日常編

第1話:入学式と妹

「思い出した、全部……」


 今日は4月7日高校の入学式の前日だ……人生で二回目の。


 前世はこの世界とほぼ同じなのだが若干違う世界で、死後こっちに転生してきたんだ。


 生き返らせてくれた神様が、死因は通り魔に殺されてって言ってたんだよね。


「だからここ最近、通り魔の事が、違和感としてに引っかかってたんだ……」


(それにしても……前世の俺なにやってるんだよおおおおおおおおおおおおおお!!)


 しかもおかしなテンションで欲張って神様に【チートな催眠術】を要望したらしい、何してんだよ前世の俺……いくらなんでも前の人生のここ2、3年恋人が居なかったからって馬鹿すぎるだろ。


(現代社会じゃ催眠術なんて、会社でやる飲み会の余興位にしか使えないっての!!変な事に使えば絶対にバレるし!)


 ベッドの上で悶絶しながら、過去の自分の愚かさが痛い。


(エロい事に使えば犯罪だし、強盗や詐欺なんてもっぱらアウト。だからといってテレビに出て有名になる位にしか使えない。そもそもトークが面白くなきゃ一発屋にもなれず終わるしな!つまり俺には芸能人は向いてない!慎ましく生きよう!!)


 そう考えているとアラームのスヌーズ機能が、はよ起きろと急かしてくるので起きる事とする。


「頭が重い、視界が暗い……」




(前世の高校時代、俺は陰キャも陰キャのド陰キャ。しかも中二で発症したあの病から継続した、とてもとても痛い病気の真っ最中だからなぁ……今も前髪で視界の半分見えねーし)


 伸びきった前髪を摘みながら高校時代の我が無頓着さに呆れる。


 以前の人生じゃ大学の2年生なってからやっとこさ見た目を気にし始めた、痛い病が終り黒一色の目まで隠れた、黒子くろこからパステルカラーのこざっぱりした服を着て、髪にインナーカラーをまで入れたりした。


(遅れに遅れた大学デビューだと、陽キャ共には嘲笑われたりしたが、両親譲りの顔が良さで、陽キャの彼女奪って復讐したんだけどな!!)


「とりあえず、顔洗ってから前髪切って視界を確保しなきゃな、それと身だしなみを軽く整えないと……」


 洗面所で顔と髪を洗う、その後にはさみ鬱陶うっとうしい前髪をバッサリとカットする。


 前後の髪は櫛でかし、伸びきった襟足は後ろに目が付いて無いので切るのが怖い、なので軽くヘアゴムで纏める。


(いででで……髪も無駄に痛んでやがる!!)


 ギリ見える見てくれまでなったが、全体的なもっさり感が強いので朝飯食べたら美容院で整えて貰おう。


 問題は眉毛が無法地帯になっている、それ故に顔面のみっともなさに、拍車をかけている。


(とりあえず着替えて近所のコンビニに行くか)


 ―――30分後。


(早朝だったから、スムーズに買えたけど……やたら顔見られたな……)


 コンビニで眉整え用品のセットを買う途中、同じ高校生くらいの店員さんにガン見された……恥ずかしいから見ないで欲しい。


 それから軽くシャワーを浴びて、妹のシャンプーとコンディショナーを使う、少しはまともになったと思うのだが……すまん妹よ、お前のヘアケア―用品ガッツリ使っちまった……許してくれ。


 そして前世にやっていた要領で眉を整えリビングへ入る、父は今日は午前休なのだが既にスーツを着て新聞を読んでいる、母さんは朝食の準備をしていた。


「おはよー父さん、母さん」


「「おは――――は?」」


 父も母も俺の顔を見て固まっている、母さん驚くのは良いが、あまり斜めにすると皿の上に載ったウインナーが落ちるぞ。


(そりゃまぁ寝る前は、頭に昔あった万博に居た森をモチーフとしたキャラを乗っけた様な奴が、朝起きたらスッキリしてるんだからな……)


 たっぷり1分程固まった両親は、はっと気がついた様に動き出す。


「あんたねぇ……髪切るならもうちょっと早くしなさいよ、まぁ今日が入学式の前の日で良かったわ」


「昨日の夜に、心境の変化があったんだよ母さん」


「まぁ、良いんじゃないか顔もしっかり見えてるし。確かに早く言っては欲しかったが……」


「それは悪いと思ってるよ、とりあえずまだ頭が重いから、放課後に美容院行きたくて……お小遣い下さい」


「そうね……せっかく息子がおしゃれに目覚めたみたいだから、今日の午後にでもいってらっしゃい、お金は後で渡すわ。さぁご飯食べちゃって、あんまりゆっくりできる時間無いわよ」


 そう言って母さんはエプロンを外し朝食を並べる。


「「「いただきます」」」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 そして美容院と定期券を買いに行くため、駅前まで送ってもらう。ついでに服も新調してこいと、素晴らしくイケメンなお父様より、諭吉様を二人頂戴し駅前にあった前世で行きつけの美容院へ行く。


 その後はしまとか、クロの名前の量販店で私服を適当に見繕い、楽しみにしていた青い看板のアニメショップへ向かう、学校の休み時間に読む為のラノベを数冊買い外に出ると西日が目を焼く時間になっていた。


「あぁ、前世の事を思い出したからか……夕焼けも気持ち悪くならないな」


(それに少し技術が進んでたというのもあったけど、流行も変化してたな)


 前世での最新の流行がまだ来てない、大体5年位前の流行が今来ているみたいだ。


 そう考えながら家に帰ると妹の由愛ゆめが帰って来てるようだった。


「ただいまー」


 と鍵を開け玄関を潜ると、リビングから足音した。


「うっわ、マジでお兄がイケメンになってる……」


 いつも眠そうな目を大きく開いて驚いた顔をした妹が口を開く。


「おう、妹よ兄はイケメンになったぞ」


「なんかムカつく……見た目イケメンだけどムカつく」


 いつものとろんとした目に戻った妹は、少し不貞腐れながら不満を返してくる。


「まぁまぁ、半分冗談だ」


「まぁいっか。お兄がイケメンになったから友達に自慢しよ~」


 と言うと素早くスマホを出し了解も取らず写真をとってくる


 カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ――――


「って何枚取るんだよ!」


「良いじゃん良いじゃん!カッコいいお兄とオタクショップの袋が入り混じった微妙に残念な写真が撮れた!」


「お前それ友達に見せるのか?」


「うん!絶対に面白い話題に出来るし!」


 ニヤニヤしながら撮った写真を見せてくる。


「ホントに微妙だな…」


 そこには少し間抜けな顔をした俺が写っていた。


「貴方達ご飯にするから荷物置いてきなさい。そうしたら、翔と由愛ゆめは手伝って」


 母が台所から声をかけてくる。


「「はーい」」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 そして翌日。入学式の為に、家族三人で父の運転する車で入る高校に到着し受付を済ませる。


 受付の上級生と先生が、ぽーっと見惚れていたのはもう見慣れた光景だ、両親の顔が良すぎるのだ。そのせいで前世の高校時代は、ひたすらに拗ねていた。ちなみに妹も滅茶苦茶美少女でアイドル顔負けの可愛い顔をしている。


(家族の中で俺だけが普通と言われたたんだよね……まぁあの頃は自分の姿より、オタク活動に熱心になりすぎてたのもあるけど……)


 それから『入学おめでとう』の文字が入ったコサージュをぽーっとした上級生の女子につけられた後、両親と別れ同学年の生徒の流れに乗って講堂に行く、入学式の座る席はクラスが未発表なので入った順だ。


(うーん、今思うとこの学校。凄くかわいい子多いな……)


 見回しても目に付く生徒が多い、滅茶苦茶綺麗な金髪をした美少女に、カチッとした制服を着こなした女子。


 運動部だろう、日焼けした肌に少し色素の抜けた髪色の女子と、親しく話す巨乳女子、そしてもう既にその子の膝で寝ている女子。


(前世はもったいない事をしてたんだな……)


 そしてぼーっとしていると隣にザ・大和撫子と言った感じの女の子が座った。


「あっ、ごっごめんなさい!お隣座っても大丈夫でしたか!?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


「ありがとうございます、私緊張してて……」


「気にしないで良いですよ、席は自由なんで」


「そうだったんですね、気付いたらここに座っていたので……」


 気付いたらって……大丈夫かこの人。


「そうですか……転んだりせず来れたのなら良かったです」


「あっ、事項紹介がまだでしたね、わたくし久凪くなぎ藍那あいなといいます、以後お見知りおきを」


「あっはい、俺は佐伯さえきしょうです、よろしくお願いいたします」


 それから久凪さんと話していると、入学式が始まった。


『これから新年度入学式を始めます、全員起立!』


 そうして二度目の入学式はつつがなく終わった。


入学式? 二度目だし寝てました、そしてその事を先程会話した久凪くなぎさんに何度か起こされたりしたけどね。


(やたら顔が赤かったけど……だいじょうぶかな?)


先に退場した久凪くなぎさんを見送り、俺も講堂から出る。


 そして先に退場していた両親と駐車場で合流し、部活終わりの由愛を拾った後、入学祝として少し豪華ロイヤルなファミレスで夕食を食べるのだった。


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作者です!

はじめましての方は初めまして!!

既に別作品を読んでいただいてる方はこちらも見てくれてありがとうございます!!


第2話は22時に公開します!!

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