第2話:初めての催眠術と痴漢
入学式の翌日、今日は初登校の日だ。
いつもの時間にセットしたアラームを止め、身だしなみをササッと整える。
このルーティンは前世で、数えきれないくらいにやっているので簡単に体が動く。
朝食の席に着くと
ちなみに今日は妹の中学校が始業式の為、部活の朝練が無い、なので一緒の時間に出発だ。
こう見えて妹は緩い見た目をしているが、テニスで全国大会にも出る程の実力だ、昨日は春休み最後の部活だったので朝早かったのだ。
「おはよー、お兄がまだイケメンだ……夢じゃなかった」
「まだ言うか、昨日も一緒に飯食べただろ」
「そりゃあの、2年くらい見てたもっさり陰キャが脱皮してるんだもん」
「脱皮って……」
「ほーら二人共早く食べちゃって、お母さんもそろそろ出なきゃだし」
「「はーい」」
朝食を食べた後、支度を終わらせた妹と共に学校へ向かう。
「じゃーお兄、私こっちだから~」
「あぁ、いってらっしゃい」
妹と別れ駅に向かう、予定してた時刻より10分程早く駅に着く。
(前世はもっとギリギリの遅い時間の登校でかなりの混雑だったからなぁ、このくらいの時間は空いてるかな?)
スマホを弄っていると、電車がホームに来たので見てみるとそれなり混んでいた。
(混んでるけど仕方ない、遅らせても倍近く混雑してるだろうから。乗ってしまおう)
そして電車内に足を踏み入れると身動きは取れるのだが、中々に狭いな……それに学生よりもおっさんの比率が多い。
もう少し空いてる空間が無いか電車内を軽く見回していると、1つ隣の扉側で怪しい動きをしてる男が居た。
(扉の前、満員電車、前に見えるのは女の子? まさかねーいやいや、新学期だよ?)
とりあえず身長が小さくて頭だけしか見えないが、女の子が居る、俯いてるから顔は見えないが、ちらちら見える耳が真っ赤になっているのはわかる。
(100%の確証がないからなぁ……助けたいけど、どう動くか……)
相手に気付かれず、ついでに証拠も押さえたい。
(そうだ……催眠術あるじゃん、使ってみるか)
すると頭の中に使い方が浮かんできた。
---------------------------------
~簡単、催眠術の使い方~
①:好きな発動の仕方(始動キー)を思い浮かべる。
※【手を叩く】【指パッチン】【スマホを見せる】【暗示の言葉】等々細かく設定出来る
②;解除(解除キー)は①と同じやり方で決められる。
③:効果範囲も自由に指定出来る。
※それこそ世界全部とかも出来るよ! やったね!
④:命に直接関わる命令は出来ない。
※【飛び降りろ】とか【自殺しろ】とか【ナイフで首を刺せ】等々
---------------------------------
(とりあえずやってみますか、駄目だったら別の方法で)
催眠術の内容を頭に思い浮かべる
---------------------------------
始動キーは【2回手を叩く】
内容は【この車両の人は俺の存在に気にも留めない】
解除キーは【2回手を叩く】
---------------------------------
―――パンパン―――
「すみませーん通りまーす」
とりあえず、かかってるかわからないので、小さく声出しながら進む。
(どうやら成功してるみたい、顔も上げないし、嫌な顔せずに通してくれる)
そして近くに来ると……はいアウトー
スカートの上からがっつり尻撫でて……揉んでるなこれ、胸も鷲掴みで揉んでいる。
女の子は羞恥で声出せないのか俯いてる状態だ、男は鼻の下が床に着くぐらい伸びてる、正直ドン引きだわ。
(えぇ……まじかよ。普通、新学期初日に痴漢やるか?)
とりあえず隣まで行っても無視されてるので、今のうちに証拠写真を撮ってと。
(抵抗されたら面倒だし、ついでに犯人と痴漢されてる子にもかけとくか)
---------------------------------
始動キーは【フィンガースナップ(指パッチン)】
内容は【俺に抵抗できない】【痴漢野郎は警察の前で痴漢の事を全て自白する、喋り終えるまで催眠は解除されない】【痴漢されてる子は、一緒についてくる】
解除キーは【フィンガースナップ(指パッチン)】
---------------------------------
―――パチン―――
(これで片方の催眠解いて……っと)
―――パンパン―――
俺は解除と同時に男の腕を掴む
「なっ!?」
「おい、オッサン痴漢してんじゃねぇぞ! 次の駅で降りるからな!」
少しドスの効いた声をしながら言う。
「ふざけんな! 離せ!! 何だこいつ振り解けない?!」
そりゃ神様から貰った
「観念しろ、証拠もあるんだよ!」
そのタイミングで電車は駅に滑り込み、扉が開く。
「すみませーん、痴漢したクズ野郎が通りまーす」
腕を掴み電車から引きずり下ろす。
「クソっ!ふざけるな!!✕▲◇◆☆◁◐▲■◀△!!!!」
ギャーギャー喚いてるが無視して駅員室まで引きずる。
女の子も電車を降りて、駅員室まで着いてきてくれた。
「駅員さん、コイツ痴漢です」
「ええ!?」
駅員さんもびっくりしてる、そりゃ男子高校生とはいえオッサン一人引きずってきてるんだから。
「証拠もあるんでとりあえず、警察呼んでください」
――十数分後――
警察が来たので事情の説明と、証拠写真を見せ痴漢を引き渡した。
「じゃあ写真を消しますね」
「えぇ、協力ありがとうございます」
婦警さんの目の前で証拠写真を削除する。
因みに痴漢は警察の前で、今迄の痴漢歴を全て話してる。
「しかし、改めて聞くと、とんでもないわね……」
余罪含めて数十件やってるみたいで、めちゃくちゃ早口で喋ってる。
「正直気持ち悪いですね……」
――更に数分後――
「とりあえず調書は書き終わったから、二人は行っていいわよ」
未だにしゃべり続ける犯人に、聞いている警察官もドン引きである。
婦警さんからそう言われ俺と痴漢に遭っていた、
――パチン――
駅員室出た後に、解除の為の指パッチンは忘れずやる。
学校方面の電車に乗り込む。
「そうだ、普通に乗っちゃったけど柊さん、学校行けそう?」
さっき調書取る間、泣きながらだったのでかなり心配だ。
「はい……痴漢されてる間ずっと怖かったんですがもう大丈夫です、佐伯さんのお陰で助かりました」
「気付けて良かったよ、そういえば柊さんは何科?」
「私は進学科です、佐伯さんは?」
「俺も進学科だね、一緒のクラスだと良いね」
「そうですね、そうだったら凄く嬉しいです!」
そう言うと柊さんは男子なら思わず見惚れるような笑顔を見せる。
(めちゃくちゃ美少女だし、スタイルも良いもんなぁ……そりゃ狙われるよ)
他愛ない雑談をしていると学校の最寄り駅が近づいてきた。
(さて…名残惜しいけど、痴漢に遭ったなんて悪い記憶だからね…)
---------------------------------
始動キーは【俺が真白さんの
内容は【電車を降りたら、俺に対する記憶を、思い出せないように封印して、初対面になる】【電車内は寝ていた、それで俺に起こされた、と認識する】
解除キーは【俺が真白さんの頬を2回つつく】
---------------------------------
これなら…大丈夫かな? 大丈夫だよね? うん、きっと大丈夫でしょ!! うちの学校人多いし、すれ違う事はあるけど会う事は無いだろうし、頬なんて普通つつかないからね。
「柊さん」
「はわわっっ!?」
――ぷにっぷにっ――
「さっ、佐伯さん!? 何を!?」
「ほら電車着いたよ! 降りて」
そう言いつつその背中を押しながら電車より降りる。
「えっあっはい……あれ? 私?」
はっとした柊さんの横を、無言ですり抜けていく。
(これで大丈夫かな)
振り返ると柊さんは、首を傾げながら歩き出す所だった。
(しかし、めちゃくちゃ柔らかかったな…)
指先に柊さんの頬の感触が残っている。
(写真……バックアップ位取っとけば良かった……)
名残惜しみつっつも歩いて行く、因みに柊さんにはあえて本当のことを言ってなかったが。
俺は普通科である。
---------------------------------
作者です!!
真白のキャラクターイメージを近況ノートに載せました!!もし良かったら見て下さい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます