、楽しかった」


もう一人の藍那が出てきて頭を下げる、再び上がった時の顔は凄く嬉しそうだった。


「それでは皆様、ご自宅までお送りさせていただきます」


「ふぇ? えっ、駅までで良いですよ!!」


「そうですよ!」


俺達の中でも割と生真面目な、真白と瞳が反応する。


「いえいえ、こちらは旦那様のご意向で『せっかくの藍那の友達だ、遅くなったらしっかりと送ってやりなさい』との事ですので」


「でも……」


多分自宅前にリムジンが来るのが恥ずかしいのだろう、真白は逡巡しゅんじゅんしている。


「それだったら、良いんじゃないか? それに檸檬を見て見ろ、もう送ってもらう気満々だぞ」


そう真白に告げると、真白も決心がついたのか「それでしたらお言葉に甘えます」と藍那に頭を下げた。


◇◆◇◆◇◆◇◆

「では皆さん、ごきげんよう」


玄関扉の前で、藍那がいつの間にか居た太郎丸を抱えてお見送りをしてくれた。


「じゃねー」「なーご」


「また明日学校で」「うにゃーん」


「またねぇ~」「にゃにゃーん」


「藍那さんまた明日」「にゃん!」


「それじゃあ今日はありがとうございました」「にゃおーん」


「それじゃあ、藍那。今日は楽しかった、また明日」「ゴロゴロゴロゴロ」


最後に太郎丸を撫でると、気持ち良さそうにゴロゴロと鳴いていた。


そしてそのまま先程より短いけど立派なリムジンへ乗り込み、自宅の場所を伝える。


「それでは、皆様。出発致します」


運転手の男性の声で滑り出したリムジンに手を振る藍那、結局見えなくなるまで手を振っていた。


「よしっ、それじゃあ忘れない内に……」


『——♬』


全員のスマホから通知音が鳴る。


「これで今日のメンバーでグループ作ったから連絡取れるよ!」


さすが陽キャ、スピードが段違いだぜ……。


『——♬——♬——♬——♬——♬——♬——♬——♬』


皆無言でスタンプの送り合いをしている、仲いいなぁ……。


そんな事をしていると、運転手さんから弓場さんと雨音の家に到着したと知らされた。


「それじゃあ、今日は楽しかったわ、また明日からもよろしくね」


「それじゃあ、明日からよろしくな~」


お互いが家に入って行くと、車は出発する。


「そうだ、翔にお願いがあるんだけど」


檸檬が思い出した様に、俺を見て来る。


「ん? どうした?」


「それがね。朝、私達の通学で使う電車で痴漢が出たのよさ」


「あぁ、そう言えばそんなの聞いたな」


なんせ当事者だしな。


「それで面倒だったら良いんだけど、真白と蕾を迎えに行って欲しいのよ」


「檸檬ちゃん!?」


「おぉ~いいねぇ~」


檸檬の発言びっくりする真白と肯定する蕾。


「良いけど、それだと檸檬が一人にならないか?」


「大丈夫大丈夫! 朝は私、瞳と雨音君と行くから大丈夫」


「そうか、同じテニス部だったな」


「そうなの、それでこっちには男子が居るけど、真白達には男子が居ないから……」


「それなら任せてくれ、腐っても男だからな」


そう言うと申し訳なさそうな顔をする真白。


「でも……」


「良いって、真白みたいなかわいい子、痴漢に狙われる可能性が高いんだし。それに友達が被害に遭って悲しい思いをするなら、俺だって出来る事をするさ」


そう言うと、真白は顔を真っ赤にする。


「そうだねぇ~ましろのおっぱいさんは~凄くえっちだもんねぇ~」


そう言ってその大きなふくらみを持ち上げる蕾、良いぞもっとやれ!!!!


「っつつうつつ蕾ちゃななん!?!?!?!?」


いきなりの事でパニックになった真白が、目をぐるぐるさせながら、わたわたしていると蕾の頭に肘がクリーンヒットする。


「ひぎゃぷっ」


「ああぁ! ごめん蕾ちゃん!?」


「いや、今のは蕾が悪いよ……」


「そうだねぇ……いくら真白のおっぱいが大きいとはいえ……くっ、同じ姉妹なのにどこで差がついた……」


檸檬が恨めしそうな顔をして、いきなり真白の胸を揉み始めた。


「ちょおおおおお!? 檸檬ちゃん!?」


「うりうり~またデカくなったなぁ……くっ」


涙を流しながら真白の胸を揉みしだく檸檬。


「あっ……んっ……檸檬ちゃ……そこ駄目っ……」


段々収拾が付かなくなってきたし、真白の声に艶が出てきた。


流石に俺の理性にも限界はあるのでそろそろ止めないと不味い。


「あのな、一応俺が居るからそのくらいにしてくれ……。後、檸檬も蕾も十分可愛いんだから心配だぞ?」


そう言うと二人の動きがピタッと止まる、そして二人共真っ赤になって椅子へ戻る。


「お嬢様方、御到着いたしました」


丁度良く運転手さんが真白達に声を掛ける。


「そ、それじゃあ! 送り迎えの事! よろしくね!」


「じゃ~またねぇ~」


「うぅ……それじゃあ、また明日」


そそくさと三人は降りて行った。


そして発進していく車内には俺一人残されていた。


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